見出し画像

「リリスと太陽」

近所のスリランカカレー屋さんに久しぶりに行った。
店の壁には手食を推奨するイラストのポスターがあちこちに貼ってあり、おかげで心ゆくまで手で食べることを愉しんだ。
マグロのほそい骨を右手の指で取り除き、適量の赤レンズ豆のパリップ、ココナッツのサンボーラを手ぐり寄せ、さらさらのバスマティライスと速やかに混ぜる。追って、くたくたの茄子のモージュと水菜のマッルンをアクセントに。
ああ、手で食べるよろこびよ。指先に残るスパイスの香り。

帰り際、お店のちひろさんが、「わたしときこさんは、太陽と月星座がいっしょなんですよね」と声を掛けてくれた。
ちひろさんも占星術に取り組んで久しいという。
「偶然ですね!」というと、「でも最近は、ジオセントリックではなくて、ヘリオセントリックがしっくりきて」と。
ジオセントリックは地球から見た天体、星座。
ヘリオセントリックは太陽から見た天体、星座。
一般的な星占いではジオセントリックを採用しているので、「太陽星座〇〇座」というのが馴染み深いけど、ヘリオは太陽が中心なので、代わりに「地球星座〇○座」となる。
「ヘリオだと、きこさんもわたしも獅子座ではなく水瓶座になるんですよね。まったくの真逆、面白いですね」と、ちひろさんは笑った。
でもわたしはそのとき、ひと知れずうち震えてしまった。なんなら瞳孔だって開いてたと思う。
正直そのまま床に平伏して、はらはらと涙を流してもいいくらいの心境であった。

なぜなら、わたしのリリスは水瓶座だからだ。


昨今、リリスリリスと何かとざわついている。
占星術に興味のある友人たちも、わたしの顔を見るなり、「ところでリリスなんだけど」とか、「にわかにリリスが迫ってくる」とか。
そんなふうに内輪で密かに盛り上がっていたら、ある日お客さんのテーブルから「リリスはやはり無視できないわね」という会話が耳に入ってきちゃって、思わずダンボ耳に。

リリスは、十字架の上に黒塗りの月が乗っているマークで、太陽系では月に続く第二の衛星である。占星術のなかでもリリスの解釈は未だ確立されておらず、だからこそ訳あり&タブーとされている星(厳密には星ではない)。
(ご自分のホロスコープで「リリスが〇〇座」と調べることが出来るので、もしご興味あったらぜひ)

というのは占星術師、OK!soraさんのリリス深掘りがほんとうに秀逸で(太字は有料noteですが、youtubeでもいろいろ見れます)、わたしも友人たちもsoraさんの解釈がリリスへの入口だった。(って、出口ないかもbyあんでるせん)
占星術というのものは学べば学ぶほど、理解が進めばそのぶん、わからないことが細胞分裂みたいに増えていく。
だからこそsoraさんのような深い洞察力は、古い空気が停滞した部屋にひと筋の風がスーッと入ってくるような、こんがらがっていた糸が少しほぐれたような、そんな一縷の爽快感をもたらしてくれる。

天文学から派生した占星術は、その歴史もざっくり5000年と言われており、そのあいだ一定数の熱心な人たちが、ずっーーーーーーーと天体の動きをつぶさに観察し続けていたのだと思うと(今現在も)その姿勢や蓄積された叡智に胸をうつ。
むしろそれほど人を惹きつけてならないのが「星」だけど、毎夜見上げればそこにあるのだ。わざわざ遠くに行かなくても、誰のうえにも等しく星は瞬く。
なんて平等なんだろうか。

満点の星空の下にいると、天からシャラシャラと星の意識が降ってくる。
目には見えないそれをインストールして、身体の隅々まで星を巡らす。

さて、話しをリリスに戻そう。
リリスは、リリスが関係する星座やハウスに対して「強烈な拒否」を要求する。
そのいわれ、神話を紐解けば、アダムの最初の妻はアダムと同じ土から生まれたリリスであった。でもリリスは、自分を格下に置こうとするアダムに対して「NO(強烈な拒否)」を叩きつけ、エデンの園を追放されてしまう。
次にアダムの肋骨から創られたイブが、「従順なる妻」としてアダムに尽くし、のちに良き妻良き母の象徴となった。

そんなストーリーから、リリスは悪女や魔女の象徴である一方、現在ではフェミニズムのアイコンとなっているのはなるほど納得である。

服従と暴虐(自暴自棄)を孕む事象に対し「強烈な拒否」を為す(為される)ことによって、「リリスは第二の太陽として輝く」とsoraさんは解説する。


わたしのリリスは水瓶座11度。(11度という度数は、ひとつの星座を30度ずつに分けて、全部で12星座なので360度になる。ホロスコープの円はこれであります)
この度数を(リリス案件で)「絶対」と思い当たる人に重ねてみたら、その人の太陽星座がまさに水瓶座11度だった。
なんたる符合よ、ビリビリ戦慄が走るもなんとまぁ、星の采配。
てことは・・・と思い、息子のホロスコープを確認したら、息子も太陽星座水瓶座11度。
てことは・・・リリスを産んじゃったわけ?
「やば、やば」と小鼠のようにうろたえていたら、星読み友人が、「でもさ、子どもは占星術でいうところの太陽じゃん(5ハウスのルーラーってことで)。だから、きこちゃんのリリスは第二の太陽となった、ってことじゃないかな」

友人のこの言葉はお守りのようにこころ強い。

頭の先から爪の先まで獅子座色に染まってしばらく、ここで水瓶座という真反対、対極の星座が入ってきたことによって、自分だけではなく、いろんな人の太陽星座の対にある星座が疼きだしていることに気がついた。

わたしの個人的な見解だと、獅子座は横のつながりを吟味し、双子座はもっと遠くへ、射手座は軽やかに冒険し、蟹座は感情を自分で適切にコントロールし、山羊座はちいさきものを守り、牡羊座は率先して調停し、天秤座は負ける試合は避け(もともとが負けず嫌いなのです)、牡牛座は研ぎ澄ませた五感で見極め、蠍座の毒はじつはくすりであった。

あたらしい道、ワープする感覚。

「風の時代」とはよく聞くけれど、やはり確実に変わってきているなぁと。


で、世間はというと、大型連休ゴールデンウィークのはじまり。どこもかしこも大賑わい、のはずである。
しかしうちの店は、いちねんでいちばん静かなのがこの黄金週間。
ていうのも全部、「風の時代」のせい。(てことにしよう)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?