見出し画像

テレワークの発展。それで働き方改革が進んだと言えるのか?

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■テレワーク導入企業は7割近く

今年は新型コロナウイルスの影響で、一気にテレワークが進みました。

東京商工会議所が5〜6月に会員企業12,555社に調査を行ったところ、テレワークの実施率は67.3%にも上っていたとのこと。緊急事態宣言解除後の今も、私のまわりではテレワークを続行している会社員たちが多くいます。

満員電車のストレスから解放され、仕事に直結しないコミュニケーションに時間を割かれることもなく、彼らは概ね「テレワークのままでいい」と言います。コロナで、やっと日本の働き方は変わった。そんなふうに多くの人が思っているかと思います。

でも、本当にこれが私たちが理想としていた働き方改革なのかしら……。このところ、少し疑問に感じることもあります。仕事をする場所が変わり、コミュニケーションがインターネット中心になりましたが、それが本当に働き方改革なんだっけ、と。

厚生労働省のホームページにある、「『働き方改革』の目指すもの」というところを改めて読んでみます。

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html)

働き方改革の目的は、生産性の向上、就業機会の拡大、働く人が意欲や能力を発揮できる環境づくり、ということが書いてあります。

テレワークへの移行によって、このあたりは本当に改善されているのでしょうか。

■個人が考えるテレワークのメリットは、働き方改革とズレがありそう

個人個人の生産性の向上という面では、どうなんでしょう。

オフィスより自宅のほうが仕事がはかどる、集中できるという人もいるかもしれませんが、小さなお子さんがいる家庭や、自宅にじゅうぶんなスペースがない人もいるでしょう。人によるとしか言いようがありませんが、自宅でやるほうが生産性が上がるという人がテレワークを選べるようになるというのはいいことですね。

ただ、個々人が自分の生産性に基づいて働く場所を選ぶかというとそれはまた別の話で……。日本労働組合総連合会が今年6月にテレワーカー1000人に行った調査では、「テレワークのメリットだと感じていること」の順位はこのとおり。

1位 通勤がないため、時間を有効に利用できる 74.6%
2位 自由な服装で仕事をすることができる 48.0%
3位 自分の好きな時間に仕事をすることができる 25.6%
4位 好きな場所で仕事ができる 19.8%
5位 業務に集中できる 15.5%

(「テレワークに関する調査2020」日本労働組合総連合会)

まあそうですよね。満員電車に揺られるのもいやですし、往復の通勤時間の間にもっと好きなことをしたいですし、ラクな格好で仕事をしたい。フリーランスはこの点ラクをさせていただいております……。

業務に集中できるという方は6〜7人に1人という割合。集中できるかどうかや生産性よりも、自分がいかにプライベートな時間を確保し、ラクに仕事をするかということのほうが、個人にとっては大事ですよね。

ただ、働き方改革は、働く人たちがただラクになるためのものではなかったですね。厚労省の「働き方改革の目的」には、「働く人が意欲や能力を発揮できる」ということが書いてあります。ラクになることではなく、意欲や能力を発揮することが重要です。

テレワークのほうが意欲をかき立てられる!とか、能力が存分に発揮できる!という声が聞こえてこないと、働き方改革に成功したとはならないような気がします。

■学校の授業もただ「オンライン化」するだけで良かったのか?

でも、今まで通勤の負担が重くて、スーツを着たりメイクをしっかりしたりするのも大変で、仕事をする時間が決められているのも苦痛だった……という人にとっては、こういうマイナス要素がなくなることによって、意欲が上がったり能力がより発揮できたりすることもあるのかもしれません。

テレワークによって「めちゃめちゃ働くぞー!」となっている人もいるかもしれません。私はまだ会ったことがないですが。

働き方改革で大切なのは、テレワークという手段に変えたことで、結果がどう変わるかということです。生産性が上がり会社の業績が上がったか。就業機会は増えたか、働く人の意欲が上がり、能力を発揮できるようになったか。ここにフォーカスせずに、「コロナで働き方改革ができた」と言ってしまうのは早計ですよね。

これは学校教育のオンライン化も同じです。

オンライン授業の導入が早かった学校を賞賛するのもよいですが、オンライン化することによって子どもたちの学力が伸びたり、その成長過程にふさわしい学びができたり、心の成長を促したり、考える力を養うことができたかどうか。これをよく見ておかなければなりません。

ただ教科書を映像化したような授業を流すだけで「教育はオンラインでできる!」となってしまわないことが大切だということです。

テレワークで働き方改革が進んだのかどうか。これはまだ、まったく答えが出ていないことだと思います。働き方改革の目的にテレワークという手段がどの程度寄与したのか、ここからよく見ていきましょう。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

▼大西さんご執筆の最新刊はこちらです。


いつも「未来の仕事屋」のnoteをご覧いただいて、ありがとうございます。サポートは不要ですので、そのお金でどうぞ有料コンテンツをお楽しみください!