北村朱里01

北村朱里さんの働き方

こんにちは「未来の仕事屋」です。このマガジンでは、「時給で働く」以外のさまざまな働き方を選んでいる方に、その働き方を選んだ経緯や、働く上で大切にしていることなどを伺っています。毎回、共通の5つの質問を通して「じぶんらしい働き方」とは何か?について考えていきます。

今回は「講師・ライター」の北村朱里さんにお話を伺いました。


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現在、講師とライターという2つの肩書で活動をしている北村さん。もともとは、北海道のご出身で、地元も大手コールセンターで管理職まで務めた方です。それが、どのような経緯で現在のお仕事をされるようになったのでしょうか?

北村さん:結婚を機に、コールセンターの仕事を退職して、夫の地元である佐賀に移住しました。最初は佐賀でもコールセンターの仕事を派遣社員としてやっていたのですが、会社の枠にとらわれずに、もっと自分の得意なことややりたいことを自由にできる働き方を考えて、独立することを決心したんです。

コールセンターの仕事から独立を考えた北村さんは、フリーのライターとして活動を始めます。独立後、突然異業種に飛び込んだようにも見えますが、実はコールセンターでのお仕事がライターに活かせるからだったそうなんです。

北村さん:コールセンターのスタッフが受け答えするマニュアル……いわゆる「台本」のようなものがあるのですが、この「台本」は外部に発注して制作するものではなく、中の人間が作っているんです。私も書いていました。書くことを楽しいと思っていましたし、それまでの仕事が活かせると思いました。

なるほど。北村さんは、ライターとして独立する前にコールセンターのお仕事の中で、ライターになるためのトレーニングをたくさん積んでいたようなものだったのですね。

しかし、現在は「ライター」のほかに「講師」という肩書きも、北村さんはもっていらっしゃいます。1本に絞ろうと思ったり、1本に絞ったほうがいいと言われたり、そんなことはなかったのでしょうか?

北村さん:私が個人事業主として立ち上げた「コンサルティングオフィス nib.」の理念は、言葉を通じてアウトプットすることなんです。例えば、コールセンターでの経験が長い私の強みには「電話」があると思いますが、「電話」も一つのツールですよね? ツールが何かということではなく、あくまでも言葉でアウトプットする仕事をしているという認識です。自分の強みを生かして仕事をしたいと思っているので、企業の電話受注セクションに研修を行ったりもしますし、マニュアル作成などもしています。

クライアントの問題解決のために、「ライター」もやるし「講師」もやる、という感じなのですね。

北村さん:そうです。それがわかりやすいと思って。実は最初は「コンサルライター」と名乗っていたのですが、「コンサルライターって何?」と聞かれることが多くて、結局「講師とライター」と説明していたので、はじめからそう名乗ったほうが早いなと思ったんです(笑)


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コールセンターの管理職を務めていたときには、「時給で働く」たくさんのスタッフを監督する立場にあった北村さんですが、ご自身は時給で働いた経験はおもちなのでしょうか?

北村さん:はい。直近ですと、会社を辞めてライターとして独立したとき、時給でアルバイトをやっていました。

このとき北村さんがやっていたのが「ライターのアルバイト」だったそうなんです。ちょっと珍しいですよね? 毎日決まった時間に会社に行って、決まった時間まで記事を書くのだそうです。記事の内容や本数によって給料は変わらない、「時給」のお仕事だったそうです。

北村さん:正直に言って……この働き方をしていたときは、「時給で働く」ことは自分には合っていないなと感じていました。書くものの内容や本数で評価されないので、私は定時までに毎日3本は書くのに、ゆっくりダラダラ書いて残業までしていくのに1本しか書かない人のほうが給料が高い、ということにとても不公平を感じていました。

どこかで聞いた話、ですよね(笑)「未来の仕事屋」のコンテンツをよくご覧いただいている方にはおわかりだと思いますが、この北村さんと同じ状況に悩む主人公が登場する物語が、連載「生活残業クロニクル」でした。この物語の主人公木田有希ちゃんはこのイライラの原因を「自分が時給という働き方を選んでいるせいなのではないか?」と考えて、その環境からの脱出をはかるわけですが、北村さんはどうだったのでしょうか?

北村さん:私はこの期間があったことをよかったと思っていますね。時給で記事を書いていたことも、「ボランティア記者」というものにも参加して100本くらい無償で記事を書き続けたこともありました。それも取材記事なのでとても大変でしたが、やってよかったとは思っています。そのおかげで、ライターの仕事を覚えられましたし、スキルも上がりました。地元の媒体だったので知り合いも増えましたし。この期間があったからこそ今があると思っています。それがなければ、今はこうなっていないと思いますので。

最終的には「無償の仕事」や「時給の仕事」をいつまでもやっていることはよくないと感じて、やめることにしたそうです。自分の中で「もうこのくらいでいいんじゃないか」ということがなんとなくわかるときって、ありますよね? 北村さんもそうだったと言います。

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北村さんは北海道でコールセンターの管理職をしていたとき、働いているスタッフの方たちのモチベーションを上げるために、さまざまなことをしていたそうです。そして、人が仕事を頑張る理由というのは「生活費+アルファ」でできていて、この「+アルファ」の部分が充実しているかどうかが、楽しく働けるかどうかに大きくかかわっていると感じていたそうです。つまりお金ではない部分ですね。

北村さん:働いて得られるお金については、私は「一旦現状に満足して、その上で次に行くことを考える」というスタンスです。例えば私は、個人事業主として独立しているわけですから、第一段階として「食べていけること」があるわけです。そして第二段階として「会社員時代と同じくらい稼げるようになること」、そして個人事業主の場合は保険や保証などの問題がありますから、第三段階では「会社員時代の3倍くらいは稼げるようになりたいよね」となるわけです。

個人事業主として、収益を上げるということをかなり明確に段階的に北村さんは考えていらっしゃるように思えました。

北村さん:でも、利益を出すことを100%に考えているわけではありません。利益とそれ以外のバランスが、やはり大事だと思うからです。先ほどの「生活費+アルファ」の話に繋がるのですが。バランスですね。

なぜか私たちは「仕事を楽しむこと」が大切だと言われると「利益を出すこと」を考えることが、まるで悪いことのように思えてしまったりするものです。逆もそうです。そもそも「利益を出すこと」が大切だと言われると「仕事を楽しむこと」が悪いことのように思えたりもします。何事もバランス。両軸で考えていくことが大切だということですね。


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ところで、北村さんのお話を伺っていると、今できていることをきちんと把握した上で、「次へ、次へ……」と自分がどんどん成長して「良くなっていくこと」を考えていて、「悪くなっていく可能性」を想定されていないようにも見えました。北村さんには将来に対する不安などはないのでしょうか?

北村さん:もちろんありますよ。年齢とともに体力が確実に下り坂になっていますしね。そういう部分で実感することも多くなりました。

このインタビューでは、体調を崩したり病気になったりして働くことができなくなったときのことが一番不安だと答える方が多いのですが、北村さんもそれはありつつ、一番の不安は違うものだそうです。

北村さん:これまで自分はたくさんの人に多くのことを教えてもらってここまで来たと思うんです。その教えてもらったことを握りしめたまま死にたくないと思っています。人間、いつ死ぬかわからないじゃないですか。だから、もしこれを誰にも伝えられないまま死んでしまったら、それは嫌だなと思っています。

自分の手をどんどん動かして、現場の仕事をバリバリやっているように見える北村さんですが、現場にこだわっているということはないそうなんです。

北村さん:私は、いつまでも自分がプレイヤーでいたいとは思っていません。これからは逆に私が、自分より若い世代の人たちの情報にキャッチアップしていくような努力もしていかなければなりませんが。基本的には、若い人を教えて育てたいという気持ちをもっています。


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最後に、北村さんが働く上で大切にしていることが2つあるそうなので、それについて伺いました。

北村さん:1つは「目の前の仕事をしっかりやる」ことですね。これは、小さい仕事も大きい仕事も関係なくです。むしろ、小さい仕事ほど丁寧にやるべきなのではないかと思っています。そしてもう1つは「人のつながりを点ではなく線にすること」です。出会いというのは、案外簡単に手に入るものだと思います。例えば、交流会に参加したり、人の集まる場所に自分から足を運べばいいだけです。でも、そこで出会った人とその後続いていくかは、自分の努力だと思います。積極的に連絡をとったり、何かをお願いしたり。結局、チャンスをつかめるかどうかを決めるのは自分です。自分が行かなければ、他の人がチャンスを手に入れるんですから。

なるほど、とても力強い言葉だな、と思いました。自分の仕事に関して、言い訳したり人のせいにしたりせずにやってきたということが、よくわかる言葉でした。

そんな力強い北村さんに、もう1つだけこんな質問をしていました。それは「今は、仕事を選べる状態にありますか?」です。

北村さん:選んでますね……とりあえずは条件で。金額やスケジュールなど、条件面で受けることが可能かどうかを考えます。それプラス、その仕事を受けることによって、自分の成長があるかどうかも考えます。ただ……今そう聞かれて改めて考えてみたのですが、そういえば最近は選んでいないかもしれません。

最初に「仕事を選んでいる」と答えた北村さんが「最近は選んでいない」と……どういうことでしょうか?

北村さん:今の質問「仕事を選んでいるか?」ということを言われて気づいたんですけど、確かに最初は仕事をなんでもかんでも受けていた時期がありましたし、そこから選ぶようになったのですが……今は、ちゃんと「自分相応の仕事」がきているということなのかもしれません。だから最近は、選んでいないんだと思います。

「自分相応の仕事がきている」ということは、北村さんの仕事の価値が認められている証拠のような気がします。最初は、営業でご自分の仕事を説明して理解してもらうことに、北村さんはご苦労されていたそうです。

北村さんのお話を伺っていて感じたのは、目標をもってどんどんステップアップしているように見える北村さんがやっていらっしゃることは、「現状の自分を冷静に判断して把握すること」のように思いました。今の自分について、北村さんはとても丁寧に考えているのではないかなと感じたんです。それは、未来を見据えているものの、自分の足元がしっかりと見えているということです。「今」の延長線上に「未来」があるのですから、それはとても大切なことですよね。

とても勉強になるお話を伺うことができました。北村さんの今後のさらなるご活躍を期待していたいと思います。


北村朱里02

*Twitter:
 https://twitter.com/kitamuraakari
*コンサルティングオフィス nib.:
 https://kitamuraakari.com


※この記事の取材には、取材されたい人としたい人のマッチングサービ「LOOKME」を利用させていただいております。


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