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寺戸慎也さんの働き方

こんにちは「未来の仕事屋」です。このマガジンでは、「時給で働く」以外のさまざまな働き方を選んでいる方に、その働き方を選んだ経緯や、働く上で大切にしていることなどを伺っています。毎回、共通の5つの質問を通して「じぶんらしい働き方」とは何か?について考えていきます。

今回は「就職支援」のお仕事をされている寺戸慎也さんにお話を伺いました。

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キャリアに悩んだ経験から、現在は就職支援をするお仕事をされているという寺戸さん。地域活性化のための活動などもいろいろとされているそうなのですが、まずは、現在の働き方についてから、お話を伺いました。

寺戸さん:「地域若者サポートステーション」という就労支援の窓口で働いています。雇用形態は「契約社員」です。厚労省の委託事業が1年毎の入札方式なので、支援員は期間1年の契約社員という世知辛い事情があるのですが(笑)、委託事業は8年程続いており、長年働いているスタッフがほとんどです。施設内での「面談業務」がメインですが、支援の過程で、地域の商店会のみなさん、企業のみなさん、各種行政機関、医療機関と様々な人たちと連携が必要なので、外を飛び回っていることも多いです。町興しのために「HattoriBeat’19」というイベントを地元のミュージシャンの方と開催したり……いろいろやってますね。

さまざまな悩みを抱えて窓口にくる方たちを、1人1人の事情や背景を理解しながら対応していくのは、かなり骨の折れる仕事ではないでしょうか?

寺戸さん:発達障害をもつ方を支援することが多かったり、他にも精神疾患、生活保護、家族問題、多重債務……さまざまな要因が複合的に絡み合っており、必要なアプローチもケース毎にまったく違います。どこから手を付けるのか、どの支援機関に繋ぐのか、相談者さんの心理状況はどうなのか……奥が深いお仕事ですし、知識の幅を広げていけるのが、骨が折れるというよりは、すごく楽しいです。支援員としての業務の他に「いつも隣にITのお仕事(https://tonari-it.com/)」というブログでライターをさせていただいていたり(2018.7~2019.4)、Wordpressでサイト構築の仕事を請け負ったり、いわゆる副業もちょこちょこしています。

大変なお仕事を楽しんでやりながら、副業までされているというのは、とてもパワフルですね。

寺戸さん:ずっと就労支援をしているわけではなく、大学を卒業してからはシステムエンジニアとして5年ほど金融機関のシステム開発・保守運用をしていました。「パニック障害」になったことをきっかけに、介護の世界に入り、小規模デイサービスの管理者として4年程働きました。その後一度システムエンジニアに戻ったのですが、やはり対人支援の仕事がしたくて今の職場を選びました(20代の人生についてはこちらに書いてます→https://shinya-terado.com/review-heisei/)。就労支援は、これまで積んできたさまざまなキャリアや人生経験を活かせる仕事だと思います。個別にプログラミングを教えたりもしています。

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現在、寺戸さんご自身は契約社員という立場で働いていらっしゃいますが、就労支援をされている立場から「時給で働く」ということについて、どのようなお考えをもっているのかを伺ってみました。

寺戸さん:相談に来る方に「時間の使い方には3種類ある」とよくお話ししています。
「浪費」は時間が過ぎるだけで何も得るものがない(ぼーっとTVを見てる等)。
「消費」は必要な時間、だけど資産にならない(食事とか入浴等)。
「投資」は資産が生まれるというイメージです(スキルや知識等)。
「時給」で働くのは「消費」に近く、お金は手に入るのですが「自分の時間」を売っているので、収入を維持するためにずっと「同じ時間」を働き続けなければいけない。ただ、目的次第で時間の意味合いが変わる、ということも必ず合わせてお伝えしています。

ここで、寺戸さんが最後におっしゃっている「目的次第で時間の意味合いが変わる」という点について、さらに詳しく伺いました。

寺戸さん:「ぼーっとTVを見てる」を浪費と紹介しましたが、放送作家になりたい人がTVを見るのと、我々がTVを見るのでは意味合いが変わってきます。放送作家志望の人にとっては立派な「投資」になるはずですよね。経験の少ないうちは、「時給」で働いたとしても、基礎スキルを身につけるための「投資」になります。ただ、ずっと時間を売っていたら、自分に再投資できません。ずっと時間を売るしかなくなってしまう。そこで正社員等の「時給以外の働き方」が効果を発揮します。正社員は「時間」を売らなくていいので、余った時間をスキル修得に投資できます。「専門的なスキル」を身につければ、時間ではなく、「スキル」や「知識」を売ることができます。そこでやっと時給から離れることができます。

実は寺戸さんご自身も、現在のお仕事を通してスキルを修得することを実践されていると言います。

寺戸さん:僕は就労支援機関で働いていますが、膨大な臨床経験が積める現場だからです。そこで得た対人援助のスキルをもとに、「オンライン相談」を始めたりしています。「スキル」や「知識」に投資する→「スキル」を売って働く→余った時間を別のスキルに投資する、こんなキャリアがよいのではないでしょうか。さらに「IT」×「福祉」など複数のスキルを組み合わせることで希少な人材になれると考えています。


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自分の経験を生かしながら、さまざまな活動をしつつ、新しいことを勉強したり挑戦したりすることにも積極的な寺戸さんは、仕事とお金の関係については、どのようなお考えをおもちなのでしょうか?

寺戸さん:正直、まったく納得できるものではありません!(笑)僕が働く条件は、
①自分に裁量権がある
②イマジネーションが発揮できる
③対人の仕事
の3つがあります。その条件に「福祉」の仕事がたまたまハマったという感じです。システムエンジニアをやっていたときは、今より断然給料はよかったのですが、顧客が決めた仕様が絶対だったり、持続性がないなと思いました。ただ先程もお話したとおり、今は臨床経験をたくさん積んで、スキルを身につける期間だと思うので、これからお金も伴ってくると思っています。

働く上での条件を、寺戸さんは明確にもっていらっしゃるということなんですね。そのことによって、お金については納得できるものではないと言いつつも、後から必ずついてくるということに、自信がもてているのだなと感じました。


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お金には納得がいっていないという寺戸さんですが、明確に将来が見えていらっしゃるように感じられました。将来について、具体的な不安などはおもちなのでしょうか?

寺戸さん:正直、働き方については不思議なくらい不安がありません(笑)高度経済成長期が終わり、もう工業中心の社会ではありません。今は変化の時代です。「変わらないこと」を望むのであれば、不安が生じるかもしれません。でも、変わってくことや、いろいろ学ぶことが好きなので、僕のような人にとってはいい時代だなぁと思っています。

多くの人が先の見えない将来を不安に感じている中で、寺戸さんのようにそれを「いい時代だ」と感じられる人は少数派なのではないかと思います。

寺戸さん:はい、そう思います。実際に就労支援をしていて感じますが、先が見えないこの時代に、不安を感じている人は多いです。自分の働いていること以外の選択肢があるということを知っているのは、ある種しんどいことです。そういう人々の迷いに寄り添いながら、キャリアを作っていくお手伝いをしていきたいです。

変化を怖がらないということと同時に、「こういう時代だからこそ」と思えることは、必要以上に不安を感じることなく生きていくための、1つのコツではないでしょうか。何事にもとてもポジティブな寺戸さんのお話を伺っていて、そんなことを思いました。


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先程、働く上での条件をお話ししてくださった寺戸さんに、改めて、働く上で一番大切にしていることについて伺ってみました。

寺戸さん:変化、変化と言っていて逆説的なように感じる方もいるかもしれませんが「働く目的に対する想いの純度」ですかね。今、僕は「日本の不寛容な社会を変えたい」と思っています。もっとポテンシャルを発揮してほしいと思うのですが、古くから続く慣習や、人々のマインドがそれを許さなかったり。僕は今、働く以外にも、COUNDUCTOR(コンダクター)という発達障害をもつ方の職場環境を改善するアプリケーションを開発するために、クラウドファウンディングを実施しています。(https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail...)「目的に対する純度」が低いと、周りの「常識」や「慣習」、日々の雑務に流されてしまうと思います。「これ、ほんとにやりたいことなんだっけ?」と自分に問い続けることが大切だと思います。

心の中では「こうしたいな」「ああしたいな」といろいろなことを考えていても、実際に行動に起こせないまま毎日が過ぎてしまうということは誰にでもあると思います。でも、変化が激しい今、それをやっていると、気が付いたときには自分だけが置いていかれてしまうようなことになるかもしれない。もしかしたら、多くの人の将来への漠然とした不安は、こんなところからきているのかもしれません。寺戸さんのように、自分に何かを問い続けて前に進むことの大切さを、改めて勉強させていただきました。今後のさらなるご活躍を楽しみにしていたいと思います。


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*Twitter:
 https://twitter.com/terashin1226
*Web:
 https://shinya-terado.com
*クラウドファンディング実施中:
 https://camp-fire.jp/projects/view/151557


※この記事の取材には、取材されたい人としたい人のマッチングサービ「LOOKME」を利用させていただいております。


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