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「そのときやりたいこと」の積み重ねが未来をつくる

働き方改革が進められる今。みなさんの働き方には、何か変化が起こっているでしょうか? そもそも、どんなふうに改革されれば、みなさんはもっと豊かな働き方ができると思いますか?

このコーナーでは、「働き方」に関するさまざまな話題を取り上げて、「幸せな働き方って何だろう?」ということを考えていきたいと思っています。

■無料塾を立ち上げるきっかけは?

今回は自分の話になってしまいます。恐縮です。

ここ数年、私は無料塾をやっていることで取材を受けることも増えてきました。本業は取材をするほうなので、受けるのはなかなか慣れませんね……。受けるほうの取材では、無料塾を立ち上げるまでの経歴を聞かれることがよくあります。いったいどんな生き方をして、無料塾にたどりついたんだ?と。

そういう質問をしていただくことで、ときどき自分の人生を振り返ってみることも増えてきました。

2014年に無料塾を立ち上げたきっかけは、それ以前に行きつけのバーのマスターに頼まれて、娘さんの家庭教師を格安ですることになったことでした。マスターいわく、「塾に行かせようと思ったら、高くて……」。それで、当時出版社で働きながら、空き時間に私が低価格で家庭教師をすることになったのです。

そのうち、その妹のほうも見ることになりました。マスターいわく、「小学校のクラスが学級崩壊していて、授業がまったく進んでいない」。どれどれと見てみると、確かに2学年前くらいの知識しか積み上がっておらず、教科書もまともに開いた形跡がありませんでした。

なんでも、中学受験のためにバリバリ塾に行っている子たちが学級崩壊を引き起こしており、これに対して学校もなすすべなく、塾に行けない子たちの教育がほとんどストップしてしまっている状態とのこと。こんな状態を放置していたら、中学生にはなれたとしても最初から勉強で躓いて、それでも補修や塾通いで取り戻すことができなかったら、高校受験はどうなるの!?

ということで、無料塾を始めることにしたのでした。

ちょうど塾を立ち上げる頃、私はフリーになって、編集した本や雑誌の執筆を通じて教育や、日本の格差問題に少し興味を持ち始めていました。

科学や政治経済、歴史、世の中には掘り下げるととても面白いことがあるのに、子どもたちにとってはどれも「勉強(苦痛!)」となってしまうのはもったいないなと思っていたのでした。そのため、塾では学科の勉強はもちろん指導するのですが、なるべく世の中のさまざまなことの「面白さ」を伝える時間をつくりたいと考えました。

結果、私の塾では3時間のうち1時間、世の中のさまざまな事象を「面白く学ぶ」時間をなるべくとることになったのでした。それまで10年以上携わってきた雑誌編集での経験を、塾でなるべく活かそうと思ったのです。

塾を立ち上げるきっかけをいろいろ考えてみると、夜な夜な飲み歩く生活の中でマスターと出会ったこと、その娘さんの家庭教師をやったこと、出版の仕事を通じて教育や格差問題に興味を持っていたこと、雑誌編集の経験から「面白い学び」を実現できると思ったこと、ということが挙げられます。

もちろん、社会人になったときには自分が教育に携わることなど考えたことはなかったのですが、こうした成り行きで、今ここにたどり着いています。

■もっと前をたどるとプロレスに行き着くのでした

では、その前の雑誌編集の仕事をするきっかけになったのは何ですか? 取材ではそう聞かれることもあります。

私は、これまで2つの出版社で雑誌の編集部に在籍しています。2つめのほうは男性向けの総合月刊誌で、ここでさまざまな社会問題や政治経済、ビジネス、文化的なネタ、あとは下ネタ(笑)を担当してきました。

この編集部に入ったきっかけは、その前の編集部がウェイトトレーニングの専門誌というかなり狭い業界の月刊誌をつくっていたことでした。小さな出版社で、経理も営業も広告も販売も全部編集部員が行います。物販もやっていたので、毎日注文をさばく仕事もあります。

これはこれでものすごく楽しかったのですが、まあいろいろあって、「もっと編集だけに特化して、もっといろんな物事を扱える雑誌で仕事をしたい」と思うようになったのでした。

ウェイトトレーニングの専門誌に入ったきっかけは、大学時代に私は格闘技系の部活でマネージャーとして活動していて、競技における体重調整、栄養管理、トレーニングの方法などにものすごく興味をもったことでした。まさにその専門誌が、興味を満たしてくれるものだったのです。

格闘技系の部活に入ったきっかけは、中学時代にプロレスに出会い、高校時代は「プロレスラーになりたい」と思うくらいまでプロレスが好きになって、そうこうしている間に総合格闘技にも興味をもったりしたことでした。

つまり……なんだんかんだ今の自分の出発点は、「プロレスにハマった」ことだったりするのではないかと思うのです。まあ細かいことを言えばもっといろいろあると思うのですが。

ちなみに、その前の小学生、中学生の頃は、「自分は将来出版社に入るんだろうなあ」と漠然と夢を見ておりましたが、別にそのために何か行動したことはありませんでした。ただの読書好きな女の子、というだけです。

■スティーブ・ジョブズはいいこと言う

無料塾を立ち上げるくらいの頃に、スティーブ・ジョブズのこんな言葉を知りました。

Connecting the Dots

点と点をつなげということです。人生の中でさまざまな行動をしたり、興味を持って見聞きしたりする「点」をたくさん打っておくと、その点と点をいつか結びつけて新しい何かが生まれるよ、ということです。

自分のここまでの人生を振り返ってみると、まさにそのとおりだなと思うのです。

将来これをやりたいから、今こうしておこうと思って動いたことは実はほとんどなく、だいたい「今これに興味がある!」で動いてきた私ですが、それでもなんとかなる。さらに、いろいろやっておくと、自分が考えてもみなかった面白い方向に人生が動いていくことがある。点をたくさん打つことって大事だなぁと思うのです。

だから、教えている中高生たちに願うのは、「将来お金を稼げるようになるために」とみんなと同じように勉強をして受験をして生きていくのではなく、今興味があることがあれば、そこに没頭する時間、行動する時間をつくってほしいなということです。

ずっと同じことに興味を持ち続ける必要もなく、ただ行動をすればいいんです。その点が、また他の点とつなぎ合わさることで、きっと人生はもっと面白くなっていくからです。


大西桃子
1980年生まれ。出版社2社、電子出版社1社の勤務を経て、2012年よりフリーのライター・編集者として活動。2014年より経済的に困難を抱える中学生を対象にした「無料塾」を立ち上げ、運営。

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