『ブルーマウンテン』 第ニ週 《見えない糸》vol.8
【登場人物】
谷崎 涼真/25歳
カフェでバイトをしている。
いつか、自分で店をオープンするために修行中。
嶋田 樹(いつき)/20歳
大学生。両親は有名な俳優。
幼い頃から世話係に育てられ、親の愛情を知らない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
涼真:
『辛かったな…』
肩を震わせて泣いている彼を、俺はそっと抱きしめた。
(涼真、樹にココアを入れる)
涼真:
『ココア…どうぞ』
樹:
『…ありがとう』
涼真:
『…少し、落ちついたか?』
樹:
『…う、ん…』
涼真:
『…さっきはすまなかったな』
樹:
『?』
涼真:
『…あ、いや…抱きしめたりしちまって』
樹:
『……』
涼真:
『…よく知らない男に、抱きしめられてもな…』
樹:
『…あ…』
涼真:
『…気持ち悪かったろ』
樹:
『……そんな』
涼真:
『…?』
樹:
『……初めて、』
涼真:
『…ん?』
樹:
『…誰かに抱きしめられたこと、なかったから』
涼真:
『…』
樹:
『……嬉しかった』
涼真:
『…そっか…本当に寂しかったんだな』
樹:
『……』
涼真:
『あ、そう言えば…』
樹:
『…?』
涼真:
『君の名前…聞いてなかったな。』
樹:
『…ぼ、僕は、嶋田…いつき』
涼真:
『樹…俺もさ』
樹:
『…?』
涼真:
『寂しかったんだよ、ガキの頃』
樹:
『どうして?』
涼真:
『俺が小学校に、入る前…実際にはあまり記憶がないんだけど…母さんが、家を出て行った』
樹:
『お母さんが?』
涼真:
『ああ。その時はよくわからなかったが…
中学生位になった頃、10歳年上の姉さんが教えてくれたんだ。
…母さんが、若い男と、駆け落ちして家を出て行ったって』
樹:
『…そんな』
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