2021年声優曲kieru的BAEST10

■はじめに。
個人用メモ。これは2021年の声優曲の記憶を保存しておくメモです。
①~⑩は発売順で並べました。
個人的な記憶と深く結びついた楽曲については、記録として言語化しておくことが重要であると考えています。新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、現地ライブへの積極的な参加のモチベーションはほぼなくなってしまった。例えば、昨年や今年にデビューしたちょっと気になる声優のライブ、などには参加できていない。なので、新しい発見や驚きには出会えない年になってしまったことを個人的には後悔している。積極性のある声オタ活動と外出自粛のバランスが難しい年でもあった。
けれども、このような心理が、各声優の音楽活動において初期ユーザ獲得への障壁となっていることは音楽業界も承知しているのだろう。今後の声優音楽活動はどのようになっていくのか。そろそろ私自身の活動も含めて、そろそろ分岐点にきているように思えた。

■2021年声優曲kieru的BAEST10
①Over & Over/中島愛
②No.6/伊藤美来
③悔しいことは蹴っ飛ばせ/小松未可子
④EVERYBODY! EVERYBODY!/芹澤 優 with DJ KOO &MOTSU
⑤キスイダ!/如月玲於奈(CV:竹達彩奈),アリシア(CV:ファイルーズあい),ミザリサ(CV:井澤詩織),結城楓(CV:古賀葵)
⑥それでも願ってしまうんだ/豊崎愛生
⑦Run Alone!/富田美憂
⑧情熱のテ・アモ/雨宮天
⑨a・b・y/茅原実里
⑩透明シンガー/早見沙織

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①Over & Over/中島愛
発売日:2021/02/03
作詞:三浦康嗣
作曲:三浦康嗣
編曲:三浦康嗣
(中島愛5枚目のオリジナルフルアルバム「green diary」に収録)

中島愛によるトリッキーな変調楽曲。
中島愛「髪飾りの天使」「水槽」あたりが収録されていたために「green diary」を購入した。とりあえず頭から聞いてみようと再生したら「Over & Over」でガツンと脳みそを揺さぶられた。この衝撃がとてもよい声優楽曲体験で、記憶に残っている。
単音のピアノと、中島愛の歌い出し。そこから数々の楽器が重なっていき、歌のテンポが耳から身体に染み込んでいく感覚。一度歌手活動を休止して、そして再開してからのアルバムにふさわしいような歌詞。一歩一歩、一音一音と曲ともに彼女のピッチとリズムで、音楽と向きあっているような楽曲。
そしてこの楽曲のピッチとリズムもトリッキーで、変調で、でもそれが中島愛の音楽であり、人生であり。そういうニュアンスがじわじわと伝わってくる。歩いて、歌って、それが中島愛の生活の一部になっている。中島愛らしい楽曲。彼女の思いと技術がこの一曲に詰まっている。


迷いは消えない
答えなんてどこにもないけど
歩いていけば
歌っていれば

というラストの歌詞も、歌が大好きな中島愛らしい。中島愛×三浦康嗣ではこのアルバム前に「夏の記憶」を制作している。この楽曲も「Over & Over」と同様に、音と声だけのラップとまではいえない、声/セリフも楽器の一部と捉えたかのような音楽に仕上がっていた。そういう意味では、セリフ部分も含めて「夏の記憶」の爽やかさと温かみのある音が「Over & Over」にも継承されていたのだろう。

Over & Over

参考。夏の記憶。

余談。
「off/東山奈央」も作詞;三浦康嗣×作曲:三浦康嗣であり、このセリフっぽい歌詞と独特のリズムとテンポはかなり独特で、声優楽曲との相性も良さそう。

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②No.6/伊藤美来
発売日:2021/04/28
作詞:園田健太郎
作曲:園田健太郎
編曲:千葉岳洋
(TVアニメ「戦闘員、派遣します!」オープニング)

やっぱり伊藤美来のブラスバンド楽曲、大好きだよね!を再確認した。
伊藤美来×作曲:園田健太郎は「Shocking Blue」以来の組み合わせ。ある種の約束された勝利の楽曲という感じ。だけれど、そこにはしっかりと新しさや進化がある。「Shocking Blue」のブラバン楽曲に「閃きハートビート」などでみせたダンスを組み合わせて、伊藤美来最終進化形態という仕上がりになっていた。MV込みで印象深い。
「戦闘員、派遣します!」のTVCMでも、軽快なダンスシーンが何度も流れて、ブラバン×ダンスという2つの武器を組み合わせてきた感が、受け手としては気持ちが良かった。そして「Shocking Blue」で魅せたかっこよさよりも、可愛さよりに才能が開花した楽曲でもある気がする。また、精力的にライブ活動もしているので、ライブ映えも意識しているのだろう。間奏には、バンドメンバー紹介パートになるようなベースソロ、ドラムスソロパートなども用意されており、ライブ感も十分にある。爽快感とキュートさ、リズムとブラバンの心地よさが異常で、何度聴いても飽きがこない。
余談。
「No.6/伊藤美来」を二度、生のパフォーマンスをみる機会があった
06/19「EJ My Girl Festival 2021」
11/20「ANIMAX MUSIX 2021」
どちらも伊藤美来は二人のダンサーを引き連れてNo.6を披露していた。
”Operation No.6 それぞれに走り出そう"という歌詞の部分。
結構、インパクトのある振り付けで、可愛らしくて、私の脳内には良い形で残っていた。けれども、実際の生ライブでは、マイクを持ってパフォーマンスをする関係で、ダンサーの二人は走り出す振り付けをしているけれど、みっく自身は走り出す振り付けはしないまま歌っていた。「いや、それぞれに走り出してないじゃん!(特に、みっくは)」みたいな感じになったので、それが印象的だった。

伊藤美来 / No.6(TVアニメ「戦闘員、派遣します!」オープニング・テーマ)

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③悔しいことは蹴っ飛ばせ/小松未可子
発売日:2021/05/19
作詞:Q-MHz
作曲:Q-MHz
編曲:Q-MHz
(TVアニメ「さよなら私のクラマー」エンディング)

純粋に小松未可子の音楽活動が続いて良かったと、心から思えた一曲。結婚し、ライフステージが変わっても声優、歌手である小松未可子の歌唱パフォーマンスが見れる、というのが純粋に嬉しい。しかも、爽快でキャッチーな応援歌であり、声の伸びが抜群に気持ちが良い。タイアップの「さよなら私のクラマー」はサッカーをする少女の青春スポーツ漫画だし、そういう客層に向けての応援歌を意識しているのだろう。
「一緒に困難を乗り越えよう!」というようなイメージよりも「それぞれのゴールや夢に向かって頑張って!」というイメージの応援歌。一つライフステージがあがった小松未可子からの、この歌詞は心に刺さるものがある。兎に角、楽曲は爽やかで、ポジティブにもなれる。特に、ラストのサビ前からサビの歌詞がすごく気持ちが良い。

まっすぐに伸びた道などないから
迷いながらかっ飛ばそう here we go!
今日もみんな元気に
声を出して笑って
悔しいことは蹴っ飛ばせ
赤い夕焼けが背中を
頑張れって照らすよ
まぶしいでも見ていたいな
そうだもっと頑張れるよ 明日は!

何かの縁があって、私は
6月27日(日) 小松未可子「悔しいことは蹴っ飛ばせ」リリース記念イベント @アニメイト池袋本店
に参加した。
そこでみかこしの歌唱パフォーマンスをみれてとても感激したのも記憶に残っている。生みかこし、本当に久しぶりだったし、表に出てくるイベントをしてくれたのも嬉しかった。発声が禁じられていた中でのお見送りイベントとして、アクリル板越しにコミュニケーションをしたこともコロナ禍ならでは感があり、イベントの形態も変わっていくのを実感していたりした。そして特別ゲストとして、楽曲提供のQ-MHz所属、田代智一が登壇して制作裏話を語った。
特に興味深かったのは、同じQ-MHzプロデュースの小林愛香と小松未可子との違いについてのトークだった。「さよなら私のクラマー」のアニメのOPが「AMBITIOUS GOAL/小林愛香」であるし、Q-MHz曲である。
正直、小林愛香の声域と小松未可子の声域は近い部分があると思っていたし、彼女のソロ曲をQ-MHzがプロデュースしはじめたのをみて、きっと小松未可子の楽曲活動はシュリンクしていくのだろう、と想像していた。
だが、その私の想像は異なっていた。
「さよなら私のクラマー」では、小林愛香と小松未可子は共に声優としても出演している。小松未可子はサッカー部のキャプテンで部員を率いるリーダー的な存在。いわゆるお姉さん的な立ち位置で「それぞれのゴールや夢に向かって頑張って!」と応援する。小林愛香は後輩役であり「誰よりも熱くなれ!いまが勝負だ!」といった直接的な表現の歌詞となり、それを「AMBITIOUS GOAL/小林愛香」が担っている。それによってプロデュースの違いが出ているし、小松未可子にとっては、ただがむしゃらに「今が勝負だ!」という時代は終わり、これまでの歌手活動で習得した技術と経験で、視聴者たちの背中を押し「悔しいことは蹴っ飛ばせ!」とエールの歌を贈ることができる。そうした経験と技術に基づく差別化をしているといったことを、田代智一がトークで語っていた。(その裏には、原作漫画を読み込んだ畑亜貴の存在も大きい、とも語っていた)
小松未可子の歌手活動のこと、自身も迷いながら人生を歩んでいること。そしてすべての人達が、このコロナ禍での人生が変わっていくこと。きっと悔しいことはたくさんあるのだろう。それをこの曲は吹き飛ばしてくれるし、無限にポジティブになれる。そういう力がまだまだ小松未可子にはあることを再認識させられたし、彼女が歌手活動をしてきた技術と経験がこの曲に詰まっているともいえる。そう思うと、”そうだ、もっと頑張れるよ、明日は!”という言葉、中々に心に響く名句である。

小松未可子「悔しいことは蹴っ飛ばせ」

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④EVERYBODY! EVERYBODY!/芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU
発売日:2021/05/19
作詞:MOTSU
作曲:MOTSU
編曲:大久保薫
(TVアニメ「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω」オープニング)

芹澤 優とDJ KOO &MOTSUによるパリピ曲。
正直、avexの本気を感じたし、このコラボを考えた人天才的だな……っ!となった。しかもコラボ曲は「EVERYBODY! EVERYBODY!」だけではなく、「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω」のエンディングもこの三人の布陣の楽曲である。
「YOU YOU YOU」(作詞・作曲・編曲: MOTSU)
つまり芹澤優がOPとEDを両方とも担当している。近年のアニメソング市場では、珍しい。そもそも「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω」では芹澤優は主役を勤めている。かなり芹澤優という声優と音楽活動をプッシュしてきていることが伝わる。けれども、楽曲はそのよくわからないプッシュの圧力をすべて吹き飛ばすほどに、凄まじいパワーのあるパリピ曲になっている。ライブやフェスで歌えば、全員が自然とノリだし、踊りだす。そんな不思議な魔力が詰まった楽曲である。それに、芹澤優は「You & Me/田村ゆかり」の楽曲が大好きだったというエピソードがある。「EVERYBODY! EVERYBODY!」はMOTSUによるラップパートもあるし、コロナ禍でなければ、オタクたちとの掛け合いも楽しめたであろう楽曲になっている。こういうエンタメ性も含めて、かなりいい感じに仕上がってくる。また「You & Me」を意識しての「YOU YOU YOU」が作られたのだろう。You & Meではなく、主張の強い芹澤優ならではの、優優優。優勝ですね。
それは兎も角、CD付属の特典には「EVERYBODY! EVERYBODY!」「YOU YOU YOU」のMVメイキング映像が収録されていた。しかもガッツリと相当なボリュームで。ちなみに、その映像では芹澤優を映している時間よりも、 DJ KOOとMOTSUを映している時間のほうが長くてそれも大変に面白かった。撮影現場で、色々な提案をしてみるMOTSUさんの積極性と人柄がめちゃくちゃ伝わっている。DJ KOOも芹澤優のMVのために慣れない振り付けを練習し、披露している。そういったエンターテイメントの塊みたいな人たちが、この楽曲を芹澤優のために提供していた。身体を張ってMVの撮影に参加した。しかも2曲とも。その事実が映像から伝わってくる。かなりの満足度がある。avexのレジェンドたちが芹澤優に力を貸している姿がなんか心に響いた。そういう意味でも、avexの本気を感じたりしていた。

芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU / EVERYBODY! EVERYBODY!

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⑤キスイダ!/如月玲於奈(CV:竹達彩奈),アリシア(CV:ファイルーズあい),ミザリサ(CV:井澤詩織),結城楓(CV:古賀葵)
発売日:2021/05/26
作詞:烏屋茶房
作曲:烏屋茶房・橘亮祐・篠崎あやと
編曲:橘亮祐、篠崎あやと
(TVアニメ「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」エンディング)

キャラクターも電波、歌詞も電波、曲も電波。声優キャラソン電波ソング。
個人的に、久々に複数声優電波キャラソンとして心にぶっ刺さった。破壊力抜群。特に、21年はファイルーズあいのラジオを沢山聴いていたので、この曲のファイちゃんが常軌を逸している感じで大変に良かった。そもそもこのフルダイブRPGのヒロインたちが全員、まともではない性格をしている。かなり露悪的にキャラクターが作られていて、それで強引なギャグを視聴者に押し付けてくる。このパワープレイなアニメだからこそ、このような電波的なキャラクターソングが生まれるのだろう。

・如月玲於奈(CV:竹達彩奈):長身銀髪巨乳の美人。平気で人を騙すし、嘘を付くし、性格が悪い。
・アリシア(CV:ファイルーズあい):金髪美少女。兄のマーチンを殺されて、主人公のことも殺して3人で地獄で暮らすのが夢。
・ミザリサ(CV:井澤詩織):赤髪ツインテールロリ美少女。異端審問官で拷問好き、四肢切断も大好き。
・結城楓(CV:古賀葵):主人公の妹。兄のことを嫌い、フルダイブRPGでポックリしちゃえばいいと思っている。

このヤベいヒロインオールスターズによるセリフ込みのキャラクターソングが何故か癖になる。しかも途中で声優ラップも入るので、声優キャラクター電波ソングとしての満足度もある。基本的には、大大大大好きを主人公に伝える曲なのだけれど、それぞのれ愛し方が異質であり、それが歌詞にダイレクトな言葉として飛び出てきて、笑っちゃう。でも、アニメのヒロインとしての可愛さも数%含まれており(?)、そのバランスが既存のキャラソンにはない唯一無二感が光る。
個人的にはやっぱりファイルーズあいちゃんの楽曲中での台詞が大好き
「殺してあげたい!」
「ヒロは私が殺してあげるね!!」
「殺したいくらいにいいいいい!」
欲しいのは?「あなたの命」
「この、この、人殺しぃいいいいいいいい!」
「今からヒロを殺すからねぇええ!」
しかもだんだんとファイちゃんの声のテンションが壊れてきて、後半は喉が引きちぎれるほどの勢いで「殺す!」という殺意を叫んでいる。元々デスヴォイスなども得意であったファイちゃんなので、きっと楽しくレコーディングしたのだろうけれど、こんなにも直接的な殺意の表現をキャラソンとして歌唱しているのは中々にレアリティが高い。烏屋茶房の楽曲をざっと調べてみたら、以下の楽曲がヒットしたので、なるほど感があった。
「ミタナ? ミタヨネ?? ミテルヨネ???/四谷みこ(雨宮天)」
「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ/「私」(悠木碧)」
これからのキャラクターソング声オタライフにまた一つ楽しみが増えたといえる。

TVアニメ「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」EDテーマ「キスイダ!」視聴動画

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⑥それでも願ってしまうんだ/豊崎愛生
発売日:2021/06/30
作詞:田淵智也
作曲:ミト (クラムボン)
編曲:ミト (クラムボン)
(4thアルバム「caravan!」に収録)

豊崎愛生による「幸せ歌」の2021年バージョン。
コロナ禍を一緒に乗り越えようとする願いを込めた渾身の一曲でもある。クラムボンのミトさんが関わる楽曲として「music」がある。この楽曲には「幸せ歌」という歌詞が出てくる。豊崎愛生自身やこれを聴く人たちにパワーを与える楽曲に仕上がっていて、まさに「幸せ歌」なのである。この「幸せ歌」という概念を2021版にアップデートしたのが「それでも願ってしまうんだ」である。コロナ禍の状況で、直接声を届けることが出来ない豊崎愛生のもどかしい気持ちをその歌詞とメロディに込められている。優しく、暖かい声に導かれるように、この楽曲のリズムに自然と身を任せてしまう。そういう心地よさがある。特にサビ部分のこの歌詞が心に入ってくる。

手を繋ぎたいよ 目を合わせたいよ 単純な気持ちも声に出していこう
"
こういったファンの声を豊崎さん自身が、心を込めて歌唱してくれる。それだけでもうファンとしては幸せであり、それを歌で伝えることができることの喜びを豊崎さん自身で感じることができる。そのような双方向のコミュニケーションをこの楽曲は実現している。それが豊崎愛生の目指してきた音楽であり、みんなで一緒に楽しむ、という豊崎愛生のライブコンセプトにも繋がってくる。等間隔のキーボードの音とクラップによる前奏はとても穏やかなはじまり。ライブ感も意識している。
私はこの楽曲を聴いた時、
「ライブで楽しそうに歌唱している豊崎さん、そして楽器を奏でるバンドメンバー、それを楽しむファンの人たち。
それらが会場で一体となって、一つの音楽を楽しみながら、幸せな時間と空間を共有していく楽曲だな」
という感想を抱いたし、この楽曲からその姿が脳内で想像できた。それくらいにライブ感も意識していたのだろうし、それが伝わる楽曲になっている。
きっとそれは豊崎さんにとっても幸せなことだろうし、この楽曲が確かにファンの人に伝わった証でもある。つまり「それでも願ってしまうんだ」は、豊崎さんとファンの双方向の「幸せ歌」なのである。

豊崎愛生 / それでも願ってしまうんだ (Short ver.)

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⑦Run Alone!/富田美憂
発売日:2021/06/30
作詞:坂井竜二
作曲:山崎真吾
編曲:山崎真吾
(1st ALBUM「Prologue」に収録)

富田美憂らしい歌声が光るデジタルロックチューン。
2021年で楽しみにしていたイベントの一つが
「2021年09月26(日) 富田美憂 1st LIVE ~Prologue~@LINE CUBE SHIBUYA」だった。
「Prologue」収録曲でも「片思いはじめました」や「Some day, Summer day」「Letter」などもすごく良かった。その中でもライブではとても異様な盛り上がりをみせたし、デジタルロックチューンの中にも色褪せない富田美憂の特徴的な歌声が生き生きとしていて、その将来性の期待値が高い、と個人的に感じたりもした。既存の富田美憂楽曲では、どちらかといえば、ミドルテンポでハイトーンの伸びのある歌声の特徴を生かした楽曲が多かったように思える。けれども、この楽曲は速度も早く、ワード数も多く、デジタルロックとしてのカッコよさも必要になっている。それを富田美憂自身で完全にモノにして、コントロールし、富田美憂としての歌声を損なうことなく、歌唱表現している。さらに個人的にいえば、かなり飛蘭が得意としていたデジタルロック楽曲に似たテイストだと感じていた。
作詞:坂井竜二×作曲:山崎真吾×歌:富田美憂といえば、「ハレルヤ☆エッサイム」である。したがって、アルバム制作時にこの楽曲同様にデジタル声優ラップ楽曲の選択肢もあったと思えるが、そうではなく、富田美憂の歌声の特徴を活かしたロックチューンを1stアルバムに加えた、というのも良かった。また、最近の声優楽曲×山崎真吾といえば、「ライフコレオグラファー/豊崎愛生」「グルグルオブラート/夏川椎菜」などがある。どちらもデジタル楽曲ではあるが、変化球感があって、エンタメ性が抜群である。そういう印象からかなり離れた「Run Alone!/富田美憂」という選択が、なんというか、2021年の富田美憂にとっては大事だったに違いない、と思ったりした。

Run Alone!

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⑧情熱のテ・アモ/雨宮天
発売日:2021/07/21
作詞:雨宮天
作曲:雨宮天
編曲:宮永治郎
(12th シングル「フリイジア」に収録)

コロナ禍で楽曲制作に本格的に取り組んだ雨宮天の渾身の作詞・作曲声優楽曲。
いままでの歌手活動では作詞などに挑戦しつつ、作曲も鼻歌などから楽曲を作ったりしていた。けれども、コロナ禍になり、自宅にいる時間が増えて、雨宮天は作曲の勉強を本格的始めたと、ラジオのトークで語っていた。10万円程度する音楽制作ソフトを購入したり、自身の楽曲制作のコンセプトに合った歌を聴いたりなどした。その成果がこの「情熱のテ・アモ」に出ている。タイトルに「情熱」とついている通り、ラテン調のリズムと楽器を全面に押し出した情熱的な楽曲に仕上がっている。かなりプロのレベルに近い作曲力だと感じた。また、歌詞もまた個人的に秀逸だと感じた。

汗ばむ身体で 乾いたヒールの音鳴らし
視線を纏って 軽やかなステップを踏むの
戻れない戻らない あの日かき消すように

という導入からはいる。
ラテン調のノリでフラメンコ=踊りを連想させるし、"あの日かき消すように”で失恋を連想させる。そしてサビの歌詞も傑作。
"
強く抱き寄せて さあ奪って
リズムに身を預け
愛の囁きより確かな熱を
そのままに 本能のままに
溶け合うの 月を焦がすほどに
情熱のテ・アモで 踊らせて
"
作詞の王道的な手法の一つに、性愛についての匂わせをしつつ、作詞をしていくというものがある。
”抱き寄せて、奪って、リズム、確かな熱、本能、溶け合う、焦がす、情熱、テ・アモ、踊らせて”
これら全ては、性愛の隠喩であるとも読み取れる。ちなみに「テ・アモ」はスペイン語で「愛しています」の意味である。
※「te(テ)」は君、「amo(アモ)」は愛。
こんなに性愛の隠喩を歌詞に散りばめた声優による作詞楽曲って他にあるのか?!という驚きがあった。一方で、そのような新時代に突入していったのである、この楽曲で強く感じたりした。総合すると、雨宮天の王道的な作詞手法の技術が明確に現れており、そして本格的に作曲に取り組んだ結果としてプロ級の作曲力が重なった声優楽曲であると感じられた。雨宮天による懇親の創作活動がこの楽曲で開花し、自身でモノにして、その性愛隠喩の楽曲をステージ上で華麗に歌い上げる雨宮天の姿。必見。

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⑨a・b・y/茅原実里
発売日:2021/11/18
作詞:奥井雅美
作曲:俊龍
編曲:藤田淳平(Elements Garden)
(歌手活動を休止ラストのミニアルバム「Re:Contact」に収録)

世の中で茅原実里しか歌唱できない贖罪。
 ※aby=動償う、贖う、贖罪する
まずは下記のインタビュー記事に目を通して欲しい。
そして茅原実里のライブパフォーマンスを観た人は必ず「Re:Contact」を聴いて欲しい。心の底からそう思えるほど、このミニアルバムは歴史上で意味のあるアルバムに仕上がっている。

◆茅原実里「Re:Contact」インタビュー|歌手活動休止前最後の作品でみんなに届けたい“未来への希望”(音楽ナタリー/2021年11月18日)

その上で、改めてその歌詞・作詞・作曲・編曲に注目していきたい。
歌詞がとてもじゃないが、楽しい気持ちにはなれない贖罪の歌。特に、サビは鬼気迫る。その歌唱表現にも、歌詞にも、何かが取り憑いている。
"叫ぶように愛して 私を赦さないで"
から始まり
"痛みの先にある 慚愧の壁 乗り越える時まで 私、この実 赦せるときまで…赦さないで"
で終わる。
シリアスさ、悲痛さ、儚さ、やるせなさに詰まっている。インタビューでも茅原実里自身はこの楽曲について、以下のように語っている。
”大先輩の奥井さんは私のことを知り尽くしているので、私の気持ちやファンの気持ち、奥井さん自身の願いも投影しながら作詞してくれました。タイトルは“贖罪”という意味を持っているそうです。受け取ってからレコーディングが終わるまで、一番咀嚼するのが難しかったです。向き合って唄うことがとても苦しかったです。きっとそれだけ核心を突かれているのかもしれないとも思ったし、言いたくても言えないような心の奥にある感情を歌で吐き出させてくれたようにも思います。”
この歌詞をどのような思いを込めて、奥井雅美が書き上げたのかも想像すると、これは単なる贖罪の歌ではなく、この歌を力いっぱいに歌唱することで、あらゆる感情と向き合い、吐き出させて、それを乗り越えることを期待しての歌であることがわかる。
つまり、悲痛さだけではなく、未来への期待も込めて、歌にする必要がある。なんともまぁ難しい宿題、宿命を茅原実里に背負わされるのか…という驚きもあるが、それらを総合してこの楽曲が提示されると、茅原実里の歌に対する取り組み方やひたむきさを改めて再認識することができる。
奥井雅美は「嘘ツキParADox」「efection」「輪舞-revolution」などを楽曲提供してきた。俊龍は、茅原実里の初期から楽曲で支えてきて「蒼い孤島」「too late? not late...」「愛とナイフ」などを制作。藤田淳平も茅原実里の音楽活動の後半「X-DAY」や「あなたの声が聞きたくて」で楽曲制作に参加している。茅原実里を知り尽くした三人が、茅原実里とそのファンたちに贈る贖罪と希望の唄。
この歌を歌いきれる声優は世界で唯一人、茅原実里だけである。
その唯一無二で、二度と声優楽曲界には登場しない方向性の楽曲であると断言できる。「Re:Contact」の表題曲「Re:Contact」も相当な仕上がりをみせていたけれど、個人的には「a・b・y」の存在感と唯一無二性に心が惹かれてしまった。
※「Re:Contact」(作詞:畑 亜貴 作曲/編曲:菊田大介(Elements Garden))

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⑩透明シンガー/早見沙織
発売日:2021/12/17
作詞:早見沙織
作曲:ぷす(fromツユ)
編曲:ぷす(fromツユ)
(デジタルシングル)

早見沙織の音楽活動、誰に向けたターゲィングしているか?がすごくわかるよね楽曲。
早見沙織はアーティスト活動6年目。新曲のリリースは1年以上あいてしまったが、21年の12月に滑り込みで新曲をリリースした。それがこの「透明シンガー」である。作曲・編曲は、27歳のボカロP。サビはBPMはさほど早いわけではないが音数は多く、ワード数も多く、息継ぎの隙間は限られていて、激しい激情を乗せながらのロックチューン。ボカロPらしい楽曲といえば、そうではある。だが、この楽曲における感情の表現的な面で、早見沙織の技術力を垣間見ることができるし、歌唱の技術力もダイレクトに伝わってくる。歌詞は早見沙織自身で書いているので、感情が乗せやすいというのもあるのだろう。元々「孤独とか生きづらさとかを感じる人の光になってくれる曲を作りたいなと思っていたんです」というのがきっかけになって「透明シンガー」の楽曲制作に取り込んだらしい。そのため、どちらかといえば、10代や20代で夢を追っている人達に向けた、早見沙織の応援歌でもある。夢を追うもどかしい気持ち、それを早見沙織が声に出して代弁し、聴いている人達に勇気を与える。そういうエンパワーメントな力を持つ楽曲でもある。

なんで なんで なんで いつも届かない
叶えたい本当の気持ちを
声に出す勇気が欲しい 私の声よ 全部 全部 届いてよ
透明シンガー
「なのよ」って今も叫んでる
"
この時代に透明になってしまって、誰にも声が届くなってしまった人達に向けた歌。それを早見沙織が歌唱することで、透明ではないこと、その存在を認めてくれるような歌。そのように感じ取ることもできる。そして、これらはきっと10代20代に向けた、若い世代に向けたメッセージであるように思える。27歳のボカロPであるぷすさんのファンの人達もわりかし若い世代だろう。早見沙織のラジオリスナーから「中学生の妹がぷすさんのファンで「透明シンガー」のMVをみて高評価を押した」というメールが読まれていた。なるほど感がある。そして大ヒットアニメ「鬼滅の刃」などで早見沙織を知った10代たちが聴くことも想定している気さえする。
そういうことを考えると、そのようなターゲット層に向けたエンパワメントな楽曲という方向で新曲をリリースしたのもかなり得心する。すでに早見沙織の歌唱技術は疑う余地もない。どんな楽曲も歌えるだろうし、どんなクリエイターともコラボはできる資質と経験がある。だからこそ、しっかりとターゲット層を狙った楽曲を作るのはプロの手法でであり、そのターゲット層に寄り添うような力強い歌詞と、若年層に人気なボカPとの作曲コラボ。私は、その早見沙織と楽曲制作陣の姿勢に賛成の立場をとる。既存のファンだけではなく、新規ファンの獲得を狙った渾身の1曲であると感じたからこそ、そうした取り組み方やマーケティング戦略も含めて「透明シンガー」は2021年の声優楽曲に選ぶべきだと感じた。

早見沙織「透明シンガー」Music Video

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EXTRA。以下、個人的な感想メモ。
⑪ピンキーフック/麻倉もも
発売日:2021/08/18
作詞:渡辺翔
作曲:渡辺翔
編曲:倉内達矢
(TVアニメ「カノジョも彼女」エンディング)

ピンキーフックも相当に良かった。レトロで懐かしいメロディ、気分の上がるシンセのリズム。そして単純な台詞、繰り返しの多い台詞。ループするとかなりハマってしまう。MVもめちゃ可愛くて、4種類の色々なもちょの姿が楽しめる。オススメ。SWEETもちょ、SHYもちょ、MYSTERIOUSもちょ、VIVIDもちょ。あなたはどんなもちょが好き?ってだけで、数時間はオタクトークできるし、コスパが良い。麻倉ももの魅力を引き出した手腕。流石の渡辺翔という感じである。
麻倉もも 『ピンキーフック』Music Video(YouTube EDIT ver.)


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