恋が嫌い。

 ポケモンのサイトウに彼氏がいるとかいないとかでオタクがキレてた。あの子が笑いかけた相手とあの子との関係が恋愛というラベルに収束していくことが嫌い。そこでは恋人>友達の立式がされていて嫌い。何らかの関係同士が相対的に価値判断されることが嫌い。AさんとBさんの繋がりと、AさんのCさんの間に相対的な差があると僕には思えない。過ごした時間が担保する愛があるなら、互いに何も知らないから成立する愛もある。長い時間を過ごした親友に話せなかったことを、初対面のカウンセラーに話せてしまったりする。そういう愛がこの世界にはある。
 でも、この世界の誰かが、ある形の決まった、一つしか無い関係の椅子に座りたいと願う欲望それ自体を否定することもやっぱり出来なくて。サイトウと誰かが仲良くしている様子を見て燃えた誰かは、その一つしかない椅子に座りたかったのだと思うし。或いは、その椅子がずっと空いたままでいてほしかったのかも。関係に相対的な価値が原則存在しないということと、自分自身が相手と関係Xになりたいという欲望の存在は両立してしまう。だから僕は恋が嫌い。あたかも、関係と関係の間に相対的価値があるような気にさせられる恋が嫌い。
 僕は恋が嫌い。
 僕をこんな気持ちにさせる恋が嫌い。
 君の恋があたかも価値ないものに見えてしまう恋が嫌い。
 今日から恋を禁止にします。恋不拡散条約です。
 現在世界の恋保有国はアメリカ、ソ連、中国、フランス、イギリス、インドの6カ国。
 そして非公開だが南アフリカとイスラエルの2カ国。
 合わせて8カ国。
 君は9番目の恋保有国だ。
 だから君の名前は9番。
 恋で世界を脅迫できるとしたら、何を要求しますか。
 野球中継ですか。ローリング・ストーンズですか。
 それとも、君の恋は、今ここで第三次世界大戦の引き金になってしまうのでしょうか。
 僕はそれでもいいと思います。出来るものなら。

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