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矛盾だらけの自分を信じていい。

クサい・マズイと評判の、刑務所のご飯の方が美味しいのでは?と思った。中学3年生の頃の給食だ。

同じ形の服を着て、同じ作業をして。中学3年生のある日、私は何も悪さをすることなく受刑者になった。それまでそこは、ちゃんと私にとっても学校だったのだけれど。

いっそ本物の刑務所だったら、食事中に誰も口を開くことが出来ないのに。みんなが机を合わせ、給食を頬張りながら談笑する中、私ひとりの机だけが前を向き、私ひとりが背中を丸めて味気ないパンを牛乳で押し込む。そういう時期があった。

靴を隠されたことはないし、トイレに閉じ込められたことも、水をかけられたこともない。
少しの間、クラスの中で空気になっただけ。
1度も標的にならない人はほとんどいない、そういうクラスだったから、諦めの気持ちが強かった。

なぜ始まったかわからないケースが多い中、私の場合は「あ、明日から私は1人だ」とわかる出来事があった。
揉めるのは避けるべき相手に、食ってかかったのだ。ちょうど掃除の時間だった。

予鈴を聞き教室に戻ると、当時最も仲の良かった女の子に駆け寄って、短く告げた。
「私といても良いことないよ。Mと揉めた。」
1人になることは、とても怖かった。カッコつけてる場合じゃないのだけれど、私の陳腐なプライドがそうさせた。
「それでも、きーみと一緒にいる。」
そう言ってもらえると、少し期待していたんだけれど、翌日から私は受刑の日々を送ることになる。部活がテスト休みだったので、1学期の期末テストの頃だったと思う。

さて、その年の夏休み最終日はずっと1日中ベッドに横になっていた。
夕飯はまったく味を感じず、砂を噛むよう、という表現がぴったりだった。
ストレス過多な夜は、その後もたくさんあったけれど、味がわからないほどの食事は、後にも先にも、それ一度きりだ。

2学期からは、汚く生きたと、自分でも思う。クラスの歓声の中核にいる者を恨み、許すまじと思った。
同じく標的になっていた子と、打算で一緒に過ごしたし、当時愛読していた投稿雑誌(今のSNSに近い感覚)にのめり込み、そこで学校以外にも自分は居場所を持っていると思い込んだ。自分の番が終わったら、2度と自分が標的にならぬよう、卑怯と知りつつ沈黙した。

そうやってなんとか、あの日々をやり過ごし、卒業し、私は今ここにいる。

成人式からしばらく経った夏の日、私は当時の元凶であるMに呼び出された。
彼女はキリスト教に感化され、当時のことを懺悔していると語った。

その時たぶん、彼女は謝りたかったのだ。
私はその意図が汲めなかった。

「懺悔すべき相手は神様なの?神様だけに許されたら満足?自分だけ救われるんだ?」
二十歳の私は、そう言い捨てて、彼女の分のコーヒー代も支払い、さっさと店を出た。
音をたてて閉まるドアの隙間に、Mが顔色悪く座っていたのを見た。

チクリ、とした。そして気づいてしまった。
私はこの子を許しがたく思っていた以上に、あの笑い声の中に入りたかったのだと。

思えば、矛盾だらけだ。
Mを憎く思いながら、その笑い声の中に入りたかった。
本当は「1人にしないで」と叫びたかった。
自分から標的が外れたとき、私だけは味方でいる選択もあったはず。

私に1番ひどい嘘をついたのは他でもない、私だった。

矛盾というのは、くるしい。
自分を自分で騙すというのは、さびしい。
自分のことを1番間近でみてきたのは自分だ。その自分に嘘をつかれて平気なはずがない。

頭のトロい私は、当時の自分の矛盾を大人になるまで認められなかったが、聡い10代諸君の中には、その矛盾に苦しめられている人もいるのではないか?
矛盾していても良い、生き汚くても良い。
あなたが出した答えなら良い。
自分を嫌いにならないで欲しい。

あの時、汚くてもそう振舞わなければ、生きてはいけなかった。

あなたは知っているはず。
あなたがどんなに闘っているか。
あなただけは余さず見てきたはず。
あなたがどれだけ立ち向かおうとしたか。
あなた以上に深く、あなたを許せる人はない。

行きたいのに行けない。
仲良くしたいのに会いたくない。
言うべきだけど言えない。
助けて欲しいのに心配かけたくない。

偉そうなことを言う大人もそんな風に育ってきたし、なんなら大人になってからもそんなのばっかり。
だからそういう時は、あなたの心が向く方向を見極めて、行動したら良い。

あなたが出した答えが、どんなに大きな矛盾を孕んでいても、決して恥じることも恐れることもない。
案外みんな、矛盾を抱えている。


そうして矛盾だらけで大人になった1人の女が、心配事はありつつも、ここに案外幸せに暮らしてる。


あなたに、夜明け(の写真)をプレゼントだ。



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きぃみ

1988年長野県の山間集落の生まれ。20代で摂食障害を経験しました。思い立ったが吉日的な行動をとることが稀にあります。手帳ずき。遊びをせんとや生まれけむ。そんな三十路女のよもやま話です。
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