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官僚→ベンチャー→フリーランス。レールから外れた東大女子のひとりごと【2.退職編】

筆者のちょっと変わったキャリアについて語るシリーズ、第2弾。はたからみると順風満帆だったわたしの人生が、予想外の方向に向かっていく過程を綴っていきます。前回は官僚になってからの心境の変化についてお話ししました。

今回は転職の大きなきっかけとなった研修期間から実際に退職を決めるまでの葛藤や学んだこと、考えたことについて。

■研修期間:自由な時間を過ごし転職願望が強まる

現状への不満と将来への不安が高まりつつあるなか迎えた同期合同研修。そこで得たつかの間の休息が、本格的に転職を考えるきっかけをもたらします。

・ゆっくりと考える時間ができる
研修期間が転職のきっかけとなった大きな理由は、とにかく時間があったこと。残業がなく定時きっかりにあがれる研修期間は、夜がとにかく長いのです。日々の生活に疲れていたこともあり、「せっかくだしゆっくりしたいな〜」と思っていたわたしは、ほとんど毎日寮の部屋にこもっていました。同期と飲んだり遊びに行ったりもしましたが、週1・2回程度だったと思います。

それだけ時間があると、自然な流れでいろいろなことを考えます。時間があると余計なことやら何やら考えてしまうのは経験済みの方も多いのではないでしょうか。まさにその状態です。

キャリアのこと、将来のこと、日々の暮らしのこと……。このままの人生を続けるしかないかのように思ってきたけど、本当にそうなのかな。それでいいのかな。正直なところ自分がいきいきしてる未来は見えないな。ワクワクもしないな……。

立ち止まって考えてみる良いきっかけになりました。

・やりたかったことに挑戦する機会を得る
実は研修前から、夜にゆっくり過ごせる機会にやってみようと思っていたことがありました。それは文章の執筆です。

小さい頃から文章の読み書きが好きだったわたしは、作家になりたいと考えていた時期もありました。大きくなるにつれて現実的な夢ではないなと思うようになりましたが、「仕事をしながらでも退職後でも、時間があるときに文章を書いて作品を残せたらいいな」という微かな望みは潰えることなく、心の奥底にしっかりと根を張っていました。

しかし社会に出てみると、ちまちまと好きな文章を書き続けられるような余裕は時間的にも精神的にもありませんでした。そもそもわたしは文章を書ければそれだけでいいというわけではありません。本を読めるだけ読みたいし旅行もしたい。友達と話したいし、美術館にも行きたい。興味のあることについてちゃんと勉強したい。やりたいことがたくさんあるのです。たとえ土日に時間を作れたとしてもそれだけでは限界があるように思え、「このままだとやりたいことを先延ばしにしたまま年をとってしまう」と少し焦りを感じていました。そんなわたしにとって、研修の自由時間は好きなことに打ち込める絶好の機会でした。

・自分の好きなことを再確認する
前述したとおり研修期間は部屋にこもってあれやこれやと考えごとをしていましたが、同時にちょっとしたエッセイや小噺を書き記しました。文章を書く作業は地味かつ地道で、ものすごく楽しいかと言われるとそんなことはありません。それでもやっぱり、好きだったのです(今もそこそこ好きです)。将来的には文章に携わる方面に進みたいという思いを強くしました。官僚を続ける限り、その目標を達成できるのはかなり先になることが明らかだったので、転職願望も確固たるものに変わっていきます。

■退職直前:体調不良とモチベーションの低下に苦しむ

研修の終わり頃に風邪をこじらせたわたしは、体調不良を引きずったまま通常業務に戻ります。もともと心のなかに秘めていた現状を打破したいという気持ちと体調不良があいまって、退職への流れが一気に加速していきました。

・研修末期の風邪が悪化する
研修が終わる数日前に、わたしは喉風邪をこじらせました。これは長引くやつだな……という程度には覚悟していたものの、思いのほか悪化の一途をたどります。仕事に戻る頃には声帯までやられてしまい、声が完全に出なくなってしまいました。かすれることすらなく、本当に出ないのです。どれだけ声を出そうとしても声帯が震えません。それから数週間は筆談とメールのみで仕事をすることになります。

・仕事をセーブせざるを得なくなる
そんな状態では、もちろんのことながらできる業務が限られます。電話がとれないし、打ち合わせもまともにできません。社内チャットが広く普及している職場でもありませんし、声が出ないのは業務をこなすうえで致命的な問題でした。そのあいだは仕事を少しセーブし、早めに帰ることが多くなります。研修期間に引き続き、夜の時間に少し余裕ができたのです。

・モチベーションの低下が続く
そうなると、研修中に抱いた思いはますます強まるばかり。体の不調が心に影響したこともあり、現状に対するマイナスな感情と新しい道に進みたいという願望が大きくなっていきます。ほかにやりたいことがちゃんとあるのに、やりたくないことに時間を使っている。そんなふうに思いながら仕事をしなければならないところもなかなかにストレスフルでした。さらにはセーブした働き方に慣れてしまったことも、今後への不安を掻き立てました。

・勢いに任せて「辞めます」と言う
心身ともに不安定な状態は1ヶ月ちょっと続き、さすがにこれ以上踏ん張っても仕方ないな、自分が苦しくなるだけだな、と思うようになりました。勢い余ったわたしは本格的な転職活動を始めるまえに上司に退職の意向を伝えます。今思えば当時のわたしはただの向こう見ずなバカでしかなく、このようなイレギュラーな退職交渉は人にはまったくおすすめできませんが、置かれていた環境と自分の性格上、やむを得ない判断だったかなと思っています。

体調を完全に戻してもう少し働いてみてから考えてみたら?とか、いったん休職して落ち着いて考えては?とすすめてくださる方もいました。しかしさらに考えたところで気持ちが変わるとも思えず、【⒈官僚編】に書いた不安・不満も拭えそうにはありませんでした。そして何より、長くいても自分の進みたい方向に近づけるわけではない、むしろ遠のく可能性のほうが高い、という事実がわたしを足早にさせました。ついでにいえば、「休職してもいいけど結局辞めるのはもってのほか。休職するなら必ず戻ってくること」「辞めることを伝えてから公然と転職活動を進めるのはダメ」と言ってくる上司がいたことも、できるだけ早く辞めようという決断にいたった原因のひとつです。

■退職後:4ヶ月の無職期間に突入する

結局次の職場を決めるまえに退職したわたしは、いわゆる「ニート」と同じ状態になります。なけなしの貯金を切り崩しながら、自宅やカフェで文章を書いたり本を読んだりして過ごしました。転職活動は焦らずゆったりしたペースで進めました。

その期間で得たいちばんの学びは、「生きるって本当に大変なんだな」ということ。それまでが恵まれすぎていたのかもしれませんが、至極シンプルな事実をようやく実感したのでした。わたしは自由の楽しさと厳しさ、また転職(とくに公務員の転職)の難しさを身をもって悟ることとなります。

長文をお読みいただきありがとうございました。
細切れで失礼しますが、続きは次回の記事で。


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