霞が関→スタートアップ、真逆の組織に行ってわかった両者のメリット・デメリット【国で働くメリット編】

数年前に官僚を辞め、創業2〜3年のスタートアップベンチャーに転職しました。国という大きくて古い組織と、新しくて小さい組織。正反対の組織で実際に働いてみてわかったのは、「どちらにもメリット・デメリットはあるから、自分のなかで優先順位を決めて合ったところに行くのがいちばん」という至極あたりまえのこと。

でも組織のメリット・デメリットには、実際に働いてみないとなかなか実感できないものも多いんですよね。だから職選びは本当に難しい。

これから数記事に渡って、わたしが感じた両者のメリット・デメリットを整理していきます(たいていはメリットの裏返しがデメリットです)。

今回は大きくて古い組織、国で働くメリットについて。スタートアップで働いた経験も踏まえて述べていきます。大企業と共通する部分もあるため、霞が関には興味をお持ちでない方にとっても多少は参考になるかもしれません。就職・転職で悩んでいるどなたかに届いたら嬉しいです。

*これから書く内容は私の個人的な体験に基づくものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。

●大きな(?)仕事を扱う

国では制度や法律など、企業や個人に良かれ悪かれ大きな影響をあたえうるものを取り扱います。意思決定に中心的に携われるのは管理職や政治家ですが、調整でも作業でも、その一端を担うことに魅力を感じられる人なら若いうちからやりがいを感じられるかもしれません。どういう関わり方であれ、他の組織ではできない仕事です。

担当する仕事には、新聞で一面になるような大きな改正もあれば、昔からずっとある制度や法律の維持管理・微修正、他の制度・法律が変わったことで担当部署に跳ねてくる改正や変更もあります。話題性があるから重要だとか、地味だから優先度が低いなんてことはまったくもってありませんが、担当の制度や法律がニュースになっていたり好意的に受け止められていたりすると、なんとなく嬉しい気持ちになることはありました。

●良くも悪くもきちっとしている

国の組織は仕事効率が悪いというのはよく言われることですよね。でも良い解釈をすれば、「ちゃんとしている」と言える部分もあるのかもしれません。組織全体で共通する業務については分厚いマニュアルがあり、資料の作り方はかなり細かく決まっています。使用する文言は慎重に検討しますし、ミスが許されないので何重にもチェックします。手続きや締め切りがしっかり決まっているため、スケジュールも立てやすいといえば立てやすい(突発案件がたくさんあり、そう簡単に予定通りにはいきませんが…)。

転職先にはこうした縛りがなく楽でしたが、逆に決まっていなさすぎて、人に依存してしまったり行き当たりばったりになったりしがちでした。几帳面な性格の人には、伝統のある組織は意外と居心地が良いかも……??

また国の各部署や係の役割は規則で定められています。人事異動や組織改編がない限りは、短いスパンで担当分野が増えたり減ったり、チームのメンバーや人数がガラッと変更になったりすることはめったにありません。転職先では業務・組織は変わっていくのが当たり前だったので、この点は大きな違いでした。

●優秀な人がいっぱいいる

官僚に限ったことではありませんが、一定数、めちゃくちゃ頭の回転が早くて仕事ができる人や努力の天才、加えて人柄も良い聖人のような人がいます。同僚には尊敬できる人がたくさんいました(もちろん尊敬できない人もいます)。

ちなみにわたしは「キャラ採用」「伸び代採用」だと人事担当者から言われていた人間で、カテゴライズが難しい。そういう変な人もいます。

●交渉力や論理的思考力が高まる(?)

省庁では日常的に他部署や他省庁と交渉します。基本的には、自分の部署の意見を通すために闘うわけです。意見が通るようにさまざまな根拠を集め、自分たちの正当性を主張したり相手の弱点をついたりするので、否応なしに交渉術が身につきます。以前先輩が「国で働いたおかげでできるようになったのは交渉だけだ」と言っているのを聞いて、なるほどなあと思いました。

また決裁のルートが長いため、何か一つの提案を通すときには何人もの上司・幹部に内容を詰められまくります。そのため必然的に力を入れて根拠を集めたり論理を練ったりすることになり、相手を説得する力が身につきます。どの組織にいても多かれ少なかれ意見や提案を相手にわかってもらうためには努力しなければならないので、決して国だけというわけではありませんが、「詰められる」という前提があるがゆえに最初からしっかり「詰める」癖がつく仕事だと感じました。

相手も自分も納得できるように案を練り、実際に納得してもらって仕事が進んだとき・完了したときにはもちろん嬉しく、達成感もありました。この瞬間に喜びを感じている職員はそこそこいるのではないかと推測します。実は私は、こうした達成感や喜びを「国の仕事」だからこそのやりがいだと勘違いしていた時期がありました。

●給与や地位が安定している

年功序列で給与や地位は安定しています。ずっと働く前提なら若いうちから生涯年収を大まかに計算できてしまうので、人生の設計はしやすい職業です。実力が伴わなくても一定のポジションまでは同期と一緒に上がっていきます。その分、仕事ができても給料がドーンと増えたり昇格したりすることは基本的にありません。その点は物足りない人もいるでしょう。

●休暇制度や福利厚生が充実している

多くの方がイメージする通り、休暇などの各種制度や福利厚生は大企業並みに、もしくは大企業以上に充実しています。働いていた当時は私自身も助けられました。正直なところ、官僚を辞めて唯一「あのときのほうが良かったなあ」と感じたポイントです。たとえば以下の点が挙げられます。

・就職から1年後以降は有給が毎年20日間付与される。
・結婚休暇などの特別休暇が最大5日、最大7日など手厚いものが多い。
・時間休を取って遅く出勤したり早く帰ったりできる。
・ちゃんとボーナスがある(あたりまえに出るものではないことを転職活動を始めてようやく知ったので入れておきます)。
・人間ドックが通常の半額以下で受けられる(最近受けて、国家公務員時代との差に愕然としました笑)。
・福利厚生で各種割引がある(映画とか宿泊施設とか)。

もちろん各種の制度を使わない人・忙しすぎて使えない人もたくさんいますが、あるのとないのとでは気持ちの面で大きな違いが生まれます。

こういうのって、意外と当たり前じゃないんですよね。


たとえば有給についていえば、労基法の最低基準に合わせている企業なら、半年後に10日付与されてその1年後に11日、さらに1年後に12日と増えていき、6年半勤めてやっと20日になります。休暇の種類についていえば、日休・午前休・午後休しかなく、時休が取れない会社もたくさんあります。

政府がプレミアムフライデーなるものを設け、月末の金曜日に15時に退勤して出かけることを推奨していましたが、忙しい・忙しくないに関係なく、そもそも15時に会社を出ることが制度上できない人だっている。お恥ずかしい話ですが、転職活動を始めてようやく気がつきました。

●国の行政がどんなふうに運営されているかがわかる

「大きくて古い組織」という話からはそれますが、国で働けば、国がどんなふうに運営されているのか、法律や制度はどんなふうに制定されていくのか、国会はどんなふうに進められているのか、実際の動きがわかります。

仕事によっては政治家と役人の関係性、各政治家の人柄や考え方、国と地方の関係性など、組織の外からは見えづらい部分も見えます。政治に興味がある人にとっては面白く感じるかもしれません。こうした知識がニュースを見る上で役に立つことは今でもたまにあります。

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このように、国の組織にはある意味メリットと捉えられるポイントがいくつもあります。今回は挙げませんでしたが、「〇〇省で働いています」と言えること自体に誇りを感じている人も一部にはいるだろうし、社会的信用の高さなど、メリットは他にもいくつか挙げられそうです。キリがないのでここまでにします。

次回は国の組織で働くデメリットについてお話しします。働いていた当時感じていたことだけでなく、組織を変えてみてからますます実感したことや顕在化したことも含めて紹介できたらいいなと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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奥村 まほ

文筆業|官僚→ベンチャー企業でWebメディア運営→フリーランス|生き方・キャリア・家族に関するエッセイ、短歌などを書いています。富山県出身の東京住まい。 HP:https://buntou.jp Twitter:https://twitter.com/09rahomaho

ちょっと変わったキャリアのはなし

官僚→ベンチャー企業というちょっと変わった経歴をもち、現在はフリーランスで文章指導や執筆活動をおこなっています。キャリアに関して興味をもっていただけることが多いので、体験談をまとめることにしました。
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