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現場のアルバイトから主催者側まで経験。「ap bank fes」「日比谷音楽祭」貪欲にいいフェスをつくりつづけるために。

今回から、コピーライターの阿部広太郎さんがモデレーターとして、各業界の第一線で働くゲスト講師からお話を伺っていきます。

BUKATSUDOのホールに広がる緊張感と高揚感。第2回目「フェスの企画」、イベントクリエイターの森正志さんをお招きしてスタートです。

好きなフェスを仕事にしたいという思いから、現場のアルバイトからはじまり、主催者側まで登りつめた森正志さん。

2012年に「THE FOREST」を設立し、今では、大小様々なフェスの企画から、Superflyのアリーナツアーの演出、My Little Loversの舞台監督/ステージ装飾などを、音楽業界で幅広くご活躍されています。

輝かしい経歴の裏には、貪欲に「いいフェスをつくろう」と挑みつづける姿がありました。

叩き上げで掴んだ現場の感覚。

大学時代は、アルバイトとして毎年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「AIR JAM」などでフェスやライヴ会場の設営や、運営などを経験し、大学生ながらアルバイトのチーフを担当したこともある森さん。

貯めたお金で、「FUJI ROCK FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」などに行き、フェス三昧の生活を送っていたそうです。

卒業後は、コンサルティング会社のイベント部署に就職するも、フェスへの思いが忘れられず、ロッキング・オンに入社。コンサル会社のイベントの仕事をしながら培ったロジカルに課題を整理していく判断力が、プロジェクトをぶらさずに仕事を進めていくことに繋がってたそうです。

その後、小林武史さん・櫻井和寿さんが主催する「ap bank fes」を手伝うことになり、その後、そのまま「OORONG-SHA」に入社。たとえ大御所の方であっても、徹底的に思ったことを意見することで、結果的に小林さんとの強い信頼を築いていたエピソードが印象的でした。

そして、森さんは独立。

いくつものフェスをリアルを見てきた森さんだからこそ、様々なフェスから声がかかり、どの領域の仕事もできるため、今では「あれも、これも、やりますし、できます。どこをやるといいですか?」と担当領域を相手に委ねることもあるそうです。

直近では、音楽プロデューサー亀田誠治さんからの依頼で、制作委員会の責任者として6月1・2日に行われた日比谷音楽祭(トップミュージシャンから若手ミュージシャンまでで楽しめる無料のフェス。ライブだけでなくトークイベントも含め、楽器に触れるきっかけをちりばめられている)を実現しました。

様々な立場でのフェス経験がものをいう。

アルバイトからフェスの責任者まで、「フェスをつくる側」を体験している一方で、アーティストのマネジメント会社のライヴ制作として「フェスに出る側」としての経験もあることから、両者の意見を汲み取りながらフェスを企画しているそうです。

例えば、春先に全国ツアーをやっているアーティストは出演発表タイミングとツアーのチケット販売期間がかぶればフェスに誘っても出たくない。口説き方や出方など、状況を踏まえ相手によって変え、フェスに出る必要性を考えアーティスト側の立場に立つブッキングをする。

広い視野からものごとを考え「アーティスト側から出たい!と思われる、愛されるフェス」の設計を繰り返し、繰り返し考えているそうです。

「カーブ、フォークとか言ってないで、ただ来た球をよく見て打て。」染みついた小林武史イズム。

「いいものをつくるためにルールはない。フェスの現場では、会場毎に条件や環境も全然違うし、天気も変わる。ときには想定外の出来事も起こりうる。状況に合わせて、柔軟に対応しながら良いものを作っていかなくてはいけない」

OORONG-SHA時代に、小林武史さんの元で、常識にとらわれず、常にフェスをよいものにするための目を鍛えられたそうです。

ただただ、いいものにするために。森さんの結婚式のタイムテーブルを小林武史さんが当日に変更してしまうというエピソードも。

また、フェス全体の制作を行う際に、自らのやりたいと思うイメージを細部にまで出していくことを大切に考えていて、最初はこだわりを反映できるステージが小さかった森さんですが、段々とその規模が大きくなっていったそうです。

「これが自分の仕事と言われていいの?」と自分を鼓舞し、一回つくりあげたものさえも壊し、また1から新しいものを作ることを繰り返し、貪欲によりいいものによりいいものにという気持ちを持って、日々企画を続けています。

その上で、日頃の企画から「人との違い」を意識している森さん。中規模のライブや、フェスとは関係ないイベントにも足を運び、インプットの機会を持っているそうです。

力になりたいと思わせる

後半は、「あなたの地元のためのフェスを企画してください」という事前課題の講評に。当然ながら、フェスでは多くの人が絡んできます。

「主催者のやりたいことがわかると、携わるスタッフも仕事がしやすい。」
「細かいところまでちゃんと説明できることが大事」
「5年後、10年後までのイメージもできているか」

企画書をもとに、森さんのこれまでの経験から培った話をしてくださいます。

アルバイトにはアルバイトの人に向けた、責任者側には責任者側に向けた言葉がある。それぞれの立場の考えてコミュニケーションすることを大事にすること。自分のわからない領域を知ってる人と仕事をする機会が多いが、その時、わからないなりに、わかろうとする姿勢が大事。

フェスをつくることに対してまっすぐな姿勢が、関わる人たちをも巻き込む力になるのだなと感じました。

最後の最後に、森さんご自身が双子で、人より何倍も兄弟と比べられることが多く、生まれた時からの癖で、人との違いを意識していたと話してくださいました。

なぜ、森さんが音楽業界で唯一無二になっているのか?その秘密がわかった気がしました。

森さんのフェスへの熱い思いに講義冒頭から圧倒されっぱなし、音楽業界への愛が伝わるノンストップの3時間でした。森さんありがとうございました。

キャリアハックでの記事はこちら。

次回は山川咲さんによる「結婚の企画」です。

ライター・サムネイルデザイン:小田周介
写真:加藤潤

▼「企画メシ2019」の初回「言葉の企画」のレポートはこちら↓

▼糸井重里さんをお招きして開催した「企画メシ」の特別イベントのレポートはこちら↓

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