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「ピンチ」「逆境」「時代の変化」にこそ企画の根源がある。NONA REEVES 西寺郷太の目指す企画とは?

「企画でメシを食っていく2019」、今回のテーマは「音楽の企画」

ゲスト講師は、バンドNONA REEVESのボーカルを務めるかたわら作詞・作曲家としても活躍。ロングセラー『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』の著者でもある西寺郷太さんをお迎えしました。

9歳にして想像で中森明菜の作詞作曲をする

9歳の時に頭の中で曲が思いつくようになったという西寺さん。

西寺さんが小学4年生だった頃、クラスでは、人気の曲をはやく歌えるようになった人が注目を集めたそう。アイドルの新曲がテレビで流れるたびに一生懸命覚えた西寺さんは先陣を切って歌っていましたが、次第に真似をするクラスメイトも増えていきます。

そんな時、西寺さんは中森明菜さんの新曲のタイトルが「北ウイング」だということを知ります。さらなる人気者になりたい一心で考えた結果、自然と頭の中で曲が思いついたというから驚き。

タイトルから自分で思いついてしまった西寺さんオリジナルの「北ウイング」を中森明菜さんの新曲として歌ったところクラスで流行。同級生から尊敬の眼差しで見られたといいます。もちろん今回ばかりは追随してきていたクラスメイトも真似できません。そして、しばらくするといよいよテレビ番組「ザ・ベストテン」で、本物の「北ウイング」が発表される日が。

・・・もちろん全く別の曲が流れ、翌日クラスメイトからは「郷太、全然違う曲歌いやがって、お前嘘つきやないかい!」と怒られたそうですが、曲を創作する色濃い思い出がそこにはあるそうです。ある種、「無いものを捏造する」「勝手に鳴ってしまう」ことも、クリエイションだと、今になったら思う、と。それが思い返せば西寺さんにとって最初の「作曲」だったそう。

音楽とは企画そのもの

ふだん何気なく聞いているけれど心に残っているもの、人に届いているものにはそれなりの仕掛けがあると西寺さんは言います。

また「企画」を辞書で引くと…そこには、「目新しく好ましい物事の内容を具体的に考え、その実現に向けて手はずを整える意」と書いてあります。

「企画ってどこか楽しいものであって、なおかつ世の中をより良くしようというものが企画なんですよ。そう考えた時に音楽はやっぱり関係がある」

西寺さんがつくってくださったレジュメとともに講義は進行します。

また音楽には無限に企画の可能性がある、とも。

DA PUMPのカバー「U.S.A.」の流行を例に挙げ、オリジナルなのか、カバーにするかにも企画がある。ビジュアルも舞台演出も企画。たとえばお店を出すにしても、BGMをジャズにするのか、アイドルソングにするのかでも店の雰囲気は変わります。このように音楽は企画そのものなのです。

「ピンチ」「逆境」「時代の変化」に企画の根源がある

西寺さんがマイケルとの運命的な出会いをするのは小学4年生の時。「Billie Jean」でした。

日本人は沢山の音が重なり合っている音楽に慣れています。だからこそシンプルで心を掴んで離さないマイケルのサウンドに感動したそうです。

「ジャクソン5」で世に出て、チャイルドスターとなったマイケルは、体の成長にともなう声変わりもあり逆境に立たされます。そして、黒人がテレビに出演することが珍しい時代、当時大流行していたMTVにミュージック・ビデオを流すためには、誰もが見たがる圧倒的な企画で壁を壊すしかありませんでした。

そこで誕生したのが、かの有名な「Thriller」です。

Thriller誕生にも黒人チャイルドスターとしての境遇が影響していると言います。マイケルが映画館に行くと大騒動になってしまうため、映画屋さんを自宅に呼び、たくさんの映画を鑑賞していたそうです。

だからこそ、自分のタイミングでフィルムを巻き戻してミュージカルなどのダンスを何度も観ることが出来たのです。そういった背景も、Thrillerの映画風で大がかりなトライにつながっているのではないかと西寺さんは話してくださいます。

またジャクソン・ファミリーのプロデューサー的役割も果たした父親のジョセフが最も好きなマイケルの曲も「Thriller」なのだとか。

好きな理由を聞かれてマニアックな曲を選ばず、「だってみんなも好きだろ?」という答えが流石だと思った、ということです。

常に様々な可能性の中から優れた音楽表現は企画されている

西寺郷太さんからの課題は

「10日間でマイケル・ジャクソンの好きな1曲を見つけ、その理由をA4・1枚にまとめてください。」

というものでした。

(一人一人への丁寧なフィードバックには本当に感動しました。西寺さんの熱量に触れ、企画生もより前のめりな姿勢になります)

またこの講座でなぜマイケル・ジャクソンを選んだのかについては…

1.音楽の歴史上、最も多種多様な企画にトライし成功させた人物。
2.メシという観点でも、ギネスブック記録で史上最も成功したエンターテイナー。

だからだそうです。

(確かにマイケルは千代田区と同じくらいの大きさのネバーランドを持っていました!メシを食べるどころのレベルじゃない!)

そして今回最も評価が高かったのは音楽ライターの坂井彩花さん。

坂井さんが選んだ「All The Things You Are」について5パターンの鑑賞を挟み西寺さんの解説が入ります。(ぜひ皆さんもそれぞれの違いを味わってみてください!)

まずはオリジナルのエラ・フィッツジェラルドver

多くの人から愛され数々のアーティストにカバーされた本曲ですが、元々は失敗に終わったミュージカルの中の一曲だったというから驚きです。ミュージカル自体は、忘れ去られたのですが、曲自体は永遠のスタンダードになりました。常に様々な可能性、意外性の中から優れた音楽表現は企画されているのです。

続いてジョー・パスver

世界初のアイドルとも言えるフランク・シナトラver。

ピアノのビル・エバンスverを鑑賞しました。

そして最後にマイケル・ジャクソンverの鑑賞。

(同じ曲でもこんなに印象が違うと衝撃!)

「この曲を1つをきっかけにして、マイケルを好きじゃなくても、たとえばシナトラが好きになれば収穫になる。マイケル・ジャクソンという人の中にこういう世界が埋蔵されていることに気がついてほしい。すべての音楽は『企画』、アイディアから生まれている、ということがわかるはず」と西寺さん。

新しい曲を歌うだけではなく、ジャズナンバーをカバーしたら新鮮なのではないかなど…出来上がった曲にはちゃんと意図があり、選び抜かれてそうなっているのです。

相手と私の中間を見つける

今回の課題講評で西寺さんは、あくまでも「あなた自身」を知りたいんだということを度々仰っていました。

相手と私の中間を見つけることが企画の楽しいところなのだと。

ジャニーズに依頼されたからといってジャニーズに寄せた曲を作っても自分らしさがないため相手は満足しない。自分が依頼先に憧れ過ぎ、寄せ過ぎればこれまでと同じになってしまい。かといって全然遠いところでもダメで、上手いところ、自分と依頼先の中間を見つけることが大切だと言います。

「今回は、マイケルについて調べるという不条理な課題だと思ったかもしれない。でも予想外の課題が出てきたときに何故なのかと考えてほしい。企画メシにただ来るだけではもったいない。ライザップに来て、1人だけ腕立て伏せしないのと同じ。まずはトライしてほしい」

また

「自分の得意分野ばかりが企画の対象になるわけではない。苦手なものほど優しさが出る。向こうの言っていることを分かってあげる、その一歩踏み出した姿が見たいんだ。」

と愛ある叱咤激励の言葉を受けました。

厳しい評価をした企画生のことも気遣い、講義後の懇親会「アフター企画メシ」では講義中触れられなかった人に直接フィードバックをする西寺さんの姿が!

だんだんと西寺さんを囲む人が増える様子はまさにキャンプファイヤーさながらでした。

企画メシも半分を過ぎようとしているこのタイミングで、西寺さんに講師としてお越しいただいたことは企画生にとっても大きな刺激となりました。ありがとうございました!

今回の講義でも書いてくださった西寺さんのレジュメ。その全貌が記録された新著「伝わるノートマジック」(スモール出版)もぜひご覧ください。

キャリアハックでの記事はこちらからどうぞ。

ライター:市川怜美
サムネイルデザイン:小田周介
写真:加藤潤

※お知らせ※

8/31(土)17時〜下北沢の本屋B&Bにて「企画でメシを食っていく2019」特別報告会を行います。全12回中の9回を終えた学びをここでたっぷり語ります。ぜひお越しください…!


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