名探偵ボディビルディング【毎週ショートショート】
ボディビルディングの世界も、だいぶ変わった。
年齢や体重などを基にした今までの階級分けから、職業別に変更になったのだ。
その変更を機に、私はボディビル大会の賞レースを総なめにすることになった。
それもそのはず。私は「名探偵の部」で出場している。
探偵といえば、普段はソファーにどかっと座り、パイプを吹かしているものだ。
体を使うことも滅多にない。
頭でじっくり考えることはあっても、筋力は衰えるばかりだ。
その上、「名」探偵とくれば、その枠で挑戦する者は必然的に少なくなる。
私は元々筋肉が付きやすい体質だったのだろう。
少しのウエイトトレーニングで、みるみるうちに素晴らしいボディに仕上がったのだ。
ある日、私は思った。
これだけの賞金が手に入るのだから、ボディビル一本でも生活していけるはずだ、と。
「本当によろしいんですね?」
窓口の女性が尋ねる。
私の気持ちは揺るがない。
未練など、これっぽっちもない。
私は一度提出した探偵免許返納届を窓口に差し出したまま、「もちろん」と答えた。
書類が処理されている間、ふと嫌な予感がよぎった。
しまった!これでは、あのおいしい枠の名探偵の部で、次の大会に出場できないじゃないか!
★The thumbnail image by Sander Sammy on Unsplash.
今週も、たらはかに様企画の『毎週ショートショートnote』に参加させていただきました!
今回は、名探偵なのに、なんとも間抜けな決断をしてしまうというオチでした。
でも、しっかり者に見えても、こんなうっかりミスをしてしまう人の方が、人間味があって、かえって愛されるのかも、なんて思いました。
筋肉と言えば、高校2年生の息子くんは、急に筋トレに目覚め、毎日せっせと励んでいます。
どうやら、きつい時でも、YouTubeの中で、なかやまきんに君が励ましてくれるのだとか。
勝手にパーソナルトレーナー化されてます(笑)
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