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旅するかばん屋 エゾシカレザーについて

2014年初夏、エゾシカの革を使って鞄を作り始めてまだ日が浅い頃、北海道の旭川への旅

2016年より、いまも旭川で害獣として駆除対象となっているエゾシカの革を鞄の素材として使用させていただくことが決まり、先日、農家であり、猟師でもある野良処てくてくの浅野さまが、聞き鞄の工房にも足を運んでくださった

当時アメブロにて公開していた記事をまとめる

エゾシカのエコバッグに使っているエゾシカの革

数が増え、森を食べつくす勢いのエゾシカを、ただ殺して捨ててしまうのではなく、食肉や皮革として利用しようとする活動が広がっている

木工家具で有名な旭川

そんな旭川の5月は、田植えの季節でもある

若いアイガモを田んぼに放し、農薬を使わずに米を育てるアイガモ農法

稲と共に成長したアイガモは、秋になると田んぼを出て、最後は鴨肉として一生を終える

この農法で米を育てるには、最後まで無駄のないよう、綿密な計画とを欠かさないことだけでなく、自分の生活をかけて長期間関わっていくという、覚悟が必要なのだ

5月から10月、植物を育てる農家の方々にとっては、育成から収穫の繁忙期に、エゾシカ対策の季節も始まる

田んぼや畑の近くには罠が設置され、地元の猟友会の方々には、銃を使った猟も認められている

お話を聞かせてくださった、農家でもあり、猟友会のメンバーでもある浅野さん

ご自分の田んぼの周りだけでなく、地元の農家さんの田んぼや畑にも出向いて、エゾシカを捕らえ、罠にかかったシカに止めを刺すことも、畑に入ってきたシカを狙って撃つこともあるそう

その後、農家にとっては、害獣で、駆除の対象でもあるシカは、浅野さんの手で解体され、食肉・皮革として利用できるよう処理される

しかし浅野さんは言う

「最初は嫌悪する気持ちもあったが、結局は、生命を取るし、自分でシカを撃つようになってよかった」

「(シカが)増えすぎたら、このままじゃ農作物が危ないから(シカを)根絶やしにしろ、という意見もあるが、自分がシカを獲りだしてからは、根絶やしにするのは間違いじゃないかなと思うようになった」

「あくまでも、自分の身の回りで害のある範囲、大々的にやるぞとは思わない」

リスク、労力、経験をかけて、シカと人間が向かい合い、そのストーリがあって始めて手に入る、貴重なエゾシカの肉や革が手に入る

浅野さんは、この革をもたらしてくれたシカは、どういう環境で生きていたか、考えるそう

しかし、全てのひとが全面的に自然に向き合うのではなく、「ちょっとだけいいな、と思うひとに触れてほしい」とも

「自然は、自分が、どういう風に大事にするか、自分で自分をどう守るか決めて、行動で示さないといけない」

この日いただいた肉は、とても美味しかった


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