家離れ

 最近YouTubeのshort動画という短い動画でヒッチハイクをして日本一周とかしている生物をよく見かける。奴らは家が恋しくないのだろうか?私は恋しい、ヒッチハイクで乗せてもらって旅をすることはよくあるが一日で家に帰って来れるような距離でしかやっていなかった。唯一何泊かの野宿を挟みつつ行った熊野三山巡りは二日をすぎた辺りから猛烈に家に帰りたくなった。あの時は雨風の中でカッパと貰った傘一つで幹線道路まで歩いては誰かが止まってくれるまでの平均40分を立って過ごすを一日中繰り返していた。足は痛み体力は尽き、金がないので飯もろくに買えない。これがヒッチハイクのリアルである。体力が尽きると心も萎びていく、もしかしたら帰れないかもしれないといったマイナス思考が加速する、そんな中で明るく振舞って動画を撮り編集するだなんて鋼のメンタルを持っていなければ出来ないだろう。
 ヒッチハイクをしていると目に映るのは多くの場合知らぬ土地の景色で、知らぬ土地で知らぬ人に乗せてもらい知らぬ物を食べる、新しいもの過多で死にそうになる。いつも見ている部屋でいつも寝ている布団の中に入りいつもと変わらぬ日常を送るこの貴重さが嫌という程分かる。
 今日だって知らぬ人に乗せてもらい琵琶湖の一番下から琵琶湖の上の方、竹生島を目指してなんとかその近くまで乗せてもらうことができたが話しているだけで違う世界に生きている人達なのがよくよくわかった。パリピの人達、看護師のお姉さん、トラックのおじさん、理系のお姉さんに乗せてもらって話したけれど話す度に削られる、話をして気を遣うことの多いこと、乗せてもらっているという立場であるから失礼をしてはならないし馬鹿にするなんて言語道断、しかし相手を馬鹿にして話のネタにするバッドコミュニケーションが私には身についていて、それをしないように気をつける必要があった。バッドコミュニケーションにならぬようにしつつ話が途切れないようにするというのが私のメンタルをかなり削ってくれてもうボロボロである。家に帰りたい。

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