天使が住む森

2歳の娘が朝起きるなり、僕にぬいぐるみを手渡してきた。

「はい、おとうさんはこれね」

僕の手にはウサギさんの柔らかい感触。ついさっきまで娘と布団に入っていたほかほかのやつだ。
「ウサギさん?」と、僕はタオルで顔を拭きながら娘に聞いてみる。

「おとうさんはクマさんなの。だから、ウサギさんといっしょに遊んでね」

娘はそうきっぱり言うと、僕の脚にぎゅうっとくっついてきた。こうされると、僕はどうにも弱い。
「しかたないなあ」
僕は寝癖のついた娘の頭をなでてやり、クマの真似をした。とりあえず、「ガオー」と雄叫びを上げておく。

「おかあさんはリスちゃんだから、ゾウさんのお世話してね」

うちの奥さんは強引に押しつけられたゾウさんを抱っこしている。コンロの火を弱めながらクスクス笑ってる。娘はきゃあきゃあ言って、僕らの周りで踊り出した。くるくるくるくる。まるで背中に羽の生えた天使みたいに回って、いきなりぴょんと飛び跳ねた。

「みーんないっしょに、あそびぃーましょっ!」

僕はクマになり奥さんはリスちゃんで、そうやって台所から一人またひとりと人間が消えていく。いつしか、そこは森になっている。僕は人間であることをやめ、ただ黙って微笑んだ。壁の時計はきっちり進んでいくけれど、そんなこともうどうでもいい。

慌ただしさから遠く離れた静かな森で、僕は小さな天使とステップを踏む。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

ありがとうございます!
63

キムラ ケイ

エッセイ

日々の暮らしの中で見つけた、小さな物語を綴っています。

コメント5件

ウマハゲさん。奇跡ですか!このエッセイからそんなことまで感じてもらえるなんてうれしいです。娘は奇跡を起こす気なんて全然ないでしょうが、だからこそ自然と奇跡になるのかもしれませんね。コメントありがとうございます!
キムラさん。ご無沙汰しています。
お元気でしょうか?
うさぎさんの森の話が読みたくなって
また来てしまいました。
このお話を読むと
心がほっこりします。(*´꒳`*)♡
キムラさんのお心使いを今も忘れずに
引き継いで居ます。
寒くなって来たので、どうぞお体に気をつけて
ご家族皆さま、お元気にお過ごし下さい。
mariya.yuriさん、うれしいコメントをありがとうございます! 再読しに来てもらえるなんて、本当にうれしいです。
寒くなってきましたね。実はこちら、風邪をひいてしまいました…。2歳の娘(天使)がお友だちにうつされ、それが奥さん(リス)へ、そして僕(クマ)へと…。森の動物たち総崩れです。でも、熱でぐったりしてる天使の寝顔もやっぱりかわいくて、風邪もいいなあと親バカです。(笑)
mariya.yuriさんはお元気に過ごしてくださいね! コメントありがとうございます。
森のご家族様、総崩れとは…(涙)
我が家も私とテディは風邪です😅
人には風邪ひかないようにね…とか言いながら、自分はちゃっかり引いてしまいました(^◇^;)
またりすさんとクマさんとうさぎさんのお話をの続編をいつかまたお願いします💕😊
早くみんな良くなりますように♡(❊´︶`❊)。۞·:
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。