空をあげたい

秋晴れの下、二人の男の子がビニール袋を振り回していた。土手の草っ原で、まるで虫捕り網でも持ち出したみたいに二人は大きな透明ビニール袋を力いっぱい振り回している。僕は自転車を停め、思わずビニール袋の中をのぞき込んでしまった。

「おにいちゃん」
小さいほうの男の子が顔を上げた。
「とれた?」

「あかんねん。青くならへん」

その兄弟は袋の中をのぞき込み、顔を見合わせる。それから真剣な顔でビニール袋を振り始めた。じっと、空の高みを見つめて。どうやら、二人は青空を捕まえようとしているらしい。

「おにいちゃん。ねえったら」
小さな弟は兄の服をぐいぐい引っ張ると、靴をパタパタ鳴らして言った。
「まーくんにもやらせて!」

兄はビニール袋を振り回しながら言う。
「あのな、やさしく振らなあかんねんで」

二人は代わる代わるビニール袋を揺らしてる。両手を空に突き上げて奇跡を待っている。まるでプレゼントの蓋を開けるときみたいに、子どもたちは当たり前に奇跡を待っていた。願えば叶うと信じているから。

僕は自転車を押して草の上を歩き出した。唇が自然と歌声を響かせる。決して叶うはずのない子どもの願いなのに、どうしてだろう。叶う気がしてしまった。この星に空をくれた何者かがいるのなら、僕だってあの二人に空をあげたい。どうせなら、大人になることを忘れてしまえるような青空がいい。僕は願いを込めて自転車のベルを「チン」と鳴らした。

その瞬間、「つかまえた!」と二人から歓声が上がる。

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キムラ ケイ

エッセイ

日々の暮らしの中で見つけた、小さな物語を綴っています。

コメント1件

Kumiさん、こんにちは。嬉しいコメントをありがとうございます!そうですね、子どもの心を持ち続けて欲しいですね。でも、大人たちも子どもの心をどこかで大事に持ち続けているのかなとも思います。だから、子どもがやっていることを見ると癒されるのかなと。僕はこの子たちに癒されました。(笑)
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