ロイヤルエレンガンス小

ロイヤルエレガンスの夕べ2018

2018/9/1土 12:30- めぐろパーシモンホール

英国ロイヤルバレエ団のダンサーによるガラ公演、夏のバレエガラ祭りの最後として行って参りました。いやいやこれだけ素晴らしいダンサーを連れてきてくれて本当にありがとうございます。構成には満点じゃないところもありますが、チケット代やらダンサーを近くに感じられる小さい会場での開催やら、といったことをすべて考えると素晴らしいコスパの公演でした!

特に私がいいと思ったのはワディム、茜ちゃん、マシュー・ボール、そしてヤスミン。以下、感想を演目ごとに。

◆「春の声」よりパ・ド・ドゥ
ラウラ・モレーラ& アレクサンダー・キャンベル
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:ヨハン・シュトラウス2世

アレックス、白鳥のシネマのときより少し顔が丸くなっているような・・・?そういうのもあって、全体的にちょっと重たい感じがしてしまいました。春の声は、コジョカル&コボーの名演(たぶんバレエフェス?)が印象的。

◆「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
ヤスミン・ナグディ& マシュー・ボール
振付:ケネス・マクミラン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

凄くよかった!ヤスミンのジュリエットが、初々しい恋心でいっぱいの少女そのもので、本当に可愛かった?彼女の抜群のリズム感も大好き!そしてマシュー・ボール、美しいですねー。ロミオのソロも全く危なげなく、プリンシパル昇格に納得。

◆「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
高田茜& ジョセフ・シセンズ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル 音楽:ジャン・シュナイツホーファ

茜ちゃんって本当に技術が高いよな、と前から思っていたのですが。今回の公演ではなんか放つオーラが以前より格段に強く華やかになっていてびっくり!舞台にいると思わず彼女に目がいってしまう、そういう存在になりましたね。都さんとは違うタイプだけど、日本人の大プリンシパルと言われる日も近いのでは。シセンズ、さすがロイヤルで爪先がきれいだなーと思いました。

◆瀕死の白鳥
カルヴィン・リチャードソン
振付・衣装:カルヴィン・リチャードソン 音楽:カミーユ・サン=サーンス

これ、なかなか面白かったです。腕のカクカクした動きが猛禽類っぽい。男性のスワンっていうとどうしてもマシューボーンのスワンを思い出しちゃうけど、その影響もあるよねって感じが。リチャードソンの作品は、後に出てくる「クレド」にはアクラム・カーンの影響があるように見えるし、サドラーズでの上演作品をよく観てるのかな、と思いました。バレエ団の近くに良質のコンテがたくさん観られる激情があるというのは、振付家を目指すダンサーにとってはとてもいい環境だな。

◆「ジュエルズ」よりダイヤモンドのパ・ド・ドゥ
ローレン・カスバートソン& ワディム・ムンタギロフ
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

今回の公演、全体的にダンサーのレベルは高かったと思うけど、そのなかにあってもこの二人が出てきちゃうともう格が違う感じがしてしまう。この日のダイヤモンドは、あまりの素晴らしさに涙腺が緩みました。ワディムがまさに光輝いてて。ダイヤモンドで男性にこんなに目が行くのはチュージン以外では初。ローレンの気高さも好き。二人とも、途中で物凄く幸せそうな顔してた。
ワディムをバレエフェスに呼ばなかったNBSさんは大変な間違いを犯してるのでは。ロイヤルにはサラとスティーヴンに声をかけてそれぞれにパートナーを選ばせたらああなった、ってのは分かるんだけど・・・彼は現代最高のダンスールノーブルの一人ですよ。今後はもっと大切な存在として認識してほしいな。

◆「エリート・シンコペーションズ」よりべセーナ・ワルツ
ヤスミン・ナグディ& 平野亮一
振付:ケネス・マクミラン 音楽:スコット・ジョプリン

作品自体はそんなに面白くないと思うんだけど、芸達者な二人がやるから可愛かった♥ヤスミンって役者だよなーと思う。豊かな表情も好き。

◆「危険な関係」よりパ・ド・ドゥ
ラウラ・モレーラ& マシュー・ボール
振付:アダム・クーパー 音楽:フィリップ・フィーニー

マシューボールの妖しい魅力炸裂って感じで、これ観ながらスワンのストレンジャーを想像してワクワクしてました(年明けに観に行く予定!チケットも取った)。この作品自体は、ストーリーが分からないながらも、オネーギンの手紙のパドドゥと椿姫の黒のパドドゥを足して割ったような感じだったなーと。ラウラが踊りたかったのだろうな、と思った。

◆「トレース」よりパ・ド・ドゥ
ラウラ・モレーラ& リカルド・セルヴェラ
振付:キャシー・マーストン 音楽:ヤン・ティルセン

ラウラとリカルドによるコンテ。リカルド、大好きなダンサーなんだけど、この作品ではあまり彼のいい面が出てなかったような気がする。今回私はラウラにはどの作品も余りピンとこなかった。

◆「クレド」(世界初演)
ジョセフ・シセンズ& 未来の星賞2018 受賞者たち
振付:カルヴィン・リチャードソン 音楽:カンディング・レイ

頭の上に仮面をつけて、それを顔として踊るというアイディア、それアクラムのDESHからとったでしょう?!って真っ先に思った。まさか一週間前にChotto Deshを観ている客が客席に何人もいるとは、主催側も想定していなかったのでは。でも、シセンズのパフォーマンスもよかったし楽しかったです。シセンズは古典よりもコンテの方が存在感が強くなる気がした。

◆「シルヴィア」第三幕よりパ・ド・ドゥ
ローレン・カスバートソン& ワディム・ムンタギロフ
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:レオ・ドリーブ

これもまた、素晴らしいパフォーマンス。こういうのをバレエフェスで見せてほしかったよー(泣)と思いながら観ていたら終わっていた。本当は弾けて踊ってるワディムも観たかったな。

◆「With A Chance of Rain」よりエレジー・パ・ド・ドゥ
ラウラ・モレーラ& マシュー・ボール
振付:リアム・スカーレット 音楽:セルゲイ・ラフマニノフ

リアム・スカーレットの動きらしくとても美しいネオクラシックの作品なんだけど、ちょっと退屈した。二人ともとても上手いとは思うんだけど、こういうのは魂を感じられるようなパフォーマンスでないと感動できない。

◆「二羽の鳩」より和解のパ・ド・ドゥ
ヤスミン・ナグディ& アレクサンダー・キャンベル
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:アンドレ・メサジェ

ヤスミンが可愛い。ふるふる手を動かすところとか、本当に小鳥みたい。二羽の鳩はどんな話か全然知らないのですが、音楽の感じからすると終わりのシーンなのかな。

◆「レイヴン・ガール」よりパ・ド・ドゥ
高田茜& 平野亮一
振付:ウェイン・マクレガー 音楽:ガブリエル・ヤレド

茜ちゃんの強い肉体を堪能する作品でありました。私は実は、振付観ながら、ああこれサラに振付けたんだろうな、サラの軟体動物みたいな体だからこうなったんだろうな、って思いながら観てしまったのですが、あのサラの特殊な身体に振付けられたものをここまで完璧に踊りこなすのって凄いなと。そして茜ちゃんってちょっとダークな感じのある役が似合いますよね。平野さんとのパートナーリングも完璧。

◆「ファサード」よりタンゴ
ラウラ・モレーラ& リカルド・セルヴェラ
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:ウィリアム・ウォルトン

リカルドはとっても可愛かったし彼のリズム感のよさも感じられた!けど、うーん作品として面白いかと言われたらなあ。リカルド、もうあまり踊ってないんですかね。昔の彼のキレキレの踊りがまた観たかったよ・・・

◆「モーグリ」(世界初演)
ジョゼフ・シセンズ
振付・衣装:ジョゼフ・シセンズ 音楽:Ipelegeng Group

私はタップはあまりよく分からないんですが、シセンズのタップは最上級の感じには思えなかった。分からないジャンルほど、超一流じゃないと感動できないよなー。

うーん、演目ごとに感想を書いててあらためて思ったのですが、連れてきてくれたダンサーのレベルは高いし何人かはとても大好きな人達なのですが、今一つ演目とか構成とかでそのよさが活かされていないように感じたんだな、やっぱり。この公演を主催するダンス・ツアーズ・プロダクションがラウラとそのご主人の会社で、だからこそ彼女が5演目も踊ることになっているのはそちらの事情だと仕方ないのかもだけど、個人的には今回のラウラのパフォーマンスでいいと思った部分があまりなくて。茜ちゃん、ローレン、ヤスミン、って素晴らしい女性ダンサーがたくさんいるから、彼女たちをもう少し見たかったな、という気持ちの方が強いです。ワディムも2演目だけだし。あと、タップは本当に上手い人じゃないとバレエファンには面白くないような。スティーヴンがいないならタップはなしでもよかったのではないか。

この公演、運営にもびっくりするような不手際があり、いろんな意味で中心にいる人達の力不足を感じてしまいました。ロイヤルバレエには好きなダンサーがたくさんいるので続いてほしいと思いますが、今回のこの日本の観客のもやもやをちゃんと受け止めて次回に改善してくれるのか、ちょっと心配しながら期待しています。

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