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アクラム・カーン カンパニー Chotto Desh

2018/8/25土 15:00- 横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール

ChottoDesh中Desh振付・演出:アクラム・カーン
Chotto Desh演出・翻案:Sue Buckmaster (Theatre-Rites)
音楽:Jocelyn Pook
照明:Guy Hoare
出演:デニス・アラマノス

アクラム・カーンのDESHが日本に来たとき、なんと見逃してしまったのですが、それを元に子供にも分かりやすくしたChotto Deshをやっと観ることができました。いやー面白かったです・・・!

カーン自身の生い立ちを語るものだということはDESHを観た友人から聞いていましたが、うまくできてるなあ。台詞は日本語に翻訳してあってとても見やすかった。
最初、スマホの不調でバングラデシュにあるコールセンターと話をするシーンから始まり、パスワードを思い出そうとして自分の過去を振り返るというつくり。父からの料理店を継ぐのだというプレッシャー、祖国のしきたりにとらわれる発言、それらと戦いながら、ロンドンで生きているアクラム少年が自分のやりたい道を進むことを決心する、までが語られます。同じような境遇にある子供に希望を与えるような作品になっているのかな、と思いました。DESHの方はもっと父親のバングラデシュでの人生などが語られ、祖国の悲惨な状況や伝統を受け継ぐ使命などに焦点が当たっているらしい。Chotto Deshはそのあたりは希薄。ただ、思い出したパスワードがおばあちゃんが語ってくれた祖国のお話に出てくる森の神様の名前だ、というところに少し引き継がれているのかな。

DESH観たいなあ。アクラムは今各地で上演しているXENOSという作品を最後にダンサーを引退すると発表しているので、もう叶わぬ夢ですね・・・ほんと公演って一期一会で気になるものを観られるチャンスが巡ってきたときは逃さないようにしないと、と心底思いました。

Chotto Deshに戻ります。ストーリーもよくできているのですが、演出もこの作品の大きな見どころの一つ。一人でストーリーを表現するために、アニメーションが実に効果的に使われています。公演の始めにステージ奥に見えていたグレーの壁(アクラムのジゼルの壁と雰囲気が似ていた)は、ライティングによって透けるスクリーンになり、そこに投影される線画のアニメーションとスクリーン裏のダンサーが共演。これが実のほのぼのしていていい雰囲気。

舞台装置はそのスクリーン兼壁と、椅子だけ。椅子は大小出てくるけど、少年アクラムの感じる自分の居場所、みたいなものを表現しているのかな。あと、自分の部屋をライティングだけで表現するのも上手い。

そしてこの振付、本当に秀逸。冒頭のバングラデシュの雑踏を表現するシーン、行き交う車の多さ、交通整理をする人、物乞い・・・これらが、同じ人が同じ衣装なのに表現し分けられていく。ダンスの力凄いなあ。あと、坊主頭のてっぺんに顔を書き、それを顔にして演じる父親役、これって珍しいアイディアではないけど、何とよくできていることか。もはやDESHのビジュアルとしてのトレードマークなのでは。家を継げと言われながらダンスへの夢が捨てきれずに部屋で練習するシーンはマイケル・ジャクソンの振付がたくさん出てきて楽しかった!ここはダンサーが変わっても同じなのでしょうか?

今回の日本公演ではダンサーは2人で日替わり。私が観た日に踊っていたデニス・アラマノスはヒップホップ、クランプダンスからダンスに入った人。どことなくアクラムを思わせる風貌で、彼の物語を表現するのに違和感はありませんでした。

会場には子供もたくさんいましたけど、みんな真剣に見入っていました。私の隣にいた子供達のグループの中の一人は終わった途端に「面白かった!脚本思いついた!」って言ってて思わずにんまりしちゃった。日本でも「子供のための」と名の付いたクラシックバレエの公演は盛んにおこなわれてますけど、筋書きも踊りもとても簡単になっていることが多く、子どもだからこそもっと本格的なものを見せた方が感じることが多いのじゃないかな、といつも思ってきました。その点Chotto Deshは、もちろんDESHからダークな部分を除いたつくりにはなっていますが、素晴らしい演出やダンスはオリジナルからそのままもってきているらしく、流石だなぁと。

それにしても、タイトルのChotto Deshの"Chotto"は、どういう意味なんだろう。日本語の「ちょっと」だったりして?って友人とも話していたのですが、果たして。

画像は公演の公式サイトから借用。問題がある場合はご一報いただけると幸いです。
https://dance-yokohama.jp/event_landing/akramkhan/

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