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鈴木操「fortunes」TAV GALLERY

2023.8.26

昨日は鈴木操さんの個展「fortunes」をTAV GALLERYで見てきました。
初見の印象としては、とにかく「謎の物体」といった感じで、面白いなと思いつつ、どう見てよいのかよく分からなかったのですが、キュレーターの飯盛さんのお話を聞いてたらちょっとずつ分かってきました。

鈴木さんの作品は色々な要素が複雑に絡み合っているけど、いくつかある軸のひとつとして、「伝統的な彫刻というものを解体して、新しい彫刻の概念を打ち立てる」みたいなモチベーションがあるのかなと理解しました。

伝統的な彫刻のモチーフは「人体」で、その人間の脊椎動物としての構造をトレースするかのように、人体彫刻は心棒を作って、そこに肉を付けていく。けど、鈴木さんの作品はそれとは逆の構造をしている。

中身は風船で、そこに詰められているのは空気なので、軸がない。それがどうやって形を保っているのかというと、漆喰によって作られたフレームと、風船をそのかたちに保っている外気圧。なので、根本的に人体彫刻とは構造が違う。

ただし、そこから喚起されるのは単なる抽象的な物体ではなくて、「人体」ではない別の「身体」なのが面白ポイント。つまり、その構造が、「内骨格」を持った人体とは対になるところの、「外骨格」をもった身体を表象する。

伝統的な彫刻は人体をモチーフとしてきた訳だけど、そうではない別の身体の構造を取り入れて制作することで、伝統的な彫刻を解体して、新しい彫刻の概念を打ち立てようとしている、みたいな取り組みなのかなと思いました。

鈴木さんの作品にはファッションという文脈も不可欠っぽいのだけど、自分のリテラシーではそこはまだうまく汲み取れなかったので、今後の別の展示の機会とかを通じて少しずつ理解していきたいなと思いました。

あと、素材の問題も関わってくるようで、漆喰という最近話題の地質学的なトピックとも繋げて考えられる作品みたい。
なんというか、色々な要素が渾然一体となっていて、それがこの変な形に落ち着いているのがとても面白いなと思いました。その要素を少しずつ解きほぐしていく楽しさがある作品でした。


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