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視聴率惨敗。言葉が出ず

僕は大学を卒業してから少しだけサラリーマンをした後に放送作家になった。

一番最初に作家として入らせていただいた番組はピカピカ団という番組だった。

坂上忍さんがインタビューで話していた通り、最も厳しいと言われる枠での放送だった。

日曜夜8時は死の枠と言われている。

NHKは大河ドラマ。日テレはイッテQ。

普通の番組では視聴者を奪うことができない。最難関の枠だ。

僕の初仕事はもっとも過酷な枠というわけだ。

そしてピカピカ団は改編期の特番シーズンに日曜夜8時から満を持して放送された。

僕のキャリアとして一番最初の番組だ。

特番シーズンは各局死力を尽くす

見たい番組ばっかり同じ日に重なる!ってことありますよね。

僕は小さい頃になんで同じ日に重ねるんだろうって毎日不思議に思っていました。でもこうしてテレビ業界に入って分かったことがあります。

見たい番組が重なる日は言い換えると「見てくれる人が多い日」なのです。

例えば、サッカーの日本代表戦が放送される日があるとします。いつもサッカーの日本戦は凄い視聴率です。

逆に言うとそれだけテレビをつけているので他の番組を見てくれる可能性もあります。

それに見たいと思わせる番組を作らないとサッカーに根こそぎ視聴者を持っていかれます。なので見てもらうために各局特別な番組を作るのです。

特別な番組=特番です

ピカピカ団が放送された日は3月25日。

改編期と呼ばれるシーズンで特番が多く放送されていた。

裏枠ではイッテQのスペシャルを筆頭に多くの番組が豪華な特番を作っていました。

もちろんピカピカ団も負けていません。

綿密な打ち合わせをしてロケを開始し、十分に面白いと言える映像を撮ることができました。

自分なりにも全力を尽くして貢献できたと思っています。

もちろん厳しい枠であることは承知していますが、ある程度闘うことができるのではないか?と僕は短絡的に思っていました。

しかし現実は甘くありません。

視聴率の知らせが届く

テレビマンにとっての結果は視聴率だけだ、と思う。

視聴率が良ければ広告収入が上がる。テレビ局の社員の給料も増えるし次の番組の予算も上がる。

逆に視聴率が取れなければ全てが回らなくなってしまうのだ。

そして今テレビはかつてほど視聴率が取れなくなってしまった。

多くのテレビ局とテレビマンが頭を悩ましています。

かつてよりも真剣にテレビマンはテレビを考え出しました。

番組が放送された翌日、僕のパソコンに一通のメールが届く。

そのメールのタイトルには「視聴率」と書かれていた。

僕は慌ててそのメールに添付されていたファイルを開く。

問題があるかもしれないので視聴率を載せることは避けますが、時間帯の中でビリの視聴率だった。

どこかの局には勝てるのではないかと思っていただけに衝撃的だった。

僕は唖然としながらメールを見つめた。

数字は残酷だ

ビデオリサーチという会社が視聴率を集計しています。

そのデータは実に詳細です。詳細なデータは逆に僕を傷つけました。

どのシーンで視聴率が悪いのかが分刻みで分かるのです。

僕はしばらくそのグラフを見つめた。他局の番組は高い数値でのグラフだった。羨ましいとすら思った。

出先でメールを見たので、家に帰って部屋の中でまたメールを見つめた。

何度も見ても数字は変わらない。他局に負けたという事実が重くのしかかる。

そのあとにプロデューサーからメール。局内での評判は悪くなかったとのことだった。

僕はとても申し訳ないと思った。

番組の視聴率が悪い時、責任は誰にあるのかという問題がある。

それはもちろんプロデューサーだ、という意見があるかもしれない。恐らくそうだろう。

でも基本的には作家の責任も大きいと思っています。放送作家がどれだけアイデアをだし、良い番組に構成を組むかにかかっています。

もちろん放送される枠に協力なライバルがいたり、事前の告知がうまくいっていなかったり、そもそも予算が少なかったり、旬なタレントが使えなかったりとか、様々な制約があるにせよ、そんなことは作家に関係ありません。

視聴率を出すことが放送作家の仕事です。

僕は一番若手の作家で大したことはしてませんでしたが、せっかく呼んでもらえたので数字という結果で答えることができずに悔しい気持ちになりました。

一つの仕事に全力で向き合う

放送作家は生き残るのが大変に難しい職業です。

僕も明日のことは分かりません。いつすべての仕事がなくなるかなんて予想できません。

だからこそいただいた仕事は全力でやっています。求められている期待の1%でもいいから超えられるように努めています。

ただ、どこまでいっても作家は視聴率を取らないといけません。

それを今回で痛感することができました。

現実は甘くない、ということです。

ピカピカ団の次回があるか、そして次回に作家として僕を呼んでくれるかは分かりません。

しかし次回があるのではあれば数字で結果を残したいです。

恐らく特番としてまた日曜夜8時の枠で闘うことになると思いますが、今度こそは勝ってみたいと思いました。

テレビは終わりだと言われますが、テレビマンたちは毎日真剣に番組を作っています。面白いものを見せたいという想いはむしろ昔よりも強いかもしれません。

そんなテレビをこれからも宜しくお願いします。

僕も生き残れるように頑張ります。






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