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Food5.0 (食の未来像)

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Food5.0はキクチの造語。これから訪れる、食べ物や食べることの「未来」を描き出しながら、日々の気付きを書き留めていきます。動植物の進化、人類の歴史・文化、文明・テクノロジーな… もっと読む
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記事一覧

フードロスに取り組む人が増えても、フードロスが解決しない理由。

最近、フードロスに取り組んでます!余った食材や規格外野菜を食べるイベントやります!という人が増えた。特に若い世代の取り組みとしては、気候変動マーチ(行進)、脱プラスチックに次いで、多いのではないだろうか。 日本に限って言えば、この動きは昨年くらいから急加速した。フードロスに取り組むベンチャーにVCの資金がつくくらい、まるで「成長分野」のような空気がある(成長しちゃイカンだろw)。 しかし、僕としては「なんで今ごろになって急に?」という感覚が拭えないのだ。 農水省が、ロス

あなたも私も味音痴で、味音痴しかいない幸せな(争いなき)世界が来るかも知れない。

美味しい、いや、美味しくない。 美味しいと言っている人の気が知れない。 私の味覚はマトモだけど、あの人はマジ味音痴。 なんてやり取りが絶えない、1億総グルメ社会ニッポン。 食○ログで点数の高い店(=単価の高い店?)にはほぼ全員が手放しに「美味しい!」と愛と自己顕示欲に溢れた書き込みをするが、それほど点数が高くないお店の口コミを是非、ご覧頂きたい。 "誹謗中傷は禁止"がルールだから、書きぶりは「慇懃」なのだが、美味しくない、美味しいと言っている人の気が知れない、と(明言は避

中抜きか、必要経費か。農業と流通を巡る感情論について。

東京のスーパーで150円のものが、生産者の手取りになると100円。中抜きされている!これが農業を苦しめている問題だ!という人が、いる。結構な頻度で、お会いする。 何でもかんでも、産地価格が安過ぎる(流通が搾取する、アコギだ)、と言いたいようなのだ。 しかし、「都心スーパーの店頭価格が150円で、関西の生産者の手取りが100円なら、悪くない(むしろかなり良い)条件」、というのが僕の感触。 話していると、気付いてきた。 「安い、中抜きされている」という人には、共通して、ある

Food5.0?フードロジストって何だ?から始まる、「食べる」の未来づくり。

少し前から「Food5.0」という(僕が勝手に言い始めただけのw)新しい概念をベースに、2030年、2050年、2070年、2100年と、少し先の「食べるの未来」を具体的に描いてみる、という私的なプロジェクト?をやってます。 時々、僕の実験や、投げ込む議論に巻き込まれている人もいますが(ほんとスミマセンw)、あまり広げずに、こっそり本の原稿を書いたりしてます。 そもそもの話、 農業や食料流通はもちろん、生物がfood(食物)になった過程や歴史について等々、「食べ物」や「

獣害が増える理由と、ソーシャルでバイオロジカルな対策の可能性について。

いきなりですが、こんな話を聞いたことありませんか? 「人間のせいで山が弱り、やむを得ず獣が里に降りてくる」と。 これ、ほとんどウソに近いそうです。まず、日本の山はかつて無いほど豊かになっています。森林資源量は増加しています。外材に頼っているせいで木を切らなくなったこともありますが、終戦直後に比べれば、ずっと緑が増え、ワサワサしてます。 人工林は針葉樹が中心のため、エサとなる実が広葉樹や果樹に比べて少ない、という点はあります。しかし、獣からすれば樹皮も竹も若芽もエサになり

「生野菜のサラダ」という幻想が生み出す、社会のムダについて。

生野菜を食べるなんていう、たかだかこの数十年の流行り(ブーム)さえなくなれば、農業や流通のあらゆる課題が解決するのよね、という話。 生野菜のサラダが健康に良い? まずコレね。極めて効率が悪い。野菜の栄養やエネルギーなどが一番吸収されない食べ方なのは明らかだ。 ではナゼ、生野菜のサラダがこんなにも広がったのか?それは逆説的だけど、肉食や魚食が広まったから、だ。 炭水化物はもとより、脂質や蛋白質が過多な食生活が広がってきたことを背景に、(あえて人にとっては消化の悪い)植物繊

日本の「食」が失ったもの。

今、モロッコのメディナ(旧市街)にいる。 各地を歩きながら思うのだけど、食べ物について、「土用の丑の日」とか、「○○の日(例:さんま祭り)」とかを定めない方が良い。 貯蔵がきくもの(穀類、保存食、冷蔵冷凍品)や、年中あるもの(畜産物)ならまだ良いのだけど。 天候や環境によってかなり変動がある海産物や野菜は、向かない。その日に合わせて未熟なものを流通させることになったり、足りないからってコストかけて輸入したりする羽目になる。 採れた時、市場にある時が「食べ時」。 まだ出荷

「お菓子の家(Edible House)」には、未来がある。

「お菓子の家」と言えば、グリム童話「ヘンゼルとグレーテル※」に出てくる、魔女が住む家。子どもの、女子の、いやヘタをすれば、全人類にとっての"ドリームハウス"に違いない。 (※原文を読むとけっこう残酷なのだが、この際忘れよう。) "お菓子の家"をググると、「家の形をしたお祝い用ケーキ」として、数多のメーカーやパティシエさんの手で商品化されているのが分かる。某有名レシピサイトでも、子どもと一緒に作って楽しむスイーツの題材として、沢山の投稿がある人気テーマだ……って、ちょっと待