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中抜きか、必要経費か。農業と流通を巡る感情論について。

東京のスーパーで150円のものが、生産者の手取りになると100円。中抜きされている!これが農業を苦しめている問題だ!という人が、いる。結構な頻度で、お会いする。

何でもかんでも、産地価格が安過ぎる(流通が搾取する、アコギだ)、と言いたいようなのだ。

しかし、「都心スーパーの店頭価格が150円で、関西の生産者の手取りが100円なら、悪くない(むしろかなり良い)条件」、というのが僕の感触。

話していると、気付いてきた。
「安い、中抜きされている」という人には、共通して、ある大切なことが抜けてる。

それは、バリューチェーンと必要(流通)経費、ってやつ。

極論、スーパーが150円で売ったら、作ったのは自分たちなのだから150円かそれに限りなく近い価格が支払われるべきだ、という話なのだ。つまり、売ってくれる人、運んでくれる人にリスペクトがない。彼らにかかる費用なんか、限りなく薄くて当然、という論調。

気持ちは分からなくもない。むしろ、そういう「中間コストが限りなく低い」仕組みを作ってきた僕にだから、つい言うのかも知れない。

けどさ。

その人たちに利益がなくて、どうやって届けて、さばいてもらうのさ?という話。

確かに、生産者にとっては、既存の農産流通業界や中間プレーヤーの「抜き過ぎ」に対しては、強い不信感や抵抗感がある。

JAさんの様々な手数料はもちろん、セリも機能しておらず、底値で都市部の市場に流すだけの地方市場や、安売り競争しか能がないのに30〜40%もマージンを取るスーパーなんて、無くせるのなら無くしたほうが良いとすら思う。

一方、冒頭の条件を見てみると。

畑から都市部スーパーの店頭まで、かかる物流経費と流通事業者の利益率を考慮すると、店頭価格150円に対して100円(2/3)が生産者の手取りになるなら、かなり「儲けもの」だ。

このコストが(心理的に)不満なら、生産者さんが自ら開拓し、都市の消費者に直接売れば良い。それは選択肢だ。ただし、今の宅配便コストや、開拓営業やCRMコストを考えれば、利益率や手取りはむしろ悪くなる。

直販も、考えものだ。

直販したい生産者さんが時々使っている、CtoC(直販、マッチング)サービス。メル○リのコピーみたいなやつ。

物流コストの負担やソリューションもなく、ウェブに掲載して注文を繋いでいるだけのオンライン(CtoC)プラットフォームに、毎回、高い手数料を払い続ける方がよっぽどバカらしい。

直販ならではのコミュニケーションや一過性の楽しみはある。単価も高いと言うが、その実、送料や手間を考慮すると"価格を上げざるを得ない"というところ。決して利益が潤沢に出るものではない。
CtoCほど、取引が小さく、手間(高コスト)で、持続的ではないものはないだろう。生活や商売を支えるインフラとしては、あまりに心許ない。

気持ちも痛いほど分かるけど、合理性は、大切。

販売価格やコストの妥当性や、販売チャネルの選択は、商売を続ける上で大切な肌感覚だと思ってます。

では。

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