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内臓を次々と素手でつかみ出す『ジョゼと虎と魚たち』。田辺聖子の柔らかい剛腕、山田詠美のはだかのカミソリ。

自分を変えだすと孤独がはじまる。
さっきまで隣りにいたはずの人がいない。
よそよそしい視線が痛い。

寂しい思いもするが、それは自分が新しいステージに移った証拠。
だから、落ち着いてまわりを見回してみる。

そんな自分を、同じ気持ちで遠くからおずおずと見つめている目を見つけるだろう。

孤独は新しい出会いのはじまり。

『ジョゼと虎と魚たち』 田辺聖子/角川文庫

 八篇の短編集。解説は山田詠美。

 関西ことばのもつ「素手」感がヒリヒリと迫る。
 柔らかそうに聞こえても、田辺にかかれば、その手は内臓を次々つかみ出す剛腕の素手。

 エイミーがはだかのカミソリを手にし、アクロバティックに舞う切りさばきでそれらを料理し、テーブルに並べてくれた。

 この解説文、本編九篇目といっていいぐらい、解説の域を超えて、キレッキレ。

 良い書き手は良い読み手でもある。


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