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感想「号泣する準備はできていた」(江國香織 作)

こちらの感想ではネタバレは極力入れません。
ぜひ、未読の方に興味を持ってもらえたらと思います。配信アプリ「ツイキャス」で、この本の紹介しながら、配信を見ている方とおしゃべりもします。
紹介する内容、ピックアップする点は基本的に記事と同じです。
しかし、ライブ配信なので、予定調和にはなりません。

配信予定日時
9月9日(月)20:30〜


https://twitcasting.tv/c:eureka0202


ツイキャスを見る際に、会員登録等は不要です。リンク先は八朔の配信ページに直接繋がっていますので、お気軽にどうぞ。

※アーカイブでも視聴可能です。


私はたぶん泣きだすべきだったのだ。(p191)

あらすじ

身体が、心が、全てが満たされるような気がした恋が終わる。その後に残されたものの形や色、匂い。全て尊い、かけがえのないもの。
12篇の短編たちに触れて知る、恋の終わりや愛の哀しみ。


感想

いつもと違い、あらすじをかなりポエミーにまとめてしまいました。
でも、この作品集のあらすじとして、本当にこういう表現をしたくなってしまったので。

作品の随所で、タバコとお酒の匂いがして、異国の香水と汗が混ざった匂いがします。
かと思えば、背伸びをしたヴァニラの匂いもするので、文字を読むだけでクラクラしてしまいそうでした。
私だけではないと思います。
(もともと、江國さんの作品は、ムスクというか、官能的な香水のような香りがする気がします)

短編のひとつひとつはかなり短め。
それらが連なることで、恋愛の濃淡が描かれていると思います。
作品のひとつ読んだだけでは完成しない。
短編集の面白みが感じられる一冊だと思います。

恋の終わりを感じさせる話が多いのですが、その終わりがいかに切ないものであるか、を説くように、一度激しく燃えあがった感情についての描写も抜かりがありません。
誰かを愛することに対して人間はいつだって盲目になれるのだと、臭いセリフだって言えそうな気になります。
しかし、ひとつお話が終わるたびに、愛の終着点のほろ苦さを、ため息混じりで吐き出したくなります。

八朔の好きな短編は「こまつま」。
簡単に言ってしまえば、主婦が一人でデパートで買い物をし、ランチを食べる話。
いつも通りのランチを食べる場面で不意にお酒を飲むことで、どんな女であっても過去の恋を思い出し味わっているのだと感じさせられました。
ちなみに作中で彼女が飲んでいるのは「グラッパ」というお酒ですが、先日サイゼリヤのアルコールメニューに載っているのを見かけました。
ぜひ今度、チャレンジしたいと思います。


「号泣する準備はできていた」というタイトルから、すぐに想像できるようなショッキングな恋の終わりは、この作品にはないと思います。
甘いだけの恋愛モノは苦手だけど、あんまり女性が辛い目に合うような作品は…という方におススメな一冊。









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