『雷電II』基板 〜旦那との会話覚え書き〜

『雷電II』基板がTL流れてたので、旦那(セイブ開発『雷電II』にテストプレイで参加、『ライデンファイターズ』シリーズのプログラマー)に聞いてみた。古い記憶によるため間違いもあるかもですが、何かのお役に立てば幸いです。「それ違うよ、こうだよ」といった他の関係者のお声も頂戴できれば有り難く存じます。

■ 『雷電II』基板のバージョンいろいろ

― 『雷電II』っていろんな国向けバージョンがあったんですか?

旦那 アメリカ版、韓国版、中国版、ヨーロッパもいくつか(イタリア、ドイツその他)に分かれてたと思う。台湾、香港、ブラジル、オーストラリアとかもあった気がする。アメリカ版はファブテック、ドリームランドっていうオペレーターは台湾か、中国だったかな? で、それぞれに別のバージョンを作ってた。
 香港はとにかく難しいのを求めてて、何のゲームでも入荷したらすぐベリーハードにしたり、残機設定を3→2機にしたりする。セイブ開発にも、毎回もっと高難度にしてくれという要望が来るから、香港版は毎回(雷電に限らずさまざまなタイトルで)難しい調整にしてたはず。『ファイターズ』とかも香港版すごい難しくしたから。
 アメリカ版はイージーに調整してた。ゲーム序盤は簡単にしておく、難しくしちゃダメと言われた。複数名でよってたかって次々コンティニューでプレイするスタイルが多いから、インカム稼ぐために1周じゃなく2周にしてくれと。『ファイターズ』が2周目があるのはそこからきてる。(※ 本来の日本国内版『ライデンファイターズ』は1周エンドで作ってある)

― 具体的に各国向けバージョンのゲーム内容でどんな違いがあるか覚えてますか?

旦那 『雷電II』のときは自分で調整してないから覚えてない、俺は横で見てただけ。ものによっては弾を遅くしたり、敵の配置とかちょっと変えてた気がする。『雷電DX』のときは面の順番も入れ替えてたと思う。1と2を逆にする、みたいな、具体的にどのステージが、とかは覚えてないけど。
『雷電II』の海外版作るのに何ヶ月もやってたわ。日本版作って終わったと思ってたけど、半年くらいずっと。バグ直したり、止まっちゃうバグもあった気がする。その間に日本版も再販がかかって、バージョンが変わった日本版も出荷されてた。と思う。俺記憶。

 わりと曖昧ですね。でも、社内のどこかにはメモが残ってたり、誰かが覚えてたりするのでは?

旦那 たぶん何も残ってないと思う。PSに移植したとき(※ 『雷電プロジェクト』 1995年セイブ開発)、各国版いろいろ入れたらどうか、という意見がスタッフから出たけど、メインプログラマーが、
「めちゃくちゃいっぱい作ったからそんなの覚えてねーよ」
って言ってた。その数年後、ソース(プログラム)を確認したけど確かに国別に書き分けたりしてなかった。どれが最新かもわからなかったw

 記録が残ってないってメーカーさんあるあるですね ^_^; ところで、国(バージョン)によって敵の配置を変える意味は?

旦那 たぶんその時の気分的な感じ?
「この国だから、ここに砲台置かなきゃ」
なんてあるわけないから気分でやってたんじゃないかな、自分が新鮮だから。

 あー、半年もやってたら色んな遊び心が出てきそうですね。現在やり込んでる(or 記憶が鮮明な)プレイヤーが、いろんな国のバージョンで遊ぶと面白い発見いっぱいありそう。楽しそうですね!

(するとここで筆者の知らないタイトルが出てきます。)

■ 『雷電II New』とは

旦那 『雷電II New』ってのはものすごい廉価版なの。

 つーにゅー?

旦那 にゅーとはついてるけど基板の原価をめっちゃおさえた非力なマシンで組み立てた『雷電II』で、CPUから何からすごい安く作って。原価をおさえて、めっちゃ安く売ってた。

 なんでそんな必要があったんです?

旦那 これは主に当時物価が安かった東南アジア向け。20万、30万する基板が買えなかった中国とか、東南アジアに売ってた。東南アジアでネオジオが大ヒットしたのはカセットが安いからなんだって、ああいうとこは基板安くしないと売れないんだよって社長が。
 ROMの数が少なくしてある(※ 当然サウンド用のROMも少ない←容量が少ない)んだけど、一番衝撃だったのは、BGMが4小節か8小節しかなくてどの面もずっと同じ曲ループしてんのw サンプリングレートが低すぎてガビガビ、ボーボー言ってる感じ。でもその音は佐藤豪くんが作ってたよ。

― おおお!?

旦那 『雷電II New』は、プレイするといきなり5面が始まったと思う。1面と5面が入れ替わってたような……違うバージョンだったかなぁ?

※『雷電II New』の動画を上げてる方がいたのでURL貼らせていただきました。サウンドは確かにループしてる感じもするけど、単純に重なってる音の数が少ないですね。

旦那 ちなみにNewは、『雷電DX New』も作ってたのを思い出した。『雷電II New』と全く同じBGMが鳴ってたと思う。もしかしたら『雷電DX New』はコース選択が無かったかもしれない。日本国内版では「練習」、「初級」、「上級」と3コースから選べるんだけど、『New』ではそれが無くて、新しく作ったマップがいっこ入ってただけだったような……練習をちょっと改変したようなのが。いや、でも初級くらい入ってたんだっけなー覚えてねぇ。
 同じ流れで数年後、『ライデンファイターズ2000』ってのも作ってた、たぶん。これも同じくめっちゃ廉価版のSPI基板で。

― たぶんて、それ自分がやってたやつでしょ、なんで覚えてないのw

旦那 Newのシリーズは別の人が作ってたんだよね。

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 以上。ここまで喋って「会社に遅れる!」と走って出ていったので、また何か聞けたら書きます。
 にゅーの話は、雷電サウンドファンとしては「あぶね、良かった日本で」だし、にゅーしか知らない海外のプレイヤーが本家を遊んだら感動するだろうなと思うし、転じて、今ある日本の環境を大切にもっとゲーセン行かないとな、と改めて思わされました(ここ数年まぁまぁずっと思ってる)。

 ほなまたね。

(Text:きらり屋)

追伸: 気が向いたら投げ銭をお願いします。その1コイン握り締めてゲームやりに行きます。

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