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第二回「ダンスって見ていて本当に面白いのかな。」


2020年はオリンピックだ。
人々がスポーツに熱狂する理由は分かる。ルールがあってゲームのようで、どちらかを応援して、勝ったり負けたりする。

芸人が面白いのも分かる。ネタをやるたびに笑えたり笑えなかったり。
演劇や小説が面白いのも分かる。笑えたり泣けたり、架空の物語で私たちの心が揺さぶられる。

「ダンスって見てて面白いのかな。」

たまにそんな身も蓋もないことを考えてしまう。

大学生の時にふとそんなことを考えていた時、その当時一緒に劇場インターンをしていた東大生の先輩がこう言っていた。

人間の脳には、目の前の動きの模倣をしてしまうミラーニューロンがあって、舞台を見ているときはそのミラーニューロンが活発に働いているんだけど、ある時に動きが追えなくなるような驚きがある時にカタルシスを感じるらしい。だからダンスを見るのは面白いし快感があるのだ。

と。私は事あるごとにこの話を話していた。

脳の情報処理スピードが追いつけないほどの早振りや技巧の凝った構成のものを見ると、ぐわっと引き寄せられる。
でも多分それだけではない、と最近思う。

目の前で息を切らして踊っている肉体があるということ。それは簡単に人間の本能的な部分で共振し、本人が頭で考えても分からないけども気づいたら涙が流れている、ということが起こる。

人間はその場を共有して見るというとこで驚くほど多くの情報を受け取っている。本番のダンスを記録した映像は、本番の高揚を思い出すトリガーにはなるがその逆はなり得ない。(これは展覧会の図録にも言えると思う。)
これはいくら文字で説明しても野暮なことだが、素晴らしい舞台を見た時に特にその生の力を考えさせられる。

ダンスの起源を辿れば、それは太古の昔から喜びを表す表現として、また祭り事の儀式として神と繋がるために、大勢の人と共有することと共に踊りが使われていた。昔からあるメディアなのだ。

古くあるからこそ、今の資本主義至上主義の社会には経済モデルが合いにくくなっている気がするが、それでも価値があることとして残っていくのかな。はたまた、本物と全く見分けがつかないほどまで記録再生技術が発達したら、実際にそこにダンサーがいなくても本当に感動する、なんてことは起こるのだろうか。

……まだまだ考える余地がありそうだ。


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この記事は、企画メシ4期生による合同コラム企画「コラム街」の1つとして書かれています。
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https://note.mu/bookandmusic/n/n918043f2d2f2

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