患者

 はあ、まあ、なんでしょうね。私の中には、私の中“だけ”の友達がいるというだけなんですけれどね……
 たまに喋りかけて来るんですよ。それはもう楽しそうにね。なにか嫌なことがあったりしたら、「あいつ本当に許せない!」だとか、なにか楽しみなことがあれば「あれをしたらこうしようよ!」だとか。
 まぁきっと、わたしの思考の擬人化だとは思いますよ。思いますけれど……でも友達だと、実際に私の頭の中に住んでいるんだと思いたいのですよ、エェ……
 きっとね、羨ましいんです。きっとね……あの子のことがね。今はもう居ないですけれど、楽しそうだった……私なんかよりも、ずっと苦しい思いをしてきただろうに、けれどもずっと楽しそうに生きていたのです。それがね……羨ましくてね……
 憧れで病を騙ってはいけませんけれど、けれどもそうすればなにか良いことがあるかしら、なんて思ってしまうのです。いいえ……「あの子は病気だから幸せなのだ」と思い込んでいるのです。思い込んでいることが分かっていても、思い込みが外れないだなんてね……聞いた話と違いますよ。ねェ……
 はあ、はあ……憧れだから、思い込みでは無い……フム……そうかねェ……分かりませんけれど、貴方が言うならそうかしらね……
 あら、もう行かれる……そう、次の予定が。相変わらずお忙しいのね……今度こそ、ゆっくりお茶でもね。ウン……

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