超個別化能力についてのレジュメ(仮)

 この世界は私の欲望に作られている。この椅子は私の座りたいという欲望によって椅子になり、人を攻撃したいという要望によって凶器になる。
 絵は、抽象的にしようとすれば「色付きの紙」になるし、具体的にしようとすれば「私を楽しませてくれる、横が○○cmで、縦が○○cmで、○○によって描かれた・・・絵」になる。

 後者の欲望の働きを「欲望の遠近感」とでも言おう。これを「できる限り近くで見る=限りなく具体化する」ことを「超個別化能力」と言う。これには幸福を促進する効果と不幸を減退させる効果がある。

 「私は絵を見て楽しんでいるが、絵を見るとは具体的に言えば「2024年4月25日12時10分56秒に見る、2024年4月25日12時10分57秒に見る、2024年4月25日12時10分58秒に見る」の連続であると、時間的に個別なことが分かるし、次に見るときは場所も違うだろう。私ももちろんそのときにはいろいろ変わっているだろうし、絵を楽しんで見れることは本当に嬉しい」

 「失恋は辛いと思っていたが、二度目の失恋はそうでもなかった。最初に好きになった人との失恋が辛かっただけで、本当のところ、すべての失恋が必ず辛いわけでもないみたいだ」

 また、超個別化能力を少しは持っていないと、他人を「黒人」「病人」のように抽象化し、個性=具体化すると見えるものを見ずに、個性によって成り立つ個人を殺す。

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