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陽イオンチャネルとTRPイオンチャネル)って一体何?

いや「くわしく」って言ってもたかが知れてますが・・・



化学物質過敏症の発症機序に関する最近の知見に、陽イオンチャネルとかTRPイオンチャネルとか出てきます。
なんじゃそりゃと思いますよね。自分もなんじゃそりゃです。
そこで、できるだけ調べて、ざっくりと解説していきたいと思います。
あくまでざっくりと。自分の理解できるレベルまでの話をこちらにまとめました。

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そして自分にも教えてくれたらうれしいです
(ノД`)・゜・。


今回は、陽イオンチャネルとTRPチャネルについて解説します。



陽イオンチャネルは膜たんぱく質の一種?


【膜たんぱく質とは?】


全ての細胞を覆う細胞膜の表面には様々な機能を持ったたんぱく質があります。これらのたんぱく質を膜たんぱく質と言います。これらには様々な機能と種類があり、機能としての分類で解っているだけで大まかに7種類、位置や結合による分類だと4種類に分かれますが、形状や機能のどちらもが複雑に入り組んでいたりかぶっていたりで、すっきり分類することは難しいです。
機能としての分類に、物質の輸送と信号伝達、酵素としての働きがあります。陽イオンチャネルは、その膜たんぱく質の中でも内在性たんぱく質、中でも膜貫通たんぱく質の一種で、細胞や生体にとって必要な物質だけを選び、細胞膜を通過させる役割を持っています。

※膜たんぱく質の種類

細胞膜には様々な膜たんぱく質があり、働きや形状により分類がされていますが、働きも形状も相互に深くかかわっていて、明らかな分類や系統付けは難しいです。膜たんぱく質の働きは、感覚受容、信号伝達、細胞内外の物質輸送、化学変化の触媒(酵素としての働き)が主なものです。
膜貫通たんぱく質は、その中でも主に物質の輸送と感覚受容、信号伝達の役割を担っています。


必要な物だけ細胞膜を通過させるために、陽イオンチャネルはじめ膜貫通たんぱく質には受容体がついていて、それが特定の物質を認識し、通路が開き、通してよいものだけを通過させ、通してはいけないものはシャットアウトしています。このことが細胞の働きを正常に保ちます。膜たんぱく質には多くの種類があり、それぞれ通す物質が違います。
例えて言えば、細胞を家とか部屋とし、細胞膜をその壁だとすると、膜貫通たんぱく質はその壁についた専用通路の扉であり、受容体鍵(認証システム付き)のようなものです。
細胞内外の物質輸送にかかわる膜たんぱく質には、他に膜輸送たんぱく質というものがありますが、これは細胞膜を貫通しておらず、物質を抱えて物質ごと細胞膜を通過するものです。細胞壁を海峡にたとえると、膜貫通たんぱく質は海底トンネルや橋です。それに対して膜輸送たんぱく質は渡し船のようなものです。

【物質が細胞膜を出入りする目的】


細胞内外を行き来する物質の多くは、この膜たんぱく質の輸送機能によって細胞膜を通過しています。生体や細胞のエネルギー源としての糖やアミノ酸、感覚や脳の指令を伝達する信号を送る機能としてのイオン、細胞で代謝が起きた結果産生された老廃物がそうです。


※気体の出入りは・・・

ちなみに気体(酸素や二酸化炭素)は膜たんぱく質を介さず、自ら細胞膜を自由に通過します。(濃度勾配による拡散の作用により、システム上正しい進行方向を違えることなく細胞膜を通過します。

※ウィルスが細胞に侵入するときは・・・

膜貫通たんぱく質は細胞膜についた扉であり、それぞれが持つ受容体がその扉の鍵の役割をはたしています。ですが、エンベロープウィルスがもつスパイクたんぱくは、この受容体に適合する形をとるのです。これにより、ウィルスは受容体に結合し、さらには細胞膜に結合します。そしてウィルスが持つエンベロープ内に包まれていた遺伝情報を細胞内に送り込み、細胞の機能を利用して自己複製を行います。
なので、人が持つ膜たんぱくの受容体と結合しやすいスパイクたんぱくになればなるほど、感染が容易になります。これが感染力の強弱に影響します。



【陽イオンチャネルの働き】

陽イオンチャネルは、膜貫通たんぱく質の中でも、その名の通りイオンの細胞膜を通った輸送と、それにより起きる信号の制御を主にしていて、イオン、特にNa+、K+、Ca+(プラスに電荷したナトリウム、カリウム、カルシウム分子)が細胞内外に移動する動きなどを担っています。外部刺激により、Na+、K+、Ca+が細胞を出入りします。すると細胞の電位が変化します(活動電位)。
陽イオンチャネルは、私たちの身体が受けた刺激を、感覚として脳に伝えたり、逆に脳の指令を末梢に伝えるメカニズムに大きくかかわっている物で、少なくともヒトでは、体中のほとんどの細胞の細胞膜に存在するものです。
指令の種類や感覚の種類や大きさ、これの違いを生んでいるのも陽イオンチャネルの働きです。

※感覚の差異や運動指令の差異が生まれるわけ

陽イオンチャネルの働きだけでは指令や感覚は伝わりません。直接それを担っているのは神経細胞(シナプス)と神経伝達物質です。陽イオンチャネルの活動電位の変化がシナプス小胞に伝わり、シナプス小胞が神経伝達物質を放出、それが神経を伝わっていきます。
陽イオンチャネルには様々な種類があり、刺激の種類によってさまざまな陽イオンチャネル(ナトリウムポンプ、カルシウムポンプ、カリウムポンプそのほか多種多様)がそれぞれの働きをし、それぞれのイオンが細胞膜を通って出入りすることで、細胞に活動電位の変化が起きます。細胞内や細胞から放出されるNa+、K+、Ca+の組み合わせや量が変わり、それによって起きる活動電位の変化にもさまざまなパターンが生じます。この活動電位の差異により、電位の変化のパターンを察知したシナプス小胞(神経細胞にある)が様々なパターンの神経伝達物質を放出し、神経細胞間をドミノやバケツリレーのように伝わり、末梢と中枢で信号のやり取りが行われます。これによって脳から末梢に運動指令が伝わり、逆に末梢から脳に、刺激が伝わり脳が感覚として認識できるのです。



☆陽イオンチャネルによる細胞の電位の変化(活動電位)
☆陽イオンチャネルの様々な電位が刺激となり、神経細胞が放出する神経伝達物質
☆信号を発する(運動時)、または受け取る(感覚知覚時)中枢神経系

これらが全てがコード化された信号を発信、受信することにより、体を動かしたり刺激を感覚として認知する際に、とても精密な調節がなされています。




TRPチャネル


【TRPチャネルとは】

前述のとおり、陽イオンチャネルにはさまざまな種類があり、また陽イオンチャネルだけではなく、神経伝達物質の制御等にかかわる膜たんぱく質にも様々な種類が存在します。
TRPチャネルは、その膜貫通たんぱく質の中の、陽イオンチャネルの中のうちの、さらに一種です。
陽イオンチャネルの中には他にも、電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カリウムチャネル、カルシウムチャネルなどなど、様々なものが存在して、相互に作用しあいながら、細胞膜内外への物質の輸送と、それにより起きる活動電位により発する信号の変化をつかさどっています。

【TRPチャネルの働き】

TRPチャネルの働きは、他のチャネルは物質と相互にかかわりながら、多くの働きがあります。
そのうち、先に陽イオンチャネルの項で紹介した電位の変化による感覚変換が、化学物質過敏症と深くかかわっていると思われます。
TRPチャネルは感覚変換の中でも特に、痛み刺激温度刺激機械刺激pHの変化低酸素状態の察知と反射的な生体反応などにかかわる部分を担っていて、体内に侵入した化学物質の感知にも深くかかわっているといわれます。
他にも、細胞の増殖・分化、生存、死、受精、発生などにも関わっているそうです。

※TRPチャネルの名称の由来

TRPチャネルのTRPは、Transient Receptor Potentialの略だそうです。これを直訳すると「一時的な受容体の能力(可能性)」となりますが、これはこのチャネルの能力や働きを表しているわけではなく、発見時の状況が関わっているそうです。
1989年にショウジョウバエの光受容応答変異株の原因遺伝子として発見されたそうですが、この変異株では、光受容器電位(receptor potential)の変化が一過性(Transident)であったことからつけられた名前だそうです。
ちんぷんかんぷんですね。




化学物質過敏症に関わるといわれるTRPチャネル


【TRPチャネルにも多くの種類がある】

TRPチャネルにもさまざまな種類があり、すべてが解明されているわけではありません。ですが、わかっている中で、TRPV1とTRPA1が化学物質過敏症に関わるといわれています。

【TRPV1】

〇TRPスーパーファミリーの中のTRPVサブファミリーの中の最初の一つ。
〇末梢神経系の侵害受容性ニューロンと免疫細胞に主にみられる。
〇Na+(ナトリウムイオン)とCa++カルシウム二価イオン)を輸送する膜貫通たんぱく質である。
〇主に痛み熱さ、刺激で上記の反応が起きる=脳に痛みや熱さの感覚を伝えるメカニズムの一端を担う。
〇酸性の環境に反応。
〇からしの辛味成分(カプサイシンなど)にも反応し、その感覚受容に関わり、他に黒コショウ、ショウガ、香草類の成分であるオイゲノール、ジンゲロール、ショウガオール、ピペリンなどに反応して活性化する。
〇炎症があると、TRPV1は活性化する(末梢感作)。
〇痛みや侵襲刺激によりTRPV1が活性化すると、免疫細胞が炎症メディエーター(サイトカイン、ケモカイン、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジンなど)を放出するといわれている。
〇貪食能などを含む免疫応答の調整にも関わるといわれる。
〇糖尿病モデル動物において、TRPV1の機能や発言に変化が見られたとの報告あり(糖尿病性神経症状に関与か?)。
末梢感作脱感作を起こす

【TRPA1】

〇TRPスーパーファミリーの中のTRPAサブファミリーの最初の一つ
〇末梢神経系の侵害受容性ニューロンと免疫細胞に主にみられる
〇Na+とCa2+を輸送する膜貫通たんぱく質である
〇主に痛み冷たさの刺激で上記の反応が起きる=中枢神経に痛みや冷たさの感覚を伝えるメカニズムの一端を担う
アルカリ性環境に反応する。ただし、酸性環境でも反応が見られたとの報告もある
〇ワサビ(アリルイソチオシアネート)、シナモン(シナモアルデヒド)やマスタード(イソチオシアネート)、生ニンニク(アリシン)などの辛味成分にも反応する。たばこの成分や大気汚染物質にも反応するといわれる
炎症があると、TRPA1は活性化する。このことから、炎症性疼痛の増強に関与するといわれる。
低酸素状態に反応し、覚醒や呼吸促進などの作用を起こすと言われている。
〇末梢感作や脱感作を起こすかどうかについては、可能性は示唆されているが未確認(炎症に関与する内因性物質に関わるもの)。

※気になる名称「イソ」チオ「シアネート」
-N=C=S
という化学基を持つ物質の総称であり、イソシアネート基の酸素を硫黄に置き換えることによって得られる。植物由来の天然イソチオシアネートの多くは、グルコシノレートと呼ばれる代謝産物が酵素によって変換されて生成される[1]アブラナ科の植物にしばしば含まれるアリルイソチオシアネートマスタードオイルに含まれ、辛味の原因となっている。人工のイソチオシアン酸であるフェニルイソチオシアネートは、エドマン分解ではアミノ酸の配列決定に用いられる。
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まあ、別の物質だそうです。
イソシアネート基が持つO(酸素)をS(硫黄)に置き換えるとイソシアネート気ですが。

Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%81%E3%82%AA%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%83%88


【末梢感作と脱感作】

TRPV1とTRPA1は、炎症に反応して活性化します。これは炎症に関連する内因性物質によってこれらのチャネルが活性化され、炎症時にはチャネルの発言量が増加し、細胞表面への移動などが見られます。
従って、TRPV1とTRPA1は炎症性疼痛に大きく関与する可能性がありますが、炎症に伴って痛みは増強します。
この状態を末梢感作と呼びます。
末梢感作とは、炎症や組織損傷が生じた際に、痛みを感じる神経(侵害受容性ニューロン)の感受性が増強される現象である。これにより、通常は痛みを引き起こさないような刺激が痛みを引き起こしたり、同じ刺激でも痛みを強く感じるなどの現象が起こるといわれます。

ところで、脱感作という現象があります。
脱感作とは、これらの受容体(イオンチャネル)が一時的に反応しなくなる状態をいいます。これは、反応を起こす物質が枯渇するからだと言われます。つまり、同じ痛みが続くと、はじめは痛みを感じるけれど、そのうちに痛みを感じにくくなる現象です。これは、感覚神経が一時的に休憩をとっている状態です。
嗅覚疲労に似ていますね。
この脱感作という現象は、鎮痛剤の開発にも関わっています。例えば、カプサイシンはTPRV1を活性化させ、はじめは痛みを感じさせますが、その後脱感作を起こして痛みを感じにくくします。これがカプサイシンが鎮痛剤の成分として使われる理由です。

カプサイシンによる脱感作を利用した消炎鎮痛剤
〇Resiniferatoxin注射:
 膝関節痛に対する注射として用いられる。日本では未認可。塩野義が
 ドイツのGrünenthal社とライセンスを結び、国内導入を進めている。
〇温シップ、貼付薬
 主成分がカプサイシンの温シップはすでに国内でも広く利用。
 また、高濃度カプサイシンを貼付することで、帯状疱疹後神経痛や
 HIV感染などによる神経損傷時の疼痛に有効とされる。

成人の慢性神経障害性疼痛に対するカプサイシンの皮膚貼付 | Cochrane








とりあえず、ここまで。陽イオンチャネルとTRPチャネル(TRPV1,TRPA1)についてでした。

TRPV1が受容するのはバニロイド類で、バニロイド類にはバニリンという成分もあって、これはバニラの主要成分であの芳香を持ってるんだって!
知らなかった!

それはそれとして。

ここまで。末梢感作と脱感作までは、まぁまぁすんなりと解るんですが、化学物質過敏症に関わるという中枢神経感作がまだいまいち。
正直「ん?」と思うところもあるし。
けど、そういう第一印象から入ってしまったからこそ、理解しづらいドツボにハマってる可能性も無きにしもあらず。

もう少し勉強したらまたまとめます。

また、何か間違いがあったらツッコミをくれると嬉しいです。なにしろ看護学や解剖生理どころか、なんていうのこれは?分子生物学?
ど素人ですので・・・

間違いがあったら、編集しなおすかもしれませんので、悪しからずご了承ください。

2024年3月

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