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ひとの夢を笑うな

やりたいことがない。大学生とか20代の子からよく聞く言葉。

本当はあるハズだと思う。最低でも、やりたくないことはあるはず。やりたいことがあるのに、具体的にブレイクダウンする事にためらってはいないだろうか。夢って、壮大でなくちゃいけなくて、みんなに聞かせるには大層な大義名分がないと恥ずかしいものだという呪いをかけていませんか。それって、恐ろしい。ずいぶん人生、変えちゃうよ。


約束の日に友達が来なかった理由

高校時代の夏休み。私は、何人かの女友達と一緒に海に出かける約束をしてた。携帯がなって、4人で過ごすはずだった海の予定は、私ともう一人の友達のふたりだけになった。月に一度の日が重なってしまったからごめんね、ということで、私と友達は延期にするかも考えたが予定通り鎌倉の海へ向かうことにした。あの時はとても暇で暇で、何かしらのコンテンツがないとやっていけなかった。

海に着くと日が暮れるのも遅くて、気がついたらもう夕方。時間感覚の無い自由さに解放されて、どこまで行っても全てのことができそうな気になったり、悩みがとてもちっぽけである反面、そのちっぽけな悩みに右往左往しているもっとちっぽけな自分を感じたりもした。

時間は夕暮れになり空も少し店じまいを始めたころ、明るい時よりも海に人が増えてきた。友達は言った。「これから花火だって!今日、花火大会だぁ!」

人が増えてきた砂浜で、私と友達は身動きが取りづらくなっていたこともあり花火をみて帰ることにした。バーン、バーン、ババーンと頭の上で打ち上がった花火は、キラキラしながらその破片を降らせてきた。頭が燃える!わあ、と驚いて、笑った。体ごと地鳴りのするような花火の大きな音を身に受けて、思う。私はこれからどうなるのかな。

いや、どうなるかっていうより、どうにかしなきゃな。



潜在意識までもぐってさがしてみつけたもの

瞬く間に夏休みは終わってすぐに学校。終わると、夏休みとが終わる前と同様に高校の近くに住む友達の家に集まって喋ったりしながら遊んでいた。たまにボウリングに出かけたりしたけど、その時は新学期直後だった目新しさもあって、夏休みはどうだった、みたいな話をしてた。

「そういえばさ。あの子、こないだテレビ出ててびっくりしたんだけど!」

海に一緒に行った子が、その時流行りのオーディション番組をみて、友達を発見したんだった。テレビに出てたのは、海に来なかったあの子だった。歌がめちゃくちゃ上手くてカラオケ行ったらついついみんなきいちゃうみたいな。歌手になりたかったのか。海に来なかったのは、実はオーディションがあったからなのではないか。同日だったよね、とか、そんな話になりながら、友達が「笑うんだけどー!!」と言った。私はなんとなく笑う気分になれなくて、「夢があることをバカにするな。」と言った。言ったあと少し恥ずかしかった。年齢的に夢とかより現実だよね、みたいに振る舞うのがよさそうに見えた。その中で踏み出したあの子は私たちよりよほどうわてだ。その一方で、本人には、あなたなら本当になれるなんて無責任な声をかけることもできないのに、私はどうしてそう言えたんだろう。多分、同じように夢に向かって行った時に笑われるなんて絶望的じゃない?という気持ちが潜在的にあったのだと思う。ということは、やりたいことがあったわけだ。潜在的に。

だけど、言語化してしまったら叶わないような気がした。


生活か夢か問題、答え合わせの時間

努力して努力して努力して上手くいかなかったらがっかりする。卒業して20歳になったら、成人式。親が片親だろうが、放り出されたら私、大人にならなきゃいけない。まずは、食べて暮らしていけるようにならないと。なのにどうして、夢なんかみれるだろうか。

夢は叶わないほど大きなものだから夢。
働くならばお給料がよくて、へえって言われるような会社がいいはず。それって本当えげつない勘違いだった。

誰も、ギター一本持って無一文でシンガーソングライターになれとか、会社辞めてラーメン屋になれと言ってない。

私の最適解としては、やりたいことが手元になくてもできる事とやりたい事の交差する点を見つければよかったのだった。社会人になると皆、大変そうに働いていて、やりたい事が出来るなんて贅沢な気がしていた。それでも努力する子はしていたし、たまたま恵まれている人はそういうポジショニングになった。人の勝手だ。これは私が社会人になってもまだつきまとってきた。たまに、職業欄が私の方をみて訴えかけてきた。お前、割といい給料もらってるけど、この先はどうするんだ。誰かのせいにするんじゃねえぞ、って。

ちらりと目があってしまった私はその年、私はボーナスでiMac を買って販売職を退職した。


夢は小さくても大きくてもいいので

わりと居心地の良かったCA4LAという帽子店を辞めた後、小さなIT企業に入社した。副店長だったからあとちょっとで店長さん、というところだったけど、それはどうでも良かった。むしろそうなる前に、心地よさから抜け出さなくてはいけなかった。その間、土日はグラフィックの小さな教室へ行ったりした。若さとは恐ろしくて、アホみたいに拙いものしか作れなかったくせに会社に行きながら面接をバンバン受けた。当然、下手で実務経験の無いデザイナーなんてどこも入社させてくれない。お祈りメールにも丁寧に返信した。そうしていると、某有名アーティストのプロモなんかを作ってるアニメーション製作会社から声がかかった。進捗管理なんかしていられない。私には時間が無い。スタートが遅い自覚があった。生意気にも、断った。そのうちに、現在の会社とご縁があって、しごかれながらなんとか形になってきた。会社が大きくなる事に加担する一人になりたいしなれたら嬉しいなって感じてきた。これって、夢というにはちっぽけなんだろうか。

夢って大きかったら、得ですか。

小さくてもいいんじゃないですか

あなたは海に行く? 行かない友達を、笑う?

後すこしのところで手を伸ばしますか。




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