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ミルクの甘い香り


京都も少しずつ気温が上がってきて、蒸しっとした空気が流れ込み始めている。
そんなジワジワ暑い休みの日。
母のお手伝いがあり、私は市内の方へ出かけた。

東山五条にある着物レンタルショップを目指す。
そこではお昼から着物の撮影が行われ、母の繋がりで
私がモデルとして撮影することになったのだ。

祇園四条に出てバス停に向かうと
ほとんど外国人!!ほぼ日本人はいなかった。
警備員のおじちゃんが大きな声で、バスの乗り降りを指示していて
「はーい!後ろからね〜!え?いや二条城には行かない行かない!」
ほんと賑やかだ。

そんな朝からお祭りムードの中、私が目指すバスが来た
清水寺行きだからか観光客でいっぱいだった。
そっか、もう11時だもんね。

なんとか座れて、みんな窓から流れる街並みを眺めている。
鴨川渡って、四条通を進むと八坂神社が見えて
確かにこれは楽しい。
そして最寄りの五条坂駅に到着。
やはりここもあちこち観光客で賑わっている。
なんか朝から賑やかでそわそわするなあ

そんな忙しない行き道に、私は少し小腹が空いていた。
撮影が11時半からだから…今日は遅いランチかな?
ん〜。多分耐えれない!
ちょうど清水坂を通るから何か食べ歩き系で軽く食べよう。

清水坂を登りながら周りを見渡す。
みたらし団子、いちご飴、ゆば、どれも美味しそう。
ふと、瓦屋根に白木の縁取りの建物に目がいった。
ドーナツだ。

そこには、ガラス窓越しから揚げたてのドーナツと
” loose kyoto ” と書かれた看板が脇にあった。
2年ほど前コロナ禍でなかなか行けなくて断念していたお店だった。
こんなところにあったんだ!と
その嬉しい偶然にお店の中へと入っていった。

入ってすぐにカウンターがあってそこで注文するようだ。
それぞれベンチが壁に沿って3つ並べられていて
奥にはドラム缶のようなテーブルとベンチ代わりに木箱が使われていた。
照明はほんのり光る具合で、ほとんど太陽の光で照らされている。
吹き抜け天井で、狭いスペースだけど
すっきりしていて落ち着く空間だ。

カウンターには大柄なお兄さんがいて目はとっても優しそう。
メニューを見ると、
プレーンドーナツ、トッピングにカスタード、抹茶クリーム、チョコレート。
うわあ。いいな。
私はクッキーとかバウムクーヘンだったり素朴なスイーツが大好きで
このシンプルなメニューにときめいた。
素朴なものほどお店の個性がよく出るからだ。
「プレーンドーナツ1つください!」
歩きながら食べれるように、カスタードは次回の楽しみに取っておくことにした。

大柄のお兄さんが揚げたてのドーナツにきび砂糖をふんだんにかけて渡してくれた。
温かくてほんのりミルクの甘い香りがした。
「ありがとうございます!」お兄さんは何も言わず微笑んでくれた。
お店を出て坂を登りながら、ウキウキした気分で、早速ひとくち。

あ〜〜〜。幸せだ。

口いっぱいに優しく広がるミルクの甘さ。
重くなく、ふんわりした口当たりにパクパク食べてしまう。
ほんとに軽やかで止まらなくて、もう一つ食べれそうと思っていたけれど
食べ終わった後はちょうど良い満足感。

小麦粉の香ばしい香りとミルクの甘さに包まれて
石畳の坂を登りながら、どこかなつかしい気持ちになった。

忙しない始まりだったけど、大好きなドーナツに心は満たされていた。
暑いけれど、撮影もがんばれそう。

さあ、行ってきます。










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