「メジャーリーグおよびマイナーリーグの野球選手における有鈎骨鉤骨折」
今回要約する論文は米国のMLB/MiLB(マイナーリーグ)の選手における有鈎骨鉤骨折の外科的処置と管理について調査したものです。主な項目として患者の人口統計、傷害のメカニズム、診断方法、手術手順、術後の合併症、および競技復帰までのタイムラインを分析しています。結果から言うと、折れた有鈎骨鉤の外科的切除は、合併症が少なく選手が比較的早く野球活動に復帰できる効果的な方法であることが判明しました。この論文の主要なポイントを簡単にまとめてみました。
研究デザインと対象集団:
2003年から2019年の間に有鈎骨鉤骨折の外科的切除を受けた145人のMLB/MiLBの選手がサンプルとして使用されました。
傷害のメカニズム:
この怪我の最も一般的な原因はバッティングであり(91.7%)、骨折は主に非利き手=グリップエンドを握る手で起きていました。
傷害のパターン:
慢性または亜急性の傷害(81.7%)が急性の傷害よりも一般的でした。急性の傷害の場合は骨折血腫があり、慢性の場合は癒着不能や線維組織がありました。
手術方法:
すべての手術は同一の外科医によって行われました。有鈎骨鉤の切除が行われ、術後のケアには痛みの管理とインドメタシンによる異所性骨化予防が含まれています。
術後の合併症:
軽度の合併症として術後の一時的な第4〜5指のしびれや、有鈎骨鉤切除後の豆状骨ー三角骨近辺に痛がありましたが、その全てがリハビリ中に解消されました。サンプルの一人に症状の軽い異所性骨化が発症しました。
回復と復帰:
選手は平均として術後4.6週間でバッティングプログラムを開始し、術後7.1週間で競技復帰しました。急性および慢性の傷害の発生パターン間で回復時間に有意な差はありませんでした。
診断方法:
診断は臨床検査およびX線、CTスキャン、MRIなどの画像技術を使用して確認されました。画像の選択は、最初のX線での骨折の明確さによって判断されました。
野球への影響:
この研究は野球選手におけるスイングの反復による有鈎骨鉤骨折のリスクの高さを強調しています。この研究結果は迅速、かつ効率的な競技復帰を実現するために外科的切除が効果的な治療法であることを強調しています。
研究の改善点:
惜しい点を挙げるなら、研究の期間中に一部の選手が医療施設にフォローアップに戻らなかったために軽微な合併症が過少報告された可能性がある事です。傷害のタイミング(シーズン中vsオフシーズン)もスポーツへの復帰タイムラインに影響を与える可能性があると言ってもいいでしょう。
結論:
MLB/MiLBにおいて外科的切除は選手の急性、および慢性の有鈎骨鉤骨折の治療に効果的で、合併症のリスクが低く、効率的な競技復帰を可能にすると言う事でした。
僕もMiLBでアスレチックトレーナーとして働いて7年目になりますが、有鈎骨骨折は自分の担当したチームだけでも2〜3人ほどいるので、決して珍しくない怪我の一つだと言えるのではないでしょうか。論文のリンクを貼っておくので、興味のある方はどうぞ。
論文URL:https://www.jhandsurg.org/article/S0363-5023(21)00170-2/fulltext
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