ただ600円払うだけなのに
マレーシアにて、出会った1人のミャンマー人
出会ったのは1週間前とかだが、今でも鮮明に彼との会話は覚えている。
一人旅をして、色んな人と話そう!って決めてドミトリーに泊まり、初めて仲良くなれた人だからこそ余計に。
多分、1度は旅してたら体験する人はいそう。そんな話。
まあいっぱい嘘つかれてたんだけどね、それは後ほど
ミャンマーを知りたくて
もともと当初の旅の予定は、
タイ⇒ミャンマー⇒バングラデシュ⇒ネパール⇒インド
というタイからインドまで陸路で行きたい!っていうなんとも無計画で、なんとも馬鹿みたいな計画だったなと。
そんな計画も、ミャンマーの内戦によって全て破壊されることになった。
色々調べて、話を聞くうちに分かったこと。
「行ったら殺されるかもしれない」
初めて感じた、行ったことない国への恐怖、それと同時に、今ミャンマーでなにが起こっているのか知りたくなった。
そんな中で出会った1人のミャンマー人。
何がなんでもミャンマーの情勢を聞きたかった。
そう何がなんでも。
数箇所の銃で打たれた傷
色々と話していくうちに、体には銃弾で撃たれた傷が数箇所あった。
銃すら見たことない自分にとって、 銃で撃たれるなんて知らない世界。
ちゃんとその傷も見せてくれた。すごく生々しい傷。
銃弾って何、、、、
打たれるって何、、、
それも何箇所も、、、
え、、、
お母さんが戦争で殺された、、、
妹が殺された、、、
そう話す彼の目はどこかつらそうだった。
そんな現実がミャンマーでは起きている。彼が何のために生きて、どこに幸せを感じるのか
全部知りたかった。そう全部。
いっぱい聞いてみた。家族のこと。どんな暮らしをしてるのかとか。
伝わらなかった。英語が通じなかった。
翻訳も使ってみた。字が読めなかった。
そっか、読み書きが出来ないのか。
じゃあ身振り、手振りで頑張って伝えてみよう、、
とにかく伝えたかった。聞きたかった。
やっぱり伝わらなかった。
それと同時にとんでもない違和感を覚えた。
その理由は職業を聞いた時。彼がそっと財布から見せた名刺。そこには。
「UNHCR:国連難民高等弁務官事務所」
って書いていた。
国連で働いてる人なん!!めちゃくちゃすごい人やん!!
そんな国連で働いている人が、読み書きができない。
英語が分からない。
あれ、おかしくね?
全てはお金のためだった
色々と分かってきた彼の素性。
国連で働いてるなんて嘘で、宿に泊まってるのも嘘。
なんならミャンマーっていうのも嘘っぽかった。宿の人いわく、バングラデシュ人らしい。
異変に気づいた時、会話をおえ、そっと別れを告げて宿の外に出た。
なのに宿から出ても、何故かついてきた。その時彼が俺に言ったセリフが忘れられない。
「Give me money」
全てが納得いった。日本人に話しかけたのも、色んな辛い話をしたのも、傷口を見せたのも、
全てはお金のため。
求めてきたお金は20リンギット(日本円で600円)、何故か騙された事が悔しくて、20リンギットを払えなかった。
しつこくついてきたけど、振りほどいて、カフェに入り11リンギットのコーヒーを飲みながら作業を始めた。
コーヒーの11リンギットは払えるのに、彼には20リンギットを払えなかった。
何故だろう、とにかく払いたくなかった。
正しさが分からない
そんな彼はまたその日の夜も現れた。そして、お金を求めてきた。
お金を求めたあと、彼は上の階へと消えていった。宿には泊まっていないので、宿の共用のトイレで寝てるのだろう。
トイレから寝息が聞こえてきた。多分路上で寝るよりかは100倍マシだろうしね。
その夜色々と考えた。今でも思い出す。
騙そうとしてきたのは事実。お金を求められたのも事実。
でも、体に銃で打たれた後があるのも事実。彼がお金を持ってないのも事実。
色んな事実がある。悪い一面もある。と同時に事実として彼は辛い環境を過ごしてきてる。
ただ、騙さず素直に助けて欲しいと言えばその20リンギットは彼にあげただろう。
たったの600円、、
男気とかで平気で奢るその値段は
その時自分にとって出したくないお金だった。
理由は分からない。
けど確実に言えるのは、出せたけど出したくなかった。
自分が、本当に知りたいと思った気持ち、やっと知ることが出来たという嬉しさ、そして何より、彼に同情した自分の気持ち
色んな気持ちを踏みにじられたからなのかな。
すごく悲しくなった。ちょっと悔しかった。
今彼は、マレーシアで生きてるのかな。
足を引きずってたし、大丈夫かな。
同じように誰かにお金、求めてないかな。
色んな感情がある。
この感情の言語化は難しい。
人の同情をかってまで、お金を貰わないと生きていけない、そんな彼。
生きるってなんだろうか。
お金ってないと生きていけないのか。
銃で打たれるってどんな環境なのだろうか。
日本じゃありえない世界。
いや、多分日本で生まれ育った僕達は、この世界を知らずに一生を終える、その可能性の方が高いだろう。
たったの600円。
ずっとこの600円が心の奥底で自分を複雑な気持ちにさせる。
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