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アラ還マダム、図書館司書資格取得しましたー幻の図書館長シリーズーその3

まず初めにお詫びいたします。
シリーズその1と2を公開し、3をほぼ書き終えていたところで、某スタートアップ(物流×IT)のバックオフィスに助っ人参戦したお陰で、超多忙となり公開まで6ケ月も温めることになってしまいました。ごめんなさい🙇

そのあいだに、そもそもこのシリーズを書く要因となった2021年9月から3か月間お世話になった日本最大の図書館関連企業(仮にTRCとします)の代表取締役が交代していました!?

新代表は元代表(返り咲き)ですが、公共図書館の現場を熟知した素敵な方で、私の最終面接官のひとりでもありました。

TRC退職と引き換えに最短6ケ月で図書館司書の資格を修得した八洲学園大学で、「優」を頂いたレポートの中から渾身のマイベスト3の最後の1つを公開します

科目名:図書館制度・経営論
指導教官:原田伸一朗先生

 科目修得試論題(共通テーマ)は「ホームライブラリーの現状と課題」です。
これを踏まえてレポートのタイトルは独自に付けていただいて結構です。字数は2,000字程度が目安です。 
・まず、自分の最もよく利用する身近な公共図書館を「ホームライブラリー」としてください。 
・次に、その図書館のウェブサイトや、資料、実地調査等を通して、その図書館の性格・特色を把握してください。施設、資源、サービス等の実情を実際に確認し、「改善すべき点はないか」という問題意識を持ってホームライブラリーを観察することがポイントです。
 ・自分なりに、ホームライブラリーのどこが問題なのか、改善が必要なのか、レポートに取り上げる題材・論点を絞ってください。
 ホームライブラリーが現在抱えている管理・運営上の具体的な問題・トピックを探してください。
 最近になって改善された点に着目しても良いですし、特に大きな問題点が見当たらない場合は、今後重点的に取り組むべき課題を探すのも結構です。
 図書館がそのサービス対象となる地域の特性・ニーズに応じた使命を果たしているかという観点で問題を発見する必要があります。 
・レポートに取り上げる問題・トピックが決まったら、その点について、自館の現状を詳しく調査します。 
    現在、図書館に勤務する受講者であれば、組織や管理面の問題に目を向けても結構です。
    また、比較材料として、他館の状況も調べるのも良いでしょう。そして、解決策を検討するのに参考となる文献・資料を探索します。

下記参考文献リストも参考に、文献調査も進めてください。
単に「こうしてほしい」という利用者側の要望という形ではなく、利用者を満足させるという経営的視点で解決策・改善案を講じてください。
どういう図書館を目指すのかという展望や、あるべき図書館像を踏まえていることが重要です。 

【新型コロナウイルスの影響で図書館が利用しにくい場合】
 新型コロナウイルスの影響で実地調査が難しい場合は、利用可能な材料の範囲で課題のテーマについて論じられていれば、十分合格となるよう配慮させていただきたいと思います。 なお、「新型コロナウイルスへのホームライプラリーの対応」そのものをテーマとしても結構です。
新型コロナウイルスの感染状況に応じて、ホームライブラリーがいつの時期にどのような対応をしたかを検証するというレポートでも結構です。 

【参考文献(第三弾)】
 ■図書館経営および評価全般について 
・柳与志夫『知識の経営と図書館』勁草書房、2009、図書館の現場8 
・『図書館の経営評価:パフォーマンス指標による新たな図書館評価の可能性』勉誠出版、2003、シリーズ・図書館情報学のフロンティア3
■具体的な課題について 
・田村俊作・小川俊彦編『公共図書館の論点整理』勁草書房、2008、図書館の現場7 
※「無料貸本屋」論、ビジネス支援サービス、課金、司書職制度、委託、BDS、自動貸出機の7つの論点を取り上げ、参考文献も紹介しています。
これらについて論じる場合は、ぜひ参考にしてください。 
■基本計画、特に施設・設備面に注目する場合は 
・小川俊彦『図書館を計画する』勁草書房、2010、図書館の現場9 
・植松貞夫ほか『よい図書館施設をつくる』日本図書館協会、2010、JLA図書館実践シリーズ13
・植松貞夫『建築から図書館をみる』勉誠出版、1999、図書館・情報メディア双書10 
■地域実践の報告として 
・常世田良『浦安図書館にできること:図書館アイデンティティ』勁草書房、2003、図書館の現場1 鈴木康之
・坪井賢一『浦安図書館を支える人びと:図書館のアイデンティティを求めて』日本図書館協会、2004 
・白根一夫編著『町立図書館をつくった!:島根県斐川町での実践から』増補版、青弓社、2008 
・渡部幹雄『図書館を遊ぶ:エンターテインメント空間を求めて』新評論、2003 

【テーマ】練馬区立南田中図書館の現状と課題について

1.はじめに

「ホームライブラリー」を選択するにあたり、2021年9月から11月に図書館スタッフの実務研修でお世話になった公共図書館を対象とすることとした。

実務研修中に、感じていたことを踏まえ、科目修得試験に臨みたいと考えている。


2.練馬区立南田中図書館の概要

練馬区立南田中図書館(以下、南田中図書館)は、2009年5月に開館した練馬区立図書館全12館で一番新しい図書館である。

西武池袋線の練馬高野台駅から徒歩10分程、石神井公園駅から徒歩15分程と、駅からは少し離れた閑静な住宅街に位置し、練馬区立南田中小学校の敷地内にあることが特徴で、その関係もあるためか、学校図書館スタッフと事務所スペースを共有している。

練馬区が建設前に近隣住民に行なった説明会資料によると、南田中図書館のキャッチフレーズは「ご近所図書館」である。

南田中図書館は2階建ての一面ガラス張りのモダンな外観で、2階フロアの半分は1階から吹き抜けのため、自然光がふんだんに入る設計である。

1階は一般書とCD、2階は児童書が置かれ、蔵書は約107,033点(2020年10月現在)であるが、週1回の新刊本と新譜CDの受入れと並行し、書籍の除籍とリサイクルも行っている。

練馬区では12の図書館それぞれにテーマを設けており、南田中図書館のテーマは「環境」であるため、環境関連の蔵書数は練馬区立図書館随一である。

3.アンケートからみる練馬区立南田中図書館の利用者の現状

南田中図書館の現状を読み解くにあたり、練馬区立図書館が全12館で2020年11月に実施し公開されている「練馬区立図書館利用者アンケート」の「南田中図書館集計結果」を元に、検証した。

(1)回答者の属性等について

南田中図書館の利用者の属性と利用頻度は、以下のとおり。

■南田中図書館利用者の年代
19歳以下:03.0%
20~29歳:03.6% 
30~39歳:06.6% 
40~49歳:17.4%
50~59歳:21.4% 
60~69歳:19.7% 
70歳以上:27.3% 
無 回 答  :01.0% 

■南田中図書館を利用する頻度
ほぼ毎日      :00.7%     
週に3~4回 :04.6%
週にに1~2回:36.5%
月に1~2回 :46.7%
月に1回未満    :09.5% 
無 回 答     :02.0%

(2)アンケート16項目の満足度結果

各評価項目の利用者満足度の「大変満足」と「満足」を加算した満足度の%割合を、「〇」「△」「×」の3段階に分けた上で、前後10%に「+」と「-」を付加した結果、次の評価となった。

①開館日について:92.4% →〇(+) 
②開館時間について:94.7% →〇(+)
③貸出点数について:93.1% →〇(+)
④予約点数について:83.3% →〇
⑤館内設備・バリアフリーについて :78.7% →〇(ー)
⑥設置機器について:71.7% →〇(ー)   
⑦利用者のマナーについて:80% →〇
⑧所蔵資料について:54.6% →△
⑨管理・保存状態について:78.7% →〇(ー)
⑩職員の接遇について:91.8% →〇(+)   
⑪職員の説明について:86.8% →〇
⑫利用案内および書架案内表示について:80.9% →〇
⑬ 図書館で実施する事業について:31.3%  →×(+)
⑭ 図書館で導入した機器の設置について:50.3% →△
⑮ 館内の展示について:50.7%  →△
⑯総合的な満足度について:93.7% →〇(+)

4.アンケート結果からの考察

(1)一番満足度の低い項目

「⑬ 図書館で実施する事業について」の満足度が31.3%と低く、唯一の評価「×」であった。

自由意見から「図書館で実施する事業」に関する内容を確認したところ、「本に予算を」と事業不要の意見3件、開催要望の事業9件が寄せられていた。

(2)改善案

自由意見の開催要望は、過去に開催した事業と同等の提案が殆どだったため、情報が利用者に正確に届いてないのではないかという印象を持った。

実習中に開催予定の事業の貼り紙やチラシを目にしたのは図書館内のみであったが、今回のアンケートで、利用する頻度は「月に1~2回」が46.7%と一番多かったことからも、館外での情報発信の必要性を感じた。

例えば、南田中図書館周辺の町内会や区の管理する掲示板にポスターを貼ることや駅前の商店街にチラシを置かせてもらえるような顔なじみのお店を館長自らが足を運んで作るなどといった地道な地域活動が実を結ぶのではないかと考える。

南田中図書館利用者は、40歳以上が85.7%を占める。これまでに開催された事業内容は、シニア世代のビジネスパーソンや年金生活者世代のニーズに対応したものだったのかについても、検証の余地があるのではないかと考える。

5.おわりに

文部科学省の調査によると、平成30年10月の公共図書館の登録者数は33,791,030人である。総務省発表の同時期の日本の人口は1億2,644万3千人であるため、公共図書館利用者の割合は27%で、国民の約73%は公共図書館を利用していないともいえる。
公共図書館が「住民の“知る権利”を平等に与えるために情報へアクセスできるところ」であるのなら、非利用者73%も利用したくなることを考える必要があるのではないか。 (2,175字)



【参考資料】
01.図書館のアクセシビリティ 「合理的配慮」の提供へ向けて (樹村房)(野口 武悟、植村 八潮 編著)2016年
02.これからの図書館: まちとひとが豊かになるしかけ(平凡社)(谷一 文子 著)2019年 
03:図書館雑誌 2021 VOL.115 №10:特集「令和3年度(第107回)全国図書館大会山梨大家への招待」(日本図書館協会)2021年
04.未来の図書館、はじめませんか?(青弓社)(岡本 真・森 旭彦 著)2014年 
05.公共図書館の論点整理 図書館の現場7(勁草書房)(田村 俊作・小川 俊彦 編)2008年 
06.図書館の自由とは何か―アメリカの事例と実践 単行本(教育史料出版会)(川崎 良孝 著)1996年
07.障害者と図書館 : 図書館奉仕の原点としての障害者サービス(ぶどう社)(図書館問題研究会編集)1981年
08.図書館力をつけよう―憩いの場を拡げ、学びを深めるために(日外アソシエーツ )(近江 哲史 著)2005年
09.図書館サービスの評価(丸善)(ランカスター(Lancaster, F. Wilfrid)著、中村 倫子、三輪 眞木子 共訳)1991年
10.29歳で図書館長になって(青弓社)(吉井 潤 著) 2015年
11.練馬区立図書館ビジョン ~これからの図書館サービスのあり方~
平成 25 年(2013 年)6月(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/keikaku/oshirase/toshokanbijon.files/zenbun.pdf
12.これからの図書館サービスのあり方について(答申)
平成 24 年 12 月 5 日(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/keikaku/oshirase/toshokanbijon.files/shiryouhen.pdf
13.図書館ビジョン>図書館ビジョン全文のダウンロード

練馬区立図書館ビジョン【これからの図書館サービスのあり方】(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/keikaku/oshirase/toshokanbijon.htm
14.令和2年11月実施 練馬区立図書館利用者 アンケート 南田中図書館集計結果(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.lib.nerima.tokyo.jp/pdf/monitor2021_13.pdf
15.練馬区立図書館利用者アンケート(令和2年11月)の結果をお知らせします(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.lib.nerima.tokyo.jp/plan02.html
16.図書館利用状況等 初回公開日:2017年4月28日 最終更新日:2021年10月20日(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/tokei/opendata/opendatasite/bunka/riyoujoukyou.html
17.令和2年12月11日(金)教育委員会事務局/教育振興部光が丘図書館(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/kaigi/kaigiroku/bunka/tosyokankoso/toshokankousou02.files/04_shiryou3-1.pdf
18.南田中図書館情報(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/shisetsu/bunka/lib/minamitanaka.html
https://calil.jp/library/104118/stamp#h1
19.書名:『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2021 -Afterコロナをみすえて-』
編集・著作: 植村八潮、野口武悟、長谷
川智信,電子出版制作・流通協議会(閲覧日:2022年01月11日)
https://aebs.or.jp/books10.html
20.2022年出版関連の動向予想
2022年1月10日 鷹野凌 コラム, 特集, 鷹野凌の publishing is wonderful(閲覧日:2022年01月11日)
https://hon.jp/news/1.0/0/32010
21.日本図書館情報学会誌>公立図書館を対象とした指定管理者の選定における競争的環境(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslis/66/1/66_19/_article/-char/ja/
22.平成21年度文部科学省委託 図書館・博物館における地域の知の拠点推進事業「図書館・博物館等への指定管理者制度導入に関する調査研究報告書」(平成22年3月)(株式会社三菱総合研究所)(閲覧日:2022年01月11日)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2010/06/29/1294217_01.pdf
23.日本図書館協会の取組み(閲覧日:2022年01月11日)
http://www.jla.or.jp/library/tabid/311/Default.aspx
24.図書館における指定管理者制度の導入等の調査について 2019(報告)(日本図書館協会図書館政策企画委員会)(2020年3月16日)(閲覧日:2022年01月11日)
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/shiteikanri2019.pdf
25.「公立図書館の指定管理者制度について―2016」 「日本図書館協会は、図書館への指定管理者制度の導入はなじまないと考えます。」 (公益社団法人 日本図書館協会 図書館政策企画委員会 作成)(2017年3月)(閲覧日:2022年01月11日)
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/%E5%85%AC%E7%AB%8B%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E3%81%AE%E6%8C%87%E5%AE%9A%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%80%85%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%8D%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%96%EF%BC%88%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%89.pdf
26.2012年度JLA中堅職員ステップアップ研修(1)領域2 区分A③「図書館運営の評価と指標」(2012年10月16日)(石原眞理(神奈川県立図書館))(閲覧日:2022年02月08日)
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/%E7%A0%94%E4%BF%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/resume2012-1/2012-1-5ishihara.pdf
27.練馬区立図書館の現状について(練馬区教育委員会事務局教育振興部光が丘図書館)令和2年10月8日(木)(閲覧日:2022年02月08日)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/kaigi/kaigiroku/bunka/tosyokankoso/toshokankousou.files/shiryou4.pdf





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