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Pulp Picture Soundtrack

フイルム写真を撮る。現像に出して、仕上がりを確認する。そしたらなぜだろう。写真の中に自分が想定し得ない、別の物語が埋め込まれていた。それは突然私の頭の中から流れ出した。わたしはそれを書き留めずにはいられなかった。

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写真は特定された「場所」「時間」という情報が切り取られて埋め込まれているはずである。しかしどうしても私には、その中に流れる別の物語が見えてしまう。確かにそれは以前に自分で見た景色である。ファインダーを覗き、露出を決めて撮った紛れもない現実世界の一部分だ。でもそこに写っているものはーーそれを見返しているときにはーーもうここにはない現実のように感じられる。

過去の一瞬を切り取ったかのように見える写真にうつる世界は、そこに凍結されるのではなく、現実の世界と別の物語を描き出す。もう一度同じものを撮影しようとしても、もうその場所はこの現実世界には存在しない。それは別の時空軸で私たちの知ることのできない場所に存在している。

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写真が語り出す起こらなかった現実、あるいは写真の向こう側の新しい空間での話。それを「Pulp Picture Soundtrack」と名付ける。

このテーマに属するあらゆる話は、作者の撮影した写真を元にして創られたフィクションである。登場する街、人物、会話や出来事は全て作者の創作であり、特定の場所を指し示すものではない。全ては一枚の写真が語り出した、一言ではいい表せない発露のサウンドトラックである。

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この主題は radiohead の" motion picture soundtrack "と Quentin Tarantino の "Pulp Fiction " から拝借した。全てに意味があり、また全てに意味はない。あらゆることは繋がっていて、またあらゆることは分断され切り刻まれる。人生とは、失うと同時に手に入れる何かなのだ。

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