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青い車

青い車に乗っています。

新しい車を何色にしようか悩んでいた13年前、幼稚園児だった長女が「青がいい」と言ったからです。

それに従ったのは正解でした。車に色がある、それだけで日々の生活が彩りのあるものになりました。駐車場で見つけやすいですし、愛着も湧きます。目立つので、恥ずかしい運転をしないように心がけるようにもなります。しいて欠点をあげれば、スピッツの「青い車」を「ぼくの青い車で海に行こう♪」と歌詞を間違えて歌ってしまうことくらいです。

次も青か赤か黄色か、いずれにしても色のある車を選ぶでしょう。

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その青い車、走行距離がもうすぐ26万キロになります。

ドライブが趣味というわけではありません。距離が伸びているのは、こどもたちが車ででかけたがるせいです。往復160kmの海岸や往復220kmの大型書店は散歩気分。往復600kmの喜多方あたりも、ちょっとごはんを食べにいく感覚です。

でかけるときは、だいたい長女か次女どちらかとふたりです。長女は神社やお寺、次女は海や山を好みます。とくに次女とは「一緒に出かけることが多い女子高生と父親ランキング」があれば、かなり上位に入れるのではないかと思います。

もし車の色が白やグレーだったら、これほど頻繁にでかけなかったかもしれません。青は背中を押してくれる色なのです。

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青い車にはカーナビがありません。

そもそも、目的地を決めずに出かけることが多いですし、もし目的地が決まっていたとしても、最適なルートを教えられたりしたら台無しです。想定外の道での想定外の出会いを求めて車を走らせているのですから。なにより、わたしも娘もだれかに指図されることが嫌いなのです。自分の進む道くらい自分で決めます。

そのおかげで「道に迷わなければ見ることのなかった風景」にたくさん出会うことができました。そのひとつひとつは偶然の神様からの贈り物です。行き止まりで途方に暮れたり、同じところをまわっていたりということもありますが、霧の夜に山の中を彷徨って、いきなり満点の星空の下に出たりもします。

青い車は、たまに奇跡のような景色を見せてくれる魔法の乗り物です。

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トシをとってきた今も青い車は快調です。

走行距離が10万キロに近づいてきたとき、なんとなく「よし、30万キロまで乗ろう」と思いました。そう決めた途端、老体だと思っていた車のことをまだまだ若いと感じるようになりました。実際、20万キロまでは定期的に交換すべきもの(オイルなど)を変えておけばなんのトラブルもなく乗れました。

とは言え、最近はメンテナンスに少しずつお金がかかるようになってきました。遠くない将来、「長い目で見たら新車を買うのとコストが変わらない」時期が来るかもしれません。

それでもしばらくは青い車に乗り続けると思います。新しい車に乗る経験はお金を払えばできますが、車と愛を育み、その変化を体感することは、1台の車と長い時間を共にした人だけの特別な経験なのですから。

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「科学」と「写真」を中心にいろんなことを考えています。