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神の宿る2本の40mm:江之浦測候所余話

24mm, 50mm, 135mm。
主にこの3つの焦点距離で写真を撮っていますが、たまに40mmを使うことがあります。それは「できるだけカメラを軽くしたい時」か「気合いを入れて最高のレンズを使う時」です。

軽さを求めて使うのはキヤノンのEF40/2.8です。
たったの130g。最高です。

一方、気合いで使うのはシグマの40/1.4 Art
1295g。EF40/2.8の10倍。
「1.3kgの40mm?バカじゃないの?!」と思いながら、発売直後に買いました。

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EF40/2.8は6枚のレンズで構成されています。
構成枚数が少ないレンズほど尊い(わたしはそう考えています)という基準で見れば、キヤノンで最高のレンズのひとつです。実際、明快かつ生々しい写り。これが一万数千円で買えるなんてお値打ちです。また、このレンズの最大の特徴は周辺減光で、ある程度絞ってもガンガン落ちます。過度にドラマチックになってしまうこともありますが、悪くありません。素敵な個性です。

力強くて鮮度の良い色がグイグイくる感じがEF40/2.8の持ち味です。

レンズには個性があります。
だから以前は「描写が最高のレンズはどれ?」と聞かれても、「それぞれの良さがあるからなあ…」と言葉を濁していました。でも、今は違います。文句のない最高のレンズを知ってしまったからです。

最高のレンズ、それが40/1.4 Art。
たかが40mmの単焦点に16枚のレンズが使われています。狂ってます。写りはさらにCrazyです。シグマのArtは50/1.4をずっと使っていますが、それとは別人格。どこまでも優等生でニュートラルな50/1.4に対して、40/1.4は超高性能ながらすごい表現力です。繊細かつ奥深い描写で、撮るものすべてを映画のワンシーンにしてしまいます。トップの数学者でありながら圧倒的芸術家、そんなレンズ。こんな最強レンズが十数万円で買えてしまうなんて、お買い得すぎます。いっそ50万円にすれば(わたしは買えませんが)もっと評価されるのかもしれません。

40/1.4 Artは何を撮ってもレンズが勝手に絵にしてくれます。

なんにしても、標準域レンズの最軽量と最重量が両方とも40mmで、どちらの写りも魅力的ということろが面白いです。

2本とも神が宿ったレンズです。

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先日、江之浦測候所に行く時、お手軽にEF40/2.8でいこうと思っていました。でも「それはわたしが使う!」と娘。仕方ないので、気合いを入れて40/1.4 Artでいくことにしました。

ふたりの肩に、値段も重さも10倍違う40mm。
写りも10倍違う?


江之浦測候所の記事の写真には40/1.4 Artで撮ったものとEF40/2.8によるものが混ざっています。でも、それを区別できるでしょうか。


前にも書いた通り、レンズによる描写の違いなんてほとんど幻想なのです。


EOS 6D, 40/1.4 Art
EOS 6D2, EF40/2.8


とは言ったものの、シグマの40/1.4 Artの写りは特別です。シャープさと繊細さ。情緒のある色。美点はいろいろありますが、一番の特徴はボケがつつましい(大きくはボケない)ことだと思います。f1.4で撮っても、ぱっと見はf2.8くらいで撮ったように見えます。破綻することなくゆるやかに輪郭が溶けていく感じは、他に似たレンズが思い浮かびません。一般には大きくボケるレンズの方が好まれるのかもしれませんが、その対極にあるようなレンズです。

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