御苑の桜

ぼくの片割れ。

僕は、ずっと、生まれてから孤独だった。

どこにいてもなじめない。

僕のことを分かってくれる人など

どこにもいない。

誰も僕のことなど、関心がない。


でも、そんな風に思いながら暮らしてもいけないから

傷つかないようにってこころを閉ざして

なんでもないフリをして生きてきた。

絶望にフタをして、

夢というキラキラしたものを飾り付けて

それさえ観ていれば、人生は悪くない。

すべて上手くいっているように振舞っていた。

そう、それで上手くいっていたんだ。


君と逢うまでは。


「すべて上手くいってる」

そう思っていたのに


君と出会ってしまった。

唐突だった。



体中が熱を帯びて、

全身の細胞が騒ぎ出す。


ああ。

昼も夜も

ずっと君を見ていたい。

見つめていたい。

ずっと側にいたい。

片時も離れていたくない。

乾いた心に水が注がれるように

僕は君を求めた。


君が誰で。どんな人なのか、

知りたくなった。


ようやく見つけたんだ。

長い長い旅路の果てで。

愛おしい。愛おしい人。


”君”は失った僕の片割れ。

僕は君に愛されるだろうか?


二度と失いたくない。

このまま、君を僕の胸にしまいこみたい。


でも、知れば知るほど不安になった。


ずっとフタをしていたものがあふれ出した。

君はいつでも真実を突きつける。


君が僕を愛してくれてるのを知ったとき、

天にも昇るように嬉しかった。

嬉しくて嬉しくて、抱きしめようと思った。


でも、僕の周りにくっついてしまった棘が

君にぶつかるし、

君についた棘で僕も傷つくし、

上手くくっつけない。


もどかして、愛おしくて、狂おしい。

赤い涙がこぼれた。


傷ついた心が知らぬ間に

棘になっていたから、

こんなにも愛おしいのに傷つけてしまう。


僕は落ち込んだ。


君に逢えば、がっかりさせてしまうかもしれない。

僕に失望する君を見るのは

あまりにも残酷で

生きた心地がしなかった。



だからせめて、遠くから

君の余韻を探す。


どこにいても、君に似た人を探しながら。


でも、君に似た人は君ではなくて、

何を手に入れても、そこに僕の欲しいものはない。



お願いだから、その愛で僕の棘を溶かして。


そうしたら、僕は君に会いに行ける。

僕が君を傷つけずにすむのなら会いに行ける。


だから、お願い。

愛して欲しいんだ。

僕の愛が君の棘を溶かせるように。


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