自分の生きる価値について考えた日。
ある日、わたしは悩んでいた。
………と。
わたしがこんな答えもなさそうなテーマに苛まれることになったのは、とある男性の言葉が引き金でした。
そう、それはとある平日のランチタイム。
ランチというには遅い時間だったのですが、
とにかくわたしは空腹を満たし、
食後は1人でゆっくり本を読みたかったので、
会社近くのサンマルクカフェへ入ることにしました。
精神的に引きこもりの気があるわたしは、外に出る時はイヤホンが必需品。
外界からの情報をシャットダウンし、自分だけの世界に浸るのです。
ところはこの日はイヤホンを会社に忘れてきてしまい……。
イヤホンなしで1人で家の外にいることが久しぶりすぎて、ものすごくそわそわしていました。
しかし不本意とはいえイヤホンを外してみると、いつもはシャットダウンしている分、アンテナが敏感になっているのか、次々と情報が飛び込んでくる。
(左隣にいたおじさん、エクセルが不得意なのか、あきらかに思い通りに操作できずに舌打ちを連発していた。おもしろいくらいにキーボードをバチバチと強打。結構怖かったので、左半身はなるべく気配を消すように心がけた)
左隣のおじさんのインパクトもなかなかだったんですが、それよりもわたしを震撼させたのは、斜め前に座っていたカップル……(的な男女ふたり)。
会話の内容までは耳に入ってはこなかったのですが、ふと気になってそのふたりの方に目を向けてみると、
女性が少し甘えるような、媚びるような声で、向かいの男性に「ねえ~~〜」と問いかけていました。
それに対し、男性は少しけだるそう。
とまあ、そんな光景はよくあると思いますし、普段は他人の会話を盗み聞きしようななんて発想は微塵も抱かないのですが……。
男性が発した一言が、急にその言葉だけボリュームアップしたのか思うほど、ドギューーーーーンと私の鼓膜にハッキリと突き刺さったのです。
「それ相応の生き方をしてほしいんだよね」
それはまるで、脳みそに銃弾を撃ち込まれたかのような衝撃でした。
なぜこの言葉だけが急にクリアに聞こえてしまったのでしょう……。
いやそれにしても。
それにしても、この男のひと、
なんて恐ろしいこと言うのでしょう……!!!
それ相応の生き方って、何????????????????????
よくわかりませんが、とりあえず震え上がりました……。
それ相応の………生き……方……????????
とは…………?????(ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる)
というか、この男のひと、そんなことを他人に要求できるような立場なのでしょうか……? え、それって、どんな人……?
少しの憤りを感じつつ、
このカップル(とおぼしき男女)が、どんな会話の流れで「それ相応の生き方」という、わたしからしたら脳天ぶち抜かれるくらい殺傷能力の高い言葉を交わしていたのかが気になってきました。
わたしは震える自分の心を鎮めるためにも、
冷静に、このキラーワードの前後の文脈を考えてみることにしたのです。
沈まれ、わたしの怯える心………!!
ーヒントー
●例の言葉が発せられる直前、女性は自分のスマホの画面を男性に見せていた。
男性のトーンは、怒っているわけではなく、若干バカにしたようなトーンであった。
(笑)的なね。
●男性の発言後、女性はスマホを引っ込めながら「え~~?」と口をとがらせた。
しかしその表情は、どこか勝ち誇ったような顔をしていた。ようにも見えた。
……以上のヒントをもとに、「それ相応の生き方をしてほしいんだよね」という言葉が必要になってくる文脈を想定してみます。
ちなみに、この言葉が発せられた前後で、このカップルの雰囲気は特別変わってはいませんでした。
ということは、おそらく「それ相応の生き方をしてほしい相手」は、お互いに関してではなく、誰か別の人物なのでしょう。
そしてそれは、女性だと思うのです。
でなければ、目の前の男性にこんな発言(「それ相応の生き方を~~」)をされて、「え〜〜〜?(ニヤッ)」なんて、他人を見下す悪いメスの顔にはならないのではないかと。
ではその「誰か」とは?
女性がスマホでその「誰か(たぶん女)」の情報(LINEのトーク画面とか?)を提供し、
男性はそれに対して「それ相応の生き方になっていない」と査定ができるくその「誰か(たぶん女)」の普段の様子を知っている。
共通の知人であることは間違いなく、おそらくそれは、会社の同僚ではないでしょうか。
そもそもこのふたり、平日の15時にスーツ姿でサンマルクでお茶しているのです。
おそらくこのカップル(じゃないかもだけど)も同僚で、営業の外回り中とかかな?と想像できます。
つまり。
二人には一緒になって見下している女性の同僚がいるという仮説。
この場合、「それ相応の生き方」の「それ」に当たる言葉を考えてみると……。
シンプルに、一番しっくりくる単語は、「ブス」かなと思いました。
「美人」だと、いまいち文脈に合わない感じ。
実際、回想シーンに当てはめてみると……。
<例>①
「美人なら、それ相応の生き方をしてほしいんだよね」
……なんだか、見下しているどころか、むしろ励ましているように聞こえます。
たとえば「美人なのに、自信がなくて自虐的」とか。
だから「もっと堂々と、美人にふさわしい生き方をしてほしい」的な。
これだと女性の「え〜〜〜?(ニヤリ)」に繋がらない……。
では「ブス」に置き換えてみます。
<例>②
「ブスなら、それ相応の生き方をしてほしいんだよね」
……どうでしょう。悲しいことに、流れがしっくりくる気がします!
いや、しっくりきたって、なんの喜びも沸かないんですけど。
むしろフツフツと湧いてくるのは、世の中の評価に対する理不尽さ。
仮にもし本当に、この会話に当てはまる「それ」が「ブス」だとしたら、「ブス」というだけで、他人のカフェタイムに笑いのネタにされるのでしょう?
そんなの……つらい。つらすぎる。
生きてるだけなのに、つらい。
(※このカップルが本当に「ブス」に対して見下していたのかは定かではないですし、わたしのひどい被害妄想かもしれませんが、
最近、男性の「ブスはブスらしく生きろ」という意見に触れることがたびたびありまして……。
ちょっと、世の中の外見に関する評価に対して、トラウマ気味なんです……。)
ああああああ、どうしよう。
わたしも、こんな風に、誰かの笑いのネタにされていることがあるのかもしれない……!
わたしの……生きる価値とは……???
そんなの、わからない。
誰か、わたしをこの迷宮から救ってほしい……!!!!
手が、震える。
でもその時、自分の手に持っていた本をふと見ると。
精神の迷宮で失っていた冷静さを、意外にもあっさりと取り戻すことができたのです。
ちなみに、わたしがその時読んでいた本は、
会社の同僚から借りた
AV男優しみけんさんの『光輝くクズでありたい』でした。
※AV業界の裏側や、AV男優になるために必要なことなどが書かれている本です。
わたしはスッと本を閉じ、前を向きました。
世の中には、しみけんさんのようなフェチな男性もいるわけで、
「美女」だけに価値があるわけじゃない。
そう、思えました。
どんな人間だって、他人に「それ相応の生き方」なんて強要されるわけがないし、自由に生きて、いいはず。
いや、ていうか、
もう、どうでもいいや。
仕事の昼休みにこんなゲスい本読みながら、生きる価値とか考えていた自分が、滑稽に思えてきました。
エロとかゲスな話の、人をポジティブにさせる力って、ほんとすごいですね!!
おわり。
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