おなかの子はおんなの子。
名前はもう決めてある。
りんこ。
主人と上賀茂神社に戌の日参りに行ったとき、正座して頭を下げていると、その上から鈴を鳴らされた。
シャンシャン
シャンシャン。
その音がどうにも心地よくて、
ずっとこころに残っていて。
母と22週目の検診に行った。運も意思も強い母。いっしょに病院に行けない父から「お前だけでもいっしょに行ってあげたら」て勧められたのに、
「30過ぎの娘の妊娠になんで母親が!」と言って、「掃除しておくからね」と手を振られた。
混み合う待合室で一時間が過ぎた。「今からそっちに行きます。終わったら教えて」と母からのメッセージ。どゆこと?「来たら?二階で待ってるよ」と返信。
5分後に母到着。その5分後にわたしの番号が呼ばれる。やっぱりこの人は運がいい。
「はい、里帰り出産ですねー」と優しそうな先生。おなかの子は順調。いついってもそう言われる。「性別は?もう聞かれました?」「いえ、まだ…」と小声で答える。どっちだろう。どっちだっていいのだけど。
「うーん、そうですねー、見えないから女の子ですね」「あ、はぁ」聞きたかったことなのに、こんなにあっさりだとうすいリアクションしかできなかった。
会計を待つ間、「女の子でよかったよ。お母さん、安心した。育てやすいよ。やっぱね、どっちかひとりって言われたら女の子だよ」たたみかけるような言葉。
その言葉たちをひとつひとつ心の中でかみくだくのには、時間はかからなかった。
そうかもしれない。長男の嫁だから、1人しか産まないかもしれないから、男の子が欲しそうだから、と気持ちを抑えてきたけれど、やっぱりわたし、女の子がほしい。
だって、かわいいもん。洋服もかわいい。しぐさもかわいい。なにより、わたしが女だから。大人になってもこうやって話し相手になってくれる。そう思ったら気が抜けて、朝まで10時間寝続けた。
鈴の音が鳴る。りんりん、りんりん。
りんちゃん。いい名前。もう、母と勝手にそう呼んでいる。主人にはまだ話してない。女って、こーゆーときの団結力ハンパないよね。
あ、蹴った。
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おべんと、とかとか。
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