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くだらないアイデアはなぜ人を動かすのか? ぷっちょあーん4Dゴーグル | 広告デコン

皆さんはこの近未来デバイスをご存知でしょうか。

VR映像の橋本環奈さんが「ぷっちょ」を「あーん」するその動作に合わせて、ロボットアームがシンクロ。ぷっちょが口もとに運ばれ、甘美な青春体験が味わえます。
                      ープレスリリース記事より

実はこれ、4K映像で、近づいても指先まで見える3D近接撮影を実施し、立体音響である。さらには「あーん」を焦らしてくれるフェイント機能も搭載。世界初にして、既に他の追随を許さない作り込みです。

この企画は、結果としてプロダクトムービー再生数計1000万回/週などの高い広告効果を記録し、デジタルの広告賞であるコードアワード 2018を受賞するという華々しい成果を残しました。


こんにちは。広告プランナーのきんちゃんです。

自分が働く広告業界には、”デコン”というものがあります。

広告プランニングの練習によく用いられる“Deconstruction(脱構築)”こと“デコン”世に出た広告施策から、その裏にある施策の目的や戦略を逆算していくことを指します。
詳しく知りたい方は「デコンストラクション 広告」や「クリエイティブブリーフ」で検索していただければ。

この面白くて馬鹿らしい企画は、一体どうして成功したのでしょう。なんだかこういう企画って、ロジカルに分解されることが少ないイメージがあります。

なので今回は、面白系の企画を真剣にデコンしてみようと思います。


またデコンに際し、外資系代理店のストラテジックプランナーである名古塁さんが使用していたフォーマットを参考にさせて頂きました。

目次
(1)目的
(2)インサイトとターゲット
(3)施策内容
(4)おわりに

(1)目的

皆さんは、ぷっちょをどういうときに買いますか?

というより、意識してぷっちょを買ったことってありますか?「何となく、ソフトキャンディ系のお菓子が食べたいときにそこにあったから」が多いのではないでしょうか。

一般論としてこの手の商品は、第一想起(その商品が属するジャンルを考えたときに、一番に思いつくこと)が大切だとされています。

もちろん、人気コンテンツとコラボしたり、商品に魅力的なオマケを付けて、直接的に売りにつなげる企画はあります。

とはいえ今回のゴーグルの応募条件は、フォロー&リツイートです。ぷっちょの購入が条件ではないところから、今回は販促企画というより露出量や顧客接点の拡大を目的とした企画に感じますね。

(2)インサイトとターゲット

今回のメインパートです。なぜこの企画が拡散されたのか。もはや企画が良すぎるので、直感でうまく行きそうと感じてしまう企画なのですが。笑

プランニングの筋トレのために、あえて言語化しましょう。今回の拡散には、下記の3つの成功条件があったと考えています。

(a.) 感動を作る

人は、「自分では気づかなかったけれど、言われてみれば納得できること」を目の当たりにすると、感情の落差で心が大きく動きます。

こちらは、クリエイターの有村泰志さんの作品です。見たときに、「なるほど。」と思う方は多いのではないでしょうか。

広告業界では「いい企画には、”発見”がある。」と言われています。人を動かすとされるインサイトも、「潜在的な欲求のスイッチ」や「言われてみれば確かに。となるもの」と言った表現をされることがあります。

この仕事に携わっていて気づきましたが、”発見”は多くの人を動かすことに共通する要素の一つではないかと感じています。

所謂、「この発想はなかった」「発想の勝利」といわれる物たちもこの要素を含んでいる気がしますね。

今回の企画も拡散の前提として、「橋本環奈に『あーん』してもらうという夢物語のような事も、VRとロボットアームさえあれば実現できる。」という「確かに。」な発見が仕込まれていたように感じます。

(b.) くだらない=わかりやすい

映画を見て感動した後、誰かにその映画の話をしたくなるように、人は心を動かされると誰かと話して感動を共有したくなります。

けれど、もしその映画が「アベンジャーズ/エンドゲーム」で、周りがマーベル作品を一作も見たことない人だらけだったら、ちょっと言いにくいですよね。

その点、ぷっちょあーん4Dゴーグルには、面倒な前説は不要です。

「くだらないこと」は、「わかりやすいこと」でもあることが多く、人に言いやすいのです。

ちなみに「技術の無駄遣い」や「才能の無駄遣い」で検索すると、類例が出てきます。

(c.) ツッコミの余白を作る

誰かにゴーグルのことを言いたい気持ちになって、さらに言える状況までできれば、最後の一押しです。企画にツッコミどころを用意して、きっかけを作ります。

言いたいことに触れられていないと、人はほっとけなくなってしまいます。

このツッコミどころが様々な角度から仕掛けてあるのはもはや流石の一言ですね。


以上、(a.)+(b.)+(c.)より

人はくだらないことで心を動かされると、誰かに言いたくなる。あとはきっかけさえあれば、言ってしまう。


最後に拡散の軸となったターゲットですが、「くだらないけどユニークなジョークが好きで、ついリツイートしちゃうTwitter利用者」というところですかね。

面白い情報好きが集まるガジェット通信で記事があがっていますね。

(3)施策内容

残りはそのままなので、特に補足は不要ですね。

(4)おわりに

広告デコン、noteにあげたのは初めてなのですがいかがだったでしょうか。プランニングの筋トレになるので、今後もデコンは定期的に上げていこうと考えています。興味があれば是非覗いていってください。


ちなみに公式ツイートと動画は残念ながら既に削除されていますが、こちらのまとめには残っているので、是非動画も御覧ください。

どうでしょう。何だかこの動画を誰かに言いたくなってきますよね。笑




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