70.不幸のなり方

不幸になりたいあなたへ
私が今まで生きてきた人生経験から、最も効率的で完璧な不幸のなり方を教えます。これらの方法を実践することで、あなたは確実に不幸になることができるでしょう。

1.身体的に不健康になること
病は気からと言いますが、精神的な好調が肉体の好調をもたらすように、肉体の不調は精神の不調をもたらします。
特に睡眠は大事です。なるべく睡眠時間は短く、かつバラバラな時間にとるようにしましょう。生活リズムをなるべく崩すことが肝心です。眠る前は意識を失う限界まで青白く強い光を浴び続け、なるべく短い時間で目覚め、目覚めた後は真っ暗な空間に居ることで生活リズムを崩す事が出来るでしょう。
睡眠の次に食事が大切です。もっとも手軽に不健康になるには、栄養失調がおすすめです。なるべく何も食べずに過ごし、どうしても空腹に耐えられない時は、水や0キロカロリーのゼリーなど、栄養を含まないものでお腹を満たしましょう。
お酒やタバコなど、依存性が高く法律で制限がかけられているものもおすすめです。なるべく強いものを、短時間に大量に摂取すると良いでしょう。

2.精神的に不健康になること
たとえ身体が病に侵されていようとも、精神が前を向いている人のことを不幸と言えるでしょうか。答えは否です。心身ともに不健康でこその不幸と言えるでしょう。
では精神的に不健康になるにはどうしたらよいでしょうか。最も良いのは「自分には価値が無い」と強く思い込むことです。〇〇がそう言っていたから、など理由が他人に由来していると、論理的に覆す事が出来ないのでさらに思い込みを強固にすることができます。
自分には全く価値が無いと思い込むことが難しい場合は、「こうである自分にしか価値が無い」と思い込むのも良いでしょう。能力、美しさ、資産、立場……他人と自分をよく比較して、他人に勝ち、他人に認められている状態の自分にこそ価値があると考えましょう。インターネットが発達した現代において、比較対象は全世界の人類です。あなたが世界一の何者かでなければいつか誰かに負けます。こうして多少手間はかかりますが、「自分には価値が無い」と思えるようになります。

3.その他避けるべき事柄
1,2をクリアし、心身共に不健康となれたあなたはかなり高い確率で不幸であると言えるでしょう。その上で不幸であり続けるために避けるべき事柄について書き添えます。

他人と関わることは避けましょう。誰かとコミュニケーションを取ることは、例え軽い雑談程度であっても、幸せを感じる可能性があります。ただし、相手に憎まれるような行動を一方的に行うことは、相手からの報復や集団からの孤立が期待できる為、積極的に行いましょう。

自分の世話を放棄しましょう。掃除、入浴、歯磨きはしない方が良いです。不衛生であることで効率良く心身の健康を損なう事が出来、自分の世話を放棄することで自己肯定感を損ない、また悪臭や不潔な見た目によって他人を遠ざける事ができます。

成長を感じることは避けましょう。仕事やスポーツ、勉強など、何か特定の行動を繰り返し行うことで以前よりも素早く行動できたり、高いレベルで物事を行う事が出来たりするようになります。達成感や未来への明るい予測は幸せに繋がりやすいため、どんな事でも成長を感じた際は、それに関わることを辞めましょう。

娯楽を避けましょう。スマホ、テレビ、映画、音楽、本、マンガ、ゲームetc……。娯楽に触れ、笑ったり感動したりすることは幸せに繋がるおそれがあるため避けましょう。もし娯楽に触れるのであればなるべく感情を動かされないただの刺激に近いものを選びましょう。ただし、怒りを感じることは思考を狭め、感情を鈍らせることに繋がるため、怒りを感じるコンテンツには積極的に触れましょう。

不幸になりたいあなたへ
不幸とは寒空の下を薄着で暖を求めてさまよい歩く事ではなく、自分で自分を傷つけながら消えてしまいたいと望む事です。反対に言えば、どんな環境にあろうと不幸になることは可能です。1〜3に挙げた事柄を良く実践することで、不幸を効率良く実現する事が出来るでしょう。
あなたの不幸ライフの一助となれれば不幸です。


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