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慶應大学病院の水素療法について

最近、慶應大学病院で行われた水素療法について記載します。
その他にもいろいろな研究がなされているようで、予防や健康維持にも役立つことが期待が出来そうです。


◎慶應大学は、水素吸入療法を用いることで、院外心停止患者の救命および予後の改善に有効な結果が認められたことを発表しました .

この臨床試験では、病院外で心停止になり、心肺蘇生で心臓の拍動は回復したものの意識が回復しない状態で**2%水素添加酸素吸入(水素吸入療法)**を行うと、死亡率が下がり、意識が回復して後遺症を残さずに社会復帰する可能性を高めることが示されました。この治療法は、多くの患者を救命できる画期的な方法と考えられています .

水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果-全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告-

東京歯科大学の鈴木昌教授(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)と慶應義塾大学医学部救急医学教室の本間康一郎専任講師、同内科学教室(循環器)の佐野元昭准教授らは、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート水素ガス治療開発センターの活動のなかで、国内15施設が参加した多施設共同二重盲検無作為化比較試験を行い、病院外で心停止になり心肺蘇生で心臓の拍動は回復したものの意識が回復しない状態で2%水素添加酸素吸入(水素吸入療法)を行うと、死亡率が下がり、意識が回復して後遺症を残さずに社会復帰する可能性を高めることを示しました。


心臓のトラブルなどで突然、心停止に陥った場合、ただちに心肺蘇生を行えば心臓の拍動が回復して救命されることは少なくありません。しかし、脳をはじめとした全身の臓器は心臓が停止して血液が巡らなかったために、大きなダメージを受けます。そのため、意識が回復しないまま死亡したり、重い後遺症が残ったりするのが実情です。現在は体温管理療法が行われますが、その効果はいまだ定まっていません。


本研究グループは、動物実験で心停止後に水素ガス吸入を行うと死亡率が下がり、脳の傷害が軽減することを報告してきました。しかし、人にその効果があるかどうかはこれまで証明されていませんでした。そこで今回、二重盲検無作為化比較試験という最も信頼できる研究方法で、院外発生の心停止患者に体温管理療法に加え2%水素添加酸素の吸入を行って、死亡率や神経学的後遺症が改善するか否かを検討しました。


おりからの新型コロナウイルス感染症のため、救急医療はひっ迫し、やむを得ず研究は早期に終了しましたので、目標症例数には到達せずに水素吸入療法が有効か否かをはっきりと示すには至りませんでしたが、驚くべきことに、90日後の生存率は、従来の治療で61%なのに対し、水素吸入療法により85%に上昇、また、後遺症なく回復した人の割合も21%から46%に上昇することが統計学的に確かめられました。水素は人体に害がないとされており、この臨床試験でも水素が原因と考えられるような副作用は観察されませんでした。実用化すれば多くの患者を救命できると考えられます。


この研究結果は2023年3月17日(日本時間)に eClinical Medicine 誌で公開されました。

eClinical Medicine 誌とは?
eClinical Medicineは、医療従事者が医療の課題を解決するための新しいオープンアクセスの臨床ジャーナルで、The Lancetによって出版されています。最新の臨床研究を掲載し、臨床実践や健康政策に影響を与えることを目的としています1。このジャーナルは、基礎研究から臨床研究、健康システム研究に至るまで、幅広い分野をカバーしているeBioMedicineと共に、The Lancet Discovery Scienceの一部です1
eClinical Medicineは、世界中の医療専門家が直面する複雑で急速な医療環境をナビゲートするための原著研究を提供し、患者のケアに役立つ情報を提供しています。2024年3月の号では、心臓病のホームベースモニタリングの長期的影響や、COVID-19後の疲労と認知機能障害からの回復しない予測因子など、多岐にわたるトピックが取り上げられています2。また、最新の研究成果やレビュー、エディトリアルなども掲載されており、医療関係者にとって貴重な情報源となっています12

◎慶應大学以外でも水素ガス吸入療法の臨床試験が進められています。

  1. 肺移植後の虚血再灌流障害の治療(大阪大学医学部附属病院): 肺移植後の虚血再灌流障害による臓器へのダメージを軽減するために、水素ガス吸入療法を用いた臨床試験が行われています。

  2. アルツハイマー型認知症への有効性(西島病院): アルツハイマー型認知症の患者を対象にした、水素ガス吸入とリチウム内服併用治療の効果と安全性を調査する臨床試験が行われています。

  3. がん(全般)に対する、水素吸入器を用いた、治癒・改善の多施設共同研究(日本先進医療臨床研究会): 水素ガス吸入療法を取り入れている日本全国のクリニックでも、さまざまな疾患に対する効果が期待されています。

水素ガス吸入療法は、医療だけでなく健康維持にも効果があるとされており、今後の研究や臨床試験によりさらなる成果が期待されています。



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