見出し画像

プラタナスの、散る音に

あっという間に肌寒くなり、落ち葉の季節がやってきた。
私はプラタナスの葉っぱが好きだ。
路上に落ちて、カサカサと地面を滑って移動するのが、とてもかわいい。
迷彩柄のような模様の幹や、丸い小さな実も好き。

「風」という歌に、「プラタナスの散る音に振り返る」という歌詞がある。
四国で生まれ育った母は、この歌が流行ったころ、周りが常緑樹ばかりで、落ち葉の散る音というのがピンと来なかったし、プラタナスというのはどんな木なのかと憧れた、と言っていた。

東北で育った私にとっては、木といえば落葉樹で、プラタナスは身近な街路樹だった。
はがれそうになっている樹皮を、ペリとむいてみるとき、かさぶたをはがすようなドキドキ感があった。

東京に出てきてからは、プラタナスを身近に感じることもなかったけれど、地方に赴任したとき、近所にプラタナスの並木があって、子どもの頃に戻ったような、とても懐かしい気持ちになった。
プラタナスの和名は、スズカケ(篠懸)の木。丸い実が、鈴をかけたように垂れ下がるから。素敵な名前。

東京に帰ってきて、またプラタナスと疎遠になってしまったけれど、秋になると、あのカサカサカサの音を思い出す。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?