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キャリア・アンカーと看護師のキャリア支援について考えたこと

敬愛なるエドガー・H・シャイン先生

キャリアを考えるうえで、「キャリア・アンカー」という理論は、非常にメジャーな理論です。
国家資格キャリアコンサルタント(以下、キャリコン)の資格試験を受けた方なら、必ず推し理論家がいると思います。
私も、何名かいるのですが、それは追々記していくとして、今回はエドガー・ヘンリー・シャイン(以下、シャイン先生)のキャリア・アンカー理論について取り上げて、記したいと思います。
そして、シャイン先生は、間違いなく私の推し理論家です!
エドガー・シャイン - Wikipedia

シャイン先生の事を意識したのは、今から10年以上前(遠い目)です。キャリア支援者として、まだまだ自信の無い頃でした。看護部内での継続教育部門(現在は生涯学習と言われていますね)を管理することになり、悩みながら運営していた頃でした。
認定看護管理者教育課程ファーストレベル受講時や、研修担当者に関わる研修等で、お名前と理論を知りました。その後、大学でリカレント中に、「人を助けるとはどういうことか」(https://amzn.asia/d/8UiGYlk)というご著書と出会い、その人間性の深さと、支援者としてあるべき姿勢について考えさせられ、ますます推すことになります。
そして、キャリコン受験の学習で再会し、更に押しています(笑)

無事キャリコンとなり、更新講習(キャリアコンサルタントの登録を継続するためには、更新講習を更新期間内に一定時間数以上受講の上、更新を行う必要がありますby厚生労働省)の初手に選んだのは、シャイン先生の「キャリア・アンカー」でした。

前置きが長くなりましたが、今回はその講習を受けて、考えたことをまとめておきたいと思います。

キャリア・アンカーとは

キャリア・アンカーとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ (hrpro.co.jp)

「キャリア・アンカー」とは、MITのエドガー・H.シャイン教授(組織心理学者)が提唱しているキャリア形成の概念です。キャリアにおけるアンカー(錨=不動点)を指しています。

個人が自らのキャリアを形成する際に最も大切で、他に譲ることのできない価値観や欲求のこと、また、周囲が変化しても、自己の内面で不動なもののことをいいます。

シャインは、犠牲にすることができない3つの要素(コンピタンス、動機、価値観)が組み合わさり、8種類のカテゴリーが形成しました。どのような職種についても基本的に該当し、ほとんどの社会人は8カテゴリーのいずれかのどれかにあてはまります。

3つの要素については以下となります。

コンピタンス・・・能力。できること
動機・・・欲求、やりたいこと
価値観・・・やるべきこと

また、8種類のカテゴリーは、

1.専門・職能別・・・自分の技能・専門性が高まり、活用できること、
2.全般管理・・・組織の中で、責任のある役割を担うこと、
3.自立・独立・・・仕事を自分のやり方で仕切っていくこと、
4.保障・安定・・・会社の雇用保障などの経済的な安定のこと、
5.独創性・・・クリエイティブに新しいことを生み出す、自身が会社や事業を起こす機会、
6.奉仕・社会貢献・・・社会に貢献したり、奉仕したりすること、
7.純粋な挑戦・・・解決困難な問題に挑むこと、
8.ライフスタイル・・・個人的な欲求と家族・仕事とのバランスを調整することとなります。

この3つの要素を8種類のカテゴリーを参考にしてあてはめていくことによって、キャリア形成の基本事項が明確になり、的確にキャリアを積んでいくことができます。

https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=45

キャリア・アンカーとは、働くうえで自分にとって最も大切で、譲れない自己概念で内的キャリアと言われるものです。
看護職という働き方と、キャリア・アンカーという考え方は、とても親和性があると思います。自分自身も、専門職という軸を持ちながら、内的キャリアをどのようにデザインしていくかという事については非常にわかりやすいと感じます。
看護の専門性は多岐にわたります。そのキャリアは、管理からスペシャリスト、ジェネラリストというように、ある程度区分分けができます。今は、そういう概念にとらわれずに、もっと細分化されていると感じますが。
その専門性をどう発達させたいと思っているのか、働くうえで、どのような環境でどのように働きたいと考えているのかという事が、このキャリア・アンカーで説明することが可能だと思います。

私のアンカーは?

超個人的な話をすると、「奉仕・社会貢献」が私のアンカーのようです。
まあ、思い返すとそうだなぁと。自分が学ぶ時の理由も「患者さん・スタッフのために」という自己イメージを持っていました。なので、納得という感じです。
面白いのは、2~3位。一緒に受講していた方とも話していたのですが、その時置かれている環境を反映しやすいようだという事です。
家庭を持ち子供中心の生活を送っている今、次点は「生活様式」でした。特筆すべきは、「起業家的創造性(独創性)」の点数が上がっているのが、見える化されたという事でした。この項目は、一年前にはそこまで点数が高くありませんでした。今、より良いキャリア支援サービスを創造中であり、その取り組みが反映されていると理解しました。

こうやって学んでいくと、キャリア・アンカーというものが1項目ありながらも、その周辺の項目で、自身の関心や興味を反映させているという事を、理解しました。そして、子育て中の女性は、「生活様式」が高値になるという傾向も見えました。

キャリア・アンカーの活用への考察

これらの経験から、相談者に使用する場合、キャリア・アンカーとして絶対に譲れない価値を導き出すとともに、その時意識して取り組んでいる事や、興味を見える化する効果があると考えます。したがって、面談時の材料として提示し、一緒に考えることで自己理解を深める事ができると思います。
一方で、女性等、子供を持つ相談者の場合、「生活様式」に引っ張られがちになるため、真のキャリア・アンカーかどうかという事も念頭に置かなければならないなぁと気づきました。

今回の講習を通して、相談者が置かれている立場や環境を一番に配慮し、そのうえで様々な理論やツールの中から、適したものを検討していく。検討しつつも、それが絶対であるかのようにならないように介入していくというように、個別性と、相談者への敬意を第一に対応していく事が重要だと改めて思いました。そのうえで、キャリア・アンカーという理論が、相談者の希望と幸せにつながると判断できれば、大いに活用し、未来を一緒に創造していきたいと思います。

最後に

生前シャイン先生は、「キャリア・アンカーは外的キャリア」という事をおっしゃっていたそうです。
内的キャリアじゃないの?と混乱ですよね。講師の先生も、思わずシャイン先生に聞き返したそうです。
講習中も、混乱でした。
で、色々考えるうち、看護職という視点から見ると、なんとなく理解できる気もしました。
乳がんの奥様を看病されていた先生。もしかしたら「内的キャリア」というのは、愛とかスピリチュアルとか、もっと精神的なもの、私的なものを指しているのではないかと、ご著書を読んで感じました。

長くなりましたが、目を通していただいた方、ありがとうございます。
看護師のキャリア、一緒に考えてみませんか?

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