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愛本橋と田園風景_田園発 港行き自転車【読書メモ】

私は、いちにちに一回は、心のなかで富山湾を背にして黒部川の上流に向かって立ち、深い峡谷がそこで終わって扇状の豊かな田園地帯が始まるところに架けられた愛本橋あいもとはしの赤いアーチを思い描く。

田園発 港行き自転車(上)_宮本輝


富山を舞台とした小説です。冒頭の1ページ目を読んだだけで富山に行ってみたい、愛本橋を見てみたい、田園風景を眺めてみたいと思いました。

以前、出張で一度だけ富山に行ったことがあります。新幹線に乗って、黒部川扇状地が近づくと席を立って移動して、乗車口の窓から風景を凝視しました。黒部川の鉄橋を渡っているとき上流に赤い橋が見えて興奮したのを覚えています(実際には見えず、脳内で再生されていただけかもしれませんが…)。いつか、愛本橋から黒部川扇状地の田園風景を見てみたいと思っていました。

さて、先週のNHKのブラタモリは『絶景!黒部渓谷』でした。黒部宇奈月温泉駅から出発して黒部ダムを目指す流れになっていました。もしかして、愛本橋が出てくるかも、と期待していたところ、ズバリ愛本橋が紹介されていました。愛本橋は日本一美しい黒部川扇状地の扇頂の位置にあります。上空からの映像もあり興奮して釘付けになりました。


もし晴れたら、私は三人を舟見の城址に案内しよう。あそこから見る入善町の広大な水田と、それらをすべて染める夕日と、点在する農家の墨絵のような陰影がどんなに美しいか、私はすっかり忘れていた。家があまりに近いからだ。身近にありすぎて忘れてしまったのだ。

田園発 港行き自転車(下)_宮本輝


なるほど、舟見城址からの眺めが絶景のようです。季節は青々とした夏がいいのか、黄金色になった秋がいいのか迷うところです。


「俺、どうしても黒部川の東側の広大な田園地帯を歩きたいんだよ。初夏のお天道さまに照らされた若い稲の群れが風になびいている。前方には雪をかぶった立山連峰と北アルプスの峰々。うしろには富山湾。近くには黒部川の清流。そんなところを、『ひねもすのたりのたりかな』と赤い愛本橋を目指して能天気に歩いていく。人生にはそんなコンマが必要だろ?」

田園発 港行き自転車(下)_宮本輝


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