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『バイキングMORE』温泉むすめ炎上騒動に触れるも、問題の本質を伝えていない【テレビの闇?】

 仁藤夢乃氏の怒りに端を発した「温泉むすめ炎上騒動」。これまでTwitterやnoteで多くの意見を見てきた。

 ささやかながら私も前回の記事で擁護意見を出させていただいたが、やはりどこか論理性に欠けてしまい、他の識者の文章には遠く及ばないと痛感している。

 そんな中、11月26日放送のフジテレビ『バイキングMORE』で件の騒動が取り上げられたのだが、伝えるべき情報が不足、掘り下げもほとんど無く違和感だらけだった。これでは問題の本質が視聴者に伝わらない可能性もある。そこで今回は『バイキングMORE』放送内容の問題点を整理・補足し、視聴者の誤解を少しでも解いて行けたらと思う。

問題1:仁藤夢乃氏のツイートどころか名前すら出さない

 2016年に発足したプロジェクトが5年も経った今になってようやく批判の声が上がったのは間違いなく仁藤氏のTwitterが発端なのに、火種を有耶無耶にし、あくまで「SNSで女性蔑視、性的搾取と物議」とだけ放送している。ちなみにフェミニストやフェミニズムの6文字も一切登場しない。該当インタビューもフェミとは無関係と思われる「一般女性」数名の批判の声を上げるのみだった。「フェミニストの揚げ足取り」という要素が加わるか否かで問題の本質は大きく変わってくるというのに。

問題2:「プロフィールでの表現」にしか触れていない

「スカートめくり」「夜這い」「肉感」「未成年飲酒」など、放送内容がプロフィールの表現の問題に絞られていた。確かにこれは仁藤氏が当初最も言いたいことだったはずだが、肝心のプロフィールの該当箇所は既に削除・修正されており今となっては問題ないはずである。事実、修正後は仁藤氏の怒りの矛先が「キャラクターの容姿」に変更されていることは以下のツイートを読めば分かる。しかしバイキングは萌えキャラの外見の問題にはほとんど触れていなかった(田村淳がスカートの長さに触れた程度)。

問題3:擁護意見が薄すぎる。もっとファンの熱い叫びを放送すべき

 街頭インタビューは批判意見が女性のみ、擁護意見が男性のみと、この時点で偏向的な匂いがするのだが、それは置いておく。問題は男性の擁護意見が「全然良いじゃないですか?」「正直好きな方なので、そういう設定とか」と、何というか薄っぺらいのである。二次元キャラに理解を示したオタクではありそうだが、少なくとも温泉むすめのファンでないことは明白。まだTwitterにごまんとあるファンたちの熱い擁護意見を引用したほうが視聴者に訴えかけることは出来たはずである。

 ではスタジオに居る芸能人のコメントはどうか。淳が『ラブライブ!サンシャイン!!』のJAなんすん炎上騒動と絡めた上で「ファンはVS構造に持っていくよりは炎上を機にコンテンツの魅力を改めて発信すべき」という旨の解決策を出してくれたのは良かった。また、須田亜香里が女性として「女の子同士のスカートめくりに抵抗は無い」と擁護意見を出しただけでも彼女の出演意義は大いにあった。

 ただ、noteには極めて論理的な擁護記事を投下する御方もいた。番組ではこのような文章も引用した上で、もっと深い議論を交わせたはずである。

今回の件で行われている三段論法の大枠は次のようなものと言えるだろう。

(1) この女性の表現は女性を性的に見ている
(2) 性的加害は女性を性的に見ている者が行う
(3) この女性の表現は性的加害である
(中略)
明らかなこの理屈が成り立っていない根拠を列挙すると
・あくまで推論であるにも関わらず事実の断定とされている事
・定義(1) が証明されていない事(三段論法は始めがダメなら結論もダメ)
・物語の作者や画家は、第三者の作品に対する感想と関係性が無い事
・対人的な加害行為があるかどうかは適切なプロセスを踏む必要があるにも関わらず、省いて断定している事

問題4:有馬温泉側のコメントはほとんどカット?

 個人的には、ファンの声を最も届けやすいと思われる温泉旅館側のコメントに最後の期待を寄せていた。有馬温泉の公式Twitterが放送前日、バイキングの取材に応じたことを示唆していたからである。

「有馬輪花、楓花の事」「観光大使のおふたりが有馬を愛し発信してくれている事」「ファンが有馬温泉を愛し掃除までして有馬の方々にも愛されている事」「コロナ禍に本当に皆さんに助けて頂いた事」「日本全国の温泉地は全ての方々に温泉に入って頂きたく思い頑張っている事」「絵師や声優さんに対しての行き過ぎた誹謗中傷はとても悲しい事」……取材陣に対しどこまで話したかは不明だが、実際に放送された発言はボードの片隅に小さく書かれた以下の記述のみだった。

若い人たちにも有馬温泉を知ってもらえて温泉としては救われた
有馬温泉の特徴を加味したキャラ表現に感銘を受けている
指摘を受けた表現は大勢が見るサイトということで配慮すべきだったと思う

 放送尺の問題もあるとはいえ、取材内容をかなり端折っていないだろうか。ただ、温泉地として大きな経済効果があることの裏付けにはなったと思う。

問題5:声優コンテンツでもあることには触れず

 ライブやイベントなど声優の観点から見れば健全なコンテンツであることは前回も書いたが、番組では一切触れず。プロフィールの画像にCVの名前も3人は入っていたが、彼女たちの率直な意見も伺って欲しかったところである。自分の演じるキャラを批判、それも性搾取なんて言葉を使われて気分の良い人は居ないと思う。

まとめ:無理に放送しなくても良かったのでは

 今回の『バイキングMORE』の放送に関して言えば、中立的立場で事実を、それも9割がプロフィール問題に触れたにとどまっており、スタジオ出演者も淳はラブライブ、須田はSKEに置き換えてやっとコメントを引き出せたというレベルで、コンテンツイメージがプラスになる要素は少なかったと思う。MC坂上忍は「ラブライブを観てみよう」とは思ってくれたが、この放送だけで温泉むすめにまで興味を持つのは厳しいだろう。仮に興味を持ったとしてもテレビアニメ化すらされておらず、アプリゲームかコミカライズが入口となる。ニッチな狭い世界の中だけで小さく盛り上がっていただけなのに、地上波の全国放送で女性蔑視の4文字を掲げてまで取り上げられ、観光庁の3文字をやたら強調してニッチでは済まされない空気を醸し出すくらいなら、無理に放送しなくてもよかったとは思う。

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