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電柱と樹木(幸&ボーンの創作童話)・起

不思議色の空の下、向かい合うように、電柱と樹木が立っていました。
端から見ると、とても仲が良さそうに見えました。
でも、二本はいつも、テレパシーで会話して、いがみ合っていました。
女の電柱は、スレンダーで、黄色と黒の縞模様の衣装を身に付けて、お洒落をして、そんな自分を気に入っていました。
しかし、男の樹木は嘲笑しつつ、言いました。
「へっ!ブスほど身を飾るっていうけど、本当だな」
「何?それ、私の事?」
ムッとした電柱が、言い返しました。
「あなただって、ただの地味な木偶の坊じゃないの」
「何だって?俺のこの渋い魅力に気付けないのか、お前は!」
こんな風に、二本はいつも、いがみ合っているのでした。
お互いにお互いを嫌って、罵り合って過ごしていました。
とても不愉快で、電柱は、樹木がショベルカーで倒されれば良いのに、と思っていましたし、樹木も、電柱が、地下に移動すれば、せいせいするのに、と思っていました。
そして、その近辺の山の上には、大きくて真っ白な観音像が立っていて、二本の様子を、ハラハラしながら、じっとみつめていました。
観音像は、どちらの願いも叶えたくなくて、二本には仲良くして欲しいと、心底願っていました。

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